デートは待ち合わせから
翌朝、思ってたより早く目が覚めたなぁ。
まだ6時半。出かけるの9時の予定だから…。
まぁいっか、ゆっくり準備すれば。
朝ごはんと、お留守番してくれる子達にお昼ごはん準備しておきたいし。
朝は軽めにトーストとサラダ。
起きてきたらパンを焼いてあげればいい。
お昼用にはちょっと暑いかもだけどシチューを作っておいた。
温め直せばいいからユウキが起きてきたら伝えておこう。
そろそろ8時か…部屋着から着替えないとね。
「アスカ姉ちゃん、おはよー。朝からいい匂い…」
「おはよー。ちょうどよかった。お昼ご飯にシチュー作ってあるから温め直してみんなで食べて」
「ありがとう、二人はちゃんと見とくから」
「うん、お願いね。朝はトーストとサラダね。パンは自分で焼いてもらっていい?着替えなきゃ」
「それくらいやるよ。みんなのもやっとくから準備してきて」
ユウキにお礼をいって部屋へ向かう。
リアを起こして手伝ってもらわなきゃ…ごめんよー。
「アスカ! おはよ」
「おはよーママ」
部屋に戻ったら二人が起きててびっくりした。
「おはよー。リア、ティーも起きてたの?」
「約束したじゃない。だからティーに起こしてもらったわ」
「ありがと。そうだ、お昼ご飯作っておいたから食べてね?」
「ママのご飯!」
「ありがとう、楽しみにしておくわ。それより、アスカは着替えないと」
リアに手伝ってもらって着替えもすませた。
これ靴下が下がらないように留めるんだね。 便利だわ。
髪もリアが纏めてくれた。
既に私より器用なの。
リアも髪は肩下くらいまでの長さがあるから慣れたらしい。
私も頑張ろ…。
「できたわアスカ。 うん、素敵よ。楽しんできてね」
「ありがとう、リア」
「いいわよ。でも…そうね?今度は私ともデートしてほしいかな」
「うん?私でいいの?」
「…アスカじゃなきゃイヤよ。ホント鈍いんだから…」
「わかったよ。行きたいところとかあったら教えてね?」
「約束よ?楽しみにしておくから」
「ティーもー」
「ティーは私と一緒に行きましょ?」
「わーい!」
それってデートなのかな?と思ったけど楽しそうだしいっか。
ティー、リアと朝ご飯を食べようとリビングへ行ったらユウキからとんでもない報告を受けた。
「未亜姉ちゃん、もう家を出たよ。待ち合わせがしたいから〜とか…」
「一緒にいくのに!?」
「アスカ、待ち合わせは大事よ?」
「そうなの?なら私も早く行かなと…」
待たせちゃうし…っていうか待ち合わせ場所どこよ!?
「あ、姉ちゃん。伝言預かってるよ」
「え?未亜から?」
「うん、9時に駅前広場の大きな時計の傍で待ってるって」
駅まで10分くらい…今8時半過ぎ。
「ユウキ、未亜が出たのっていつ?」
「ついさっきだよ」
なら…
「私も行くね」
「早くない?姉ちゃん」
「先に待ってて驚かせようかと…それに待ち合わせなら定番のセリフがあるじゃない?」
「あーなるほど。 姉ちゃんなら余裕だね」
「ママいってらっしゃい!」
「いってらっしゃい、アスカ」
「気をつけてね、姉ちゃん」
三人に見送られ家を出る。
さて…先回りしましょうか。
隠蔽魔法で姿を隠し、自宅の屋根へ飛び上がる。
駅まで直線で真っ直ぐ。2分切れるね、よしっ…。
軽く身体強化もかけて、屋根から屋根へ。
これ一回やってみたかったんだよね。
あれ、もう駅?思ったより早かったな。
取り敢えず路地に入り、人がいないのを確認して隠蔽魔法解除。
手鏡で確認。髪も乱れてないね。 あ、化粧の指輪忘れてた。
指輪もつけて…うん。大丈夫。
大きな時計って言うと、駅前のベンチの傍にあるやつだよね。
ここで待ってれば未亜が来るはず。
なんだろう…緊張してきた。デートとは言ったけど一緒に遊びに行くだけだよね?
落ち着け私。ちゃんと未亜を楽しませてあげないと…。
「え…?お姉ちゃん…なんで…」
「未亜、おはよ」
「私、先に出たはずなのに!」
「それより…未亜、待ち合わせしたかったのならあのセリフ言いたかったんじゃないの?」
「あっ! お姉ちゃん、待った?」
「ううん。今来たとこ」
やっぱりこれだよね。 (てんぷれー)
「…お姉ちゃんズルいよ。びっくりさせたかったのに。私が驚かされちゃった」
「ふふっ。誘ったの私だからね、待ち合わせするなら、待ちたかったの」
「ありがとう…」
「今日も未亜はかわいいね?相変わらずオシャレだよ。服もすごく似合ってる」
「ありがとう。嬉しいんだけど…なんでそんな慣れてる感じなの…?」
慣れてないよ!?緊張してたくらいなのに。
「慣れてないからね?デートなんて初めてだし…」
「ほんと!?やった…」
「うん、だからちょっと緊張してる」
「お姉ちゃんが?あはっ、なんか嬉しい」
「なによぅ…」
「ううん、普段見れないお姉ちゃんが見れて嬉しかっただけ」
初デートが女の子同士で、しかも相手が妹っていうのはあんまり無いかもだけど。
普段お世話になってる未亜に、何かしてあげたかったからね。
「お姉ちゃん、今日も素敵だよ!」
「ありがとう、手助けしてもらったけどね…」
「ルナリアちゃん?」
「うん、ティーもね」
「なるほどー。ルナリアちゃん達もセンスいいね、お姉ちゃんの良さがバッチリだよ」
それならよかった。
「未亜はどこか行きたいところある?」
「ううん、お姉ちゃんといられれば嬉しいから、特には考えてなかったよ…」
それなら、あそこに連れて行ってあげようかな。
「ならせっかく駅にいるし、電車に乗ろうか。連れて行きたいところがあるから」
「うん?わかったよ。お姉ちゃんに任せる」
「オープンの時間だけ確認するね」
スマホでお店の情報をチェック。…よし把握。
切符を買ってホームへ。
私の住んでる所は都会ではないけれど、それなりに電車は来るからそんなに待たなくても乗れる。
「どこへ向かってるの?」
「えっとね、だいぶ前に母さんが連れて行ってくれたんだけどね、うさぎのいるカフェがあるの」
「猫じゃなく?」
「そう、母さんが動物好きでね。うさぎと触れ合えるのは珍しいからって。 未亜も喜ぶかなって思ったんだけど」
「うん、可愛いから好き」
「それに、料理も美味しいからね、混む前に早めに入ろうかなって」
「人気なんだ?」
「うん、そうみたい」
40分ほど電車に揺られ隣町まできた。
ここから少し歩くけど、道中にも雑貨屋とか色々あるから退屈はしないはず。
カフェが開くの11時だし、のんびり行けばいい。
「うちの駅より都会って雰囲気だね、初めてきたよ」
「モールとか近くにあると、そこで用事が済んじゃうからね、あまり遠くまでは来ないよねぇ」
「うん、お姉ちゃんは詳しいの?」
「それなりに、かな。久しぶりだからお店も変わってたりするかもだけどね」
うさぎカフェは人気だから大丈夫。移転もしてなかった。
カフェまでの通り道。雑貨屋等の並ぶ道を腕を組んで歩く。未亜のおねだりだし叶えてあげたい。
道沿いのお店のショーウィンドウを眺めつつ歩いていたら、とある店で足を止める未亜。
「わぁ…このお店ビーズがいっぱい。可愛い」
「キレイだね、アクセサリー作ったりするのかな?」
魔石ビーズみたいに作るのかなぁ…。
「うん。ほら、キットもあるみたい。これを買えば見本のものが作れるってことだね」
「少し覗いてみる?まだ時間はあるから大丈夫だよ」
「うん、ありがとうお姉ちゃん」
二人で店内へ。
「いらっしゃいませー」
「少し見させてください」
「はーい、何かありましたら、声かけてくださいね」
明るい声の女性店員さんは店の奥に設置されたテーブルで何か作ってるみたい。
「種類がいっぱいだね…私もなにか作れるくらい器用ならなぁ」
「未亜はなにか作りたかったの?」
「コレっていう何かがあるわけじゃないよ。ただお姉ちゃんは器用に作るから羨ましくて」
私のは魔道具だけどね…。
「あの…なにかお探しでしたか?」
「いえ、姉が器用なので羨ましくて…私もなにか作れたらいいのにと」
「お姉さん、そんなに器用なんですか?」
私のは普通のアクセサリーとは違います。とは言えず…。
「はい! お姉ちゃんは何でも器用に作っちゃうんです。ほら、このネックレスも」
うん、それ魔道具…。
「見せて頂いてもいいですか?」
そう言いながら店員さんがこっちへ出てきた。
「はい」
「あ、外さなくて大丈夫ですよ、大切なものでしょう?」
外そうとした未亜を制止してティアーズドロップ型の魔道具を覗き込む店員さん。
「これ…なんの石だろう、見たことない…。形もキレイだし…不思議な力を感じます、パワーストーン?」
この人カンがいいのかな?たまにこういう人いるんだよね。奈々とかもそう。
「ありがとうございます。 お姉さん、これなんて石か教えてもらえませんか?」
こういう時は…
「すみません、海外を飛び回ってる両親からの貰い物なので…」
「そうですか…残念です。今作ってるアクセサリーに深いブルーの石を探していたもので」
魔石は渡したところで普通の人にはただの石でしかないからいいのだけど…万が一があるからね。
こちらにもあるような鉱石や金属以外は出さないことにしてる。
「お姉さんのピアスも手作りですか?」
「はい」
「いいセンスです! なんだかアイデアが浮かんできました、ありがとうございます」
そう言うとまた奥のテーブルでの作業へ戻っていった。
ハンドメイドの作家さんなのかもしれない。
邪魔してもあれなので挨拶をして店を後にした。