魔法と力
夕飯のカレー、キレイになくなったなぁ…。炒めたミンチを避けといてよかった。
お弁当のそぼろ用にしたかったからね。だから別々で炒めたし。
そぼろは甘辛醤油味にして冷蔵庫へ。炒り卵は朝に。
洗い物を手伝ってくれてるユウキに聞いておかないと。
「ユウキは明日の放課後空いてる?」
「うん、大丈夫だよ」
「日曜にリアを向こうへ連れて行ってあげるから、その手土産を見に行こうかなと」
「なるほどね、わかったよ。でも急だね?」
「生まれたばかりの弟に会いたいって言うから、連れて行ってあげたいじゃない?」
「それは確かに」
お皿を運んできてくれてる未亜も話に混ざる。
「だからユウキ君を迎えに出たのにお姉ちゃんに酷いこと言うから…」
「それはごめんって…心配しただけだから」
私そんな心配かけてるかなぁ?…かけてるわ。
「ありがとね、ユウキ」
「いや、言い方悪かったよ」
「ユウキ君のクラブ活動は平気なの?」
「そうそれよ、どのクラブに入ったの?」
「え?」
「ん?」
「クラブ活動始めたんじゃないの?」
「そう受け取ったの?あのメールを!?クラブの監視って送らなかった?」
「うん?そう言えば…」
「ユウキ、もしかしてクラブって、ファンクラブの方!?」
「今かよ!! そっち以外にないでしょ?」
「いや、なんかスポーツのクラブにでも興味持ったのかな?と」
「はぁ…それはないって。僕や姉ちゃんが入ったらバランス崩壊するよ?」
「加減するのかな?と」
「加減したらバレるし。体育の授業である程度力出してるのに」
それもそっか…休みがちだから授業出るときは評価をもらえるようにしてるからね。
「それでユウキ君はクラブの監視?って何をしてきたの?」
「怪談話の影響を確認するつもりが! どこかの姉が走り回って目立った上に! それを超える目立ち方を、姉が二人でしたから! それを確認してきたんだよ僕は!」
「ユウキ、落ち着くのー。 ケツアツあがるよ?」
「ティーも原因の一端だからね!?」
「わぁーユウキが怒るー。ママー」
「ちょっと…姉ちゃんに助けを求めるのはズルい!」
「ママだもん…」
「くっ…」
「ユウキ」
「いや、ティーをイジメるつもりは…」
「ごめんね、ありがとう。迷惑かけちゃったね。ティーは私のためを思ってしてくれたから、怒らないであげて?」
「怒ってないよ。気になったから勝手に調べただけだし」
「私もごめんね、あまりにも怖くて…」
「あーもぅ! 怒ってないし、姉ちゃん達は気にしなくていいから! 取り敢えず話をすすめるよ」
「うん」
ユウキが言うには今回の怪談話は目撃者も多いからかなりの騒ぎにはなった。
けど、その後泣きながら走り回った未亜、その未亜をお姫様抱っこで保健室へ連れてった私の噂で上書き。
怪談話はもう下火らしい。
「怪談話の方のがまだ良かったよ!?私明日どんな顔して学校行ったらいいの…」
「私も休みたい…未亜を抱えてたのはそんなに見られてなかったと思ったのに…」
「姉ちゃん、一人でもクラブ会員に見られたらアウトだから」
「怖いよ、ファンクラブ…」
「じゃあ潰す?」
ユウキも怖いことをサラッと…。
「それはダメ。未亜を守ってくれた恩があるから」
「それもそうか…」
「あぁ…会長達からのメール。あれが無かったら私イジメられてたもんね」
結局諦めるということで落ち着いた。
「もういいや、気にしても仕方ないよ。それよりみんなで魔力のお勉強会しよう」
「そうだね、それがいいや」
「うん。気にしたらダメだね」
「ねぇ、ティー。あなたのママ達の行ってるガッコウってなんなの?私わからなくなったわ…」
「んー?おもしろいよ?」
「そうは見えないのだけど…」
「それはそれ?」
「ティー、リア! お勉強会来ないの〜?」
「待って、アスカ! 行くから」
「ティーもー」
みんなで一緒に地下の訓練場へ。
拡張して縦5メートルくらいに、広さは20メートル四方くらいかな。
魔法防壁も完備の訓練場、私が魔法をぶっ放すとかしなければ壊れない。
「じゃあまずリア、魔力ドーム出してみて?」
「わかったわ」
リアの出した魔力ドームは手のひらサイズ。
ブレがあるから歪な形になってて安定しない。これは予想してた。だからボールを取り出して渡す。
「リア、このボールを持ってみて?」
「うん?柔らかいわね?」
ゴムボールだしね。
「握ると形変わるよね?」
「ええ」
「離したら?」
「まるいわね…。 ! このまるいのをイメージしたらいいのね?」
「そう。左手で持って丸い形をしっかりイメージすると楽よ」
「わかったわ」
「ユウキと、未亜も魔力ドーム出してみようか」
「どうしたらいいの?」
「そうね…。 まず見せるね」
右手に手のひらサイズで魔力ドームを出す。
「リアもおいで。わかりやすいの見せるからー」
「はーい」
「よく見ててね、魔力の流れを可視化するから」
ドームに流れてる魔力に色を付けてあげる。
「きれい…外から真ん中に向かって回ってる?」
「そう、外から中心へ魔力を回しながら巡らせてるの。大きくするから中から見てみて」
全員を覆うように直径3メートルくらいのドームにする。
「ママ、これすごくきれいー」
「そう?なら…」
キラキラ光るようにしてあげよう。
「わぁ…ママすごい…!」
「ホントね…夜空みたいだわ…。星が流れて真ん中に集まってく。なんてキレイなの!」
「プラネタリウムみたいだね。キラキラのおかげで流れがよくわかるよ」
「これが全部魔力…お姉ちゃん、これって流れる方向変えれるの?」
今は右回りだから、左回りでいいのかな?
「こんな感じ?」
「変わった! でも外から中心へ回るのは変わらないんだね?」
「いいところに気がついたよ未亜。球状に維持するためには魔力を外から中心へ流さないと無理なの。中心から外へってする時は拡散させる時に使うんだよ」
「ママが森とか治すやつー」
「そうだね。正解だよティー。じゃあ少しやってみようか」
魔力ドームをそのまま小さくしてゆく。私達を覆っていた魔力は手のひらサイズに収まる。
「みんな私の周りに座ってて。うん、その辺でいいよ」
少し離れたところへみんなが座る。
手のひらの魔力ドームの魔力を外向きの流れに変える。
するとどうなるか…。
うちから外へキラキラした魔力は流れ拡散してゆく。大きく大きく…。
「魔力が広がっていくわ…でも密度がさっきと違ってうすくなっていくわ」
「その通りだよリア」
広がる魔力はさっきの魔力ドームより大きくなって、そして消えた。
「消えちゃったーキラキラ…」
「そうだね、外へ広げていくと密度は薄くなって拡散、最後は消えてしまうの。込める魔力が多ければ広げられる範囲は大きくはなるけどね」
「てことはさっき姉ちゃんが僕らを中に入れてくれた魔力ドームは、内側へ魔力を流しつつ、流す魔力を増やして大きくしてた?」
「ユウキ、半分正解。魔力そのものは増やしてないの。単純にイメージで膨らませてるよ。だから、拡散させる時ほどではないけど、魔力の密度は多少薄くなってたよ」
「なるほど…」
「密度の変化…。私わからなかったわ」
「風船みたい」
「あ、それ正解だよ未亜。小さい風船より大きく膨らませた風船のがゴムは薄くなるでしょ?」
「うん。じゃあ小さい時と同じ密度にしようとしたら、魔力は増やさなきゃダメ?」
「そういう事だね。ただ、ある程度はイメージで補えるから、イメージは大切だよ」
「アスカ、私魔法ってもっとつまらなくて、攻撃とかにしか使えないと思ってたわ」
「そうだったの?今は少し変わった?」
「ええ、すごくキレイで感動したの。初めてよこんな事。魔法もこんなことが出来るんだって」
「そうだね、魔法って楽しいものなんだよ。使い方一つで大きな攻撃で誰かを傷つけることも勿論できる。でもそれって、一番簡単で誰でもできることなんだよ」
「そうだね、姉ちゃんが大きな魔法使えば一発で国が消えるもんね。でもしない」
「うん、そんなの魔力があればできる事。道具と同じで、使い方と使い手の気持ち次第。
ねぇ未亜、いつも使う包丁だって料理する時に便利だけど…誰かを傷つける物にもなるよね?」
「うん、魔法も同じ?」
「そうだよ。私も誰かを守るためなら躊躇わずに攻撃として魔法を使うと思うよ。でもそれは最終手段。 傷つけずに済むなら、他の方法も考えてみる。私はそうしたいって考えてる」
「だからママは魔法を出すけどー、放たないの?」
「かな?相手によってはこっちの力を見せるだけで戦意を折れるからね。手っ取り早いのよアレが。話の通じない、話を聞かない相手にはね」
「うちのバカとう様ね」
「だね、話にならなかったもの。私も怒ってたってのもあるけど…」
「でもママは最後まで相手に直接魔法使わなかったよー?」
あれはアリアさんに掴みかかってたし…。
「怒ってても姉ちゃんは力の使い方間違えないんだね…」
「私がそれしたら大変じゃない」
「確かに…。思ってた以上に姉ちゃんがカッコよかった。やっぱり自慢の姉ちゃんだよ」
「なによ、急に…」
「褒めてるのに!」
「ありがと…」
「アスカが照れてるわ…なんか可愛いわね?」
「お姉ちゃんはいつもかわいいよ!」
「そだよー! ママはさいきょー」
やーめーてー。恥ずかしいからもう許して…。