先生の正体
「二人っきりで〜ベッドで抱き合ってナニしてたのかな?」
「先生、言い方…」
「失礼…好奇心が抑えられなかったわ」
大丈夫なの?先生として…。
「先生は学校の怪談話はご存知ですか?」
「ええ…昨日から噂になってるわね」
「妹がお昼に見たらしく、怯えて私のところへ来たんです」
「それで…なるほど。よく落ち着かせれたわね」
うっ…。
「は、はい…怯えて泣き疲れたのか寝てしまったので」
「…ふーん?」
おかしなこと言ってないよね?
「昨日、奈々ちゃんが保健室にきたのよ。お腹痛いから休ませてって」
あーこれなんかまずい予感がするなぁ…。
「あの子って毎回辛そうにしてて、休んでるんだけどね?昨日は少し寝たあと元気いっぱいでね」
「はぁ…」
マズイマズイマズイ…
「アスカちゃんにおまじないかけてもらったからだーって言ってたのよ」
終わった…
「未亜ちゃんにもおまじないしたの?」
どうする…なんて答える…
「言いたくないならいいわ。誰にも言わない。そのかわり…」
なに…何を要求される!?
「私もお姫様抱っこして!」
!?
何を言ってるの?この先生は…。
「憧れなのよ?お姫様抱っこ…しかもアスカちゃんにしてもらうなんて…」
「それくらいなら別に…」
「本当に!?やったわー。あっ! でもファンクラブには内緒よ?バレたら顧問の立場が…」
「先生…待ってください、顧問?」
「あ…違うのよ?違わないけど…ぅぅ…」
目が泳いでるよこの人。
「いいです、聞かなかったことにします。これでおあいこですからね?」
「…お姫様抱っこは?」
はぁもう…。
目の前にいる先生を抱き上げる。
「ふぁぁ…しゅごい…」
保険の先生へのイメージが粉砕されたよ。
これからは極力保健室は避けよう…。
先生を降ろしたけど、心ここにあらずだからほっといて、部屋を出て未亜のいる保健室へ。
「未亜、どう?」
「お姉ちゃん、私は大丈夫。先生は?」
「あーうん。話をした後、部屋で休むって言ってたから」
「そう…」
元気ないね…大丈夫かな。
「ちょっとごめんね」
おでこに手を当てる。
「お、お姉ちゃん?」
うーん…魔力は安定してる。鑑定の魔道具、作ったのを全部王妃様に渡して、それから自分用を作ってないのはまずかったか?
いっそ前みたいに魔力ドームで…
「お姉ちゃん、私大丈夫だから」
「でも…」
「思い出しちゃってただけ…」
「うん?」
「お姉ちゃんを探して走り回って、上級生の教室に駆け込んで…」
あぁ…記憶飛んでるかと思ったけど覚えてるのね。
「そのままお姉ちゃんに抱きついて…ここまで抱かれて運ばれたよね」
「あーうん…ごめん、イヤだったかな」
「違うよ! 思い出したら恥ずかしくなっただけ」
多少見られたけど、大丈夫でしょ。
「気にしなくていいのに。たまには姉らしい事させて」
「え、うん…ありがと」
お姫様抱っこで運ぶ事が姉らしい事なのか疑問に思ったけど嬉しかったからいいや。と深く考えるのをやめた未亜だった。
チャイムがなり、休み時間になってすぐ明ちゃんが保険室に駆け込んできた。
「未亜ー! 大丈夫ー? ってアスカ先輩! 連絡ありがとうございました」
「いいよー。 教室に連れて行ってあげてくれる?」
元はといえば私のせいだからお礼言われるとさ…罪悪感がすごい。
「はいっ! お任せください」
「未亜、帰りは教室に迎えに行くから、まっててね?」
「わかったよ、お姉ちゃん」
「じゃあ明ちゃん、よろしくね」
「はいっ」
未亜を任せて私も教室に戻らないと…。
麻帆にお礼言わないとね。
教室に入るとみんな一斉に私を見た後、すぐに目を逸らした。
なに?私なんかした?
「アスカ、おかえりー」
「妹さんは大丈夫だった?」
二人は変わらないのが救いだよ。
「うん、麻帆ありがとね。先生は大丈夫だった?」
「ええ、怪談話や、妹さんが走り回ってたのも知ってたから話が早かったわ」
保険の先生といい、情報早いなぁ。
「怪談話なんてすぐに忘れ去られそうだけどね!」
「そうなの? まぁ怪談話なんてみんな飽きるの早いかー」
ティーが頑張ってくれたけど…心配なかったのかな。
「ねぇ、奈々。これってわざとなの?それとも…」
「天然物よ! 完全なね」
「マジかぁ…。奈々が心配する理由がわかったわ」
「でしょ?でも、そこも推しポイントなのよ!」
「それなー。私もわかっちゃったわ」
「お?なら入るかい?」
「だね! 守らないとだわ」
二人はなんか違う話で盛り上がってるし。
放課後中等部の教室へ未亜を迎えに行く。
高等部の私が来たからかみんな道を開けてくれるんだけど…なんか申し訳ない気分になる。
あまり来ないほうがいいのはわかってるけど、今日は未亜が心配だから許してね。
「お姉ちゃん!」
「未亜、お待たせ。大丈夫?」
「うんっ! もう平気だよ」
「そっか、なら帰ろ」
「あ、明ちゃんに挨拶だけしてくるね」
「わかったよー」
明ちゃんはこの後クラブがあるとかで教室でバイバイしてた。
「お姉ちゃん、今日夜ご飯は?」
「うん、ティーのリクエストでカレーにしようと思ってて」
「わぁ、いいね。じゃあスーパー寄るよね?」
「そのつもりだったけど、一度帰ろうかと思ってるよ」
「そうなの?忘れ物?」
「そういう訳じゃないけどね」
「もしかして私の心配してくれてる?」
バレバレか…。
「大丈夫だよ。私も行くからね?」
「わかった。じゃあこのまま行って早めに帰ろう」
「うん、そうしよ」
そのうちティーとリアもまた外出させてあげたいな。
いつものスーパーでカレーの材料を買い込んで帰ってきた。
私が買った材料を見て未亜は首を傾げてたけどね。
ミンチ、トマトピューレ、玉ねぎにカレー粉。あとは卵。
煮込んでる時間がないときはこれが早くて美味しい。
「ママー未亜ーおかえりー!」
「ティー、ただいま」
「ただいまー!」
「おかえりなさい。ユウキはまだ帰ってないわよ」
リアが起きてる!?
「ただいま、リア。 そうなの?友達と一緒かな」
「なんかクラブを見てくるとか連絡きてたよ?ユウキ君」
「え?クラブに興味持ったの? なんか自分が入るとバランスがーとか言って断ってたはずだけど」
それより、私にはそんな連絡来てないよね?
スマホを見たら、連絡来てたわ…。ごめんユウキ。
「クラブの監視?どういう事だろ…参加するんじゃないのかな?」
「さぁ?帰ったら聞いてみる?」
「うーん、あまり干渉しても嫌がるだろうからね」
「あぁ! 友達も言ってた。弟に口うるさくし過ぎて嫌われたって。バカ姉って言われたとか…」
くはっ…ユウキに嫌われる?バカ姉とか言われたら私泣くよ…。
「未亜、私達は気をつけようね!」
「そうだね、お姉ちゃん」
ママ達は平和だなーと思いながら黙ってるティーだった。
「そんな事より、アスカ」
「そんな事!?」
「ごめんなさい、だってユウキがそんなこと言うわけないもの。アスカのがその辺良く分かってると思うのだけど?」
そうだけど…反抗期とか…。
「それより! アスカにお願いがあるの」
「お願い?どうしたの?」
「私も弟に会いたいから一度向こうへ連れて行ってほしいの」
あぁ、生まれたばかりだもんね。
「わかったよ、今から行く?」
「流石にそんな無茶言わないわ。時間のある時でいいの。時間遡れるんでしょ?」
「うん、前回行った時間までならね。だからドラゴンを止めた日までなら」
「ならいつでもいいわ。かあ様達も忙しいでしょうし」
そう言えばこっちの一日が向こうだと、一月くらいになるんだっけ。
騒ぎの収拾や、私の変な噂とか消える頃って言うとティーの言葉を借りれば二ヶ月半くらいか…。
今日水曜日だから向こうなら三ヶ月過ぎてるのか。
次行くときは三ヶ月後くらいでいいかな?
「リア、私がドラゴンを止めてから三ヶ月後くらいに行ければいい?」
「え? だめよ! そんなにたったら弟が大きくなっちゃうわ!」
「そんな成長早いの!?」
「小さいときは無力だから、ある程度までは早いのよ、だから戻れるなら数日後くらいにしてほしいわ」
数日後かぁ…仕方ない、私の噂は諦めるか…。
「わかったよ、土曜日は予定があるから日曜でもいい?」
「えっと、今日が水曜日だから…わかったわ。それと、こっちのお土産を持って行きたいのだけど…」
「うん、いいよ。近くのモールにでもみんなで行こうか」
「モール! ティーから聞いてるわ。大きなスーパーよね?」
「うん、まぁそうかな? 未亜、明日放課後予定ある?」
「ううん、大丈夫だよ」
あとはユウキにも確認しないとね。
「ユウキ君がクラブに入るとなると一緒は難しいかな?」
「ああ…そうだね」
「たぶんへーきだよー?」
「ティー? なにか知ってるの?」
「帰ったら話してくれると思うー」
ティーがそう言うならユウキに聞こう。
そろそろ帰ってくるし。
うちに向かってきてる、この魔力反応はユウキのだからね。