お城へのお客様
王妃様との勉強会も終わり自室へ戻る途中にユウキと廊下で会った。
「おかえり、用事は済んだの?」
「うん、姉ちゃんにお土産」
ユウキに渡されたのはお菓子の詰め合わせ。
「ありがと。 でもなんで急に?」
「いや、今日の用事ってのが、こないだ救助した冒険者。姉ちゃんが助けた三人も含めた四人に呼ばれてたからなんだよ。 本当は姉ちゃんも呼んでお礼をーって言ってたけど、たぶん嫌がるかなって断ったんだ。でも僕だけは断りきれなくて」
冒険者の人達みんな元気になったようでなによりだね。
「なるほど…ありがとね。確かに私はそういうのはね。ナイス判断だよ」
「でしょ? だからその人達から姉ちゃんへお礼の品ってとこ」
「そっか、わかったよ。 それと、休んでからでいいから、部屋に来て?話があるの」
「わかったー」
なんだか疲れてるユウキと別れ部屋へ。
「お姉ちゃんおかえり」
「ただいまー。ティー達はまだ寝てる?」
「ティーちゃんは一度起きたんだけど、ママが居ないならってまた寝ちゃった。ルナリアちゃんはぐっすりだね」
「そうなのね。 後で皆に話があるからユウキが来たら起こさないとね」
「わかったよ」
ルナリアはお姉さんにいつ話すんだろ?
ユウキにルナリアのことも話さないとね。
「アスカ様、失礼します。今よろしいでしょうか?」
「はい、大丈夫です。アリアさん、入ってください」
「はっ、失礼します。 城門にお客様がお見えです」
噂をすればかな?
「もしかしてルナティアさんですか?」
「はい、今陛下に確認をとっておりますので、許可がおり次第こちらへご案内してもよろしいでしょうか?」
「お願いします。許可がでなさそうならルナリアと城門へ行きますね」
「わかりました、では失礼します」
ルナティアさん、もしかして街で待ってた?待ちくたびれてお城へ来たとかだったりして…。
でも約束はしてないよね? お昼に別れてすぐだし…。
取り敢えず、ルナリア起こさないとね。
「ルナリア、起きて。ルナリア」
「んっ…んぅ… なぁにー?ご飯〜?」
食いしん坊か!
「それはまだだけど、お城にお姉さんが来たって」
「うえ!? あ…そう言えば…」
思い当たることあるのかな?
「忘れてたぁ…お城から街への門の所で会う約束してたの。渡したいものがあるとか言ってたから」
「そうなの? いつ待ち合わせてたのよ?」
「午後…?」
曖昧すぎる…流石ドラゴンスケール。
宿へ戻ってすぐ引き返して待ってたなら可哀想すぎるんだけど…。
「ルナリアちゃん、いつそんな約束してたの? 私達聞いてないよね?お姉ちゃん」
「うん、知らなかったよ」
「ちょうど街で未亜がカバンを見てた頃だったかしら…言い忘れてたのよ」
待ちぼうけ食らってたわけね…。
「国王陛下から許可が出ればここへ来るからね?」
「…逃げなきゃ」
「こら、待ちなさい」
逃走を謀ろうとするルナリアを捕まえる。
「お願い、見逃して。また折檻されるのは嫌よ」
「私も一緒にいてあげるから。それに話して許可貰う約束でしょ?」
「うっ…。そうだったわ。 はぁ…」
「あ、ママ! おかえりー」
「ティーも起きたね。ただいま」
嬉しそうに飛びついてくるから抱き止める。
「いい子にしてた?」
「うん、寝てた!」
そっか。 あれ?そう言えばティーってどうやって世界渡るんだろ。
「ねぇ、ティーって地球へもついて来てたよね?」
「うんっ」
「どうやってたの?」
「ティーはママの魔力そのもの! みたいなものだからー普通に一緒についていけるのー」
「今みたいに実体化してても?」
「大丈夫ー。魔力循環しなくてもティーはママの魔力と波長が同じー。くっついてればおーけー」
「なら問題ないね。 ただそうなると私はティーのマジックバッグを使えちゃうのか」
「中身気になるー?」
「ティーが嫌がるかなって思っただけだよ。勝手に見たりしないから大丈夫」
「気にしないのー」
「ならいいけどね」
ピアスの魔道具作った時に、私と波長が同じなのに気がつけた筈なのに… (そういう時もあるの)
慰められてしまった…。
「本当にお姉ちゃんの子供みたいだね」
「そうだね。大事な子だよ」
「にゅふふー♪」
ある意味一番長い付き合いなのかもだし。コミュニケーションは取れてなかったけどさ。
「貴女達、のほほんとしてるけど…ねえ様きたら守ってよ?」
「多少は叱られなさいよ?待たされてたんだから」
「わかったわよ…」
あールナティアさんの魔力来てるなぁ。
許可貰えたんだね。まぁそうなるとは思ってた。
あの陛下がダメって言うとは思えないよ。
「アスカ様、お客様をお連れしました」
「ありがとうございます、入ってください」
「はっ、失礼します」
「ルーナーリーアー!」
「ひっ!」
「はい、ストップ! ルナティアさん。ここはお城ですから。ね?」
「……はい。でも私、皆さんと別れてすぐ宿に戻ってそれから門へ来て、ずっと待ってたのに…」
だよねぇ…。
「それはすみません。私もさっきそれを聞いたので…」
「リア! 約束したじゃない!」
「色々あって言い忘れてたのよ!」
「二人ともストップ。ルナリアはまずちゃんと謝りなさい」
「ごめんなさい、ねえ様…」
「…え?」
「ん?」
「いえ…あの、リアが素直に謝ったからびっくりして」
普段からルナリアは素直だと思うけど。
「ルナリアはいつも素直で良い子ですけど…違うんですか?」
「そんな! ワガママで私の言うことなんて聞かないリアが?」
どういう事…。ルナリアはそっぽ向いてるし。
「ふふっ。ルナリアちゃんはうちのお姉ちゃんには素直だもんねー?」
未亜ちゃんも煽らないの。
「だって、命の恩人だし…優しいし。ご飯上手だし、素敵な魔道具もくれたし」
「それだと私は優しくないみたいじゃない!」
「そうよ? ねえ様は1人でフラフラしてて、迎えに来た私を殴り飛ばして、人化が下手なのバカにして魔力の減ってた私を置き去りにしたじゃない!」
「うっ…それは…」
また始まったよ。
「はいはい、ストップ、ストップ。落ち着いて二人とも。取り敢えず座って」
ストレージから、地元で買い溜めしてあるお菓子をいつものテーブルに出す。
「これ食べながら、ゆっくり話をしましょう」
「なにこれ! 初めて見るわ」
「私も…。これ食べれるの?」
「あ、袋のままはダメだよ。開けてあげるね」
チョコレートやクッキー、色々出してあげた。
ティーも私の膝の上で食べてるし、未亜ちゃんもテーブルにつく。
「それで、ルナティアさんは何を渡したかったの?」
「んぐっ…えっとね、お土産と、かあ様達へお手紙だよ」
食べるのに必死だね。詰まらせないか心配になる。
「たいした用じゃないじゃない。なら怒らなくてもいいのに」
「ルナリア、待たされた方は辛いよ?」
「むーわかったわよ…」
「…本当に素直ね。 アナタどうやってうちの妹を手懐けたの」
人聞きの悪いこと言わないでよ。
「特にそんな何かしたつもりはないよ…。最初から素直だったし」
「それは…最初はあり得ない魔力量で怖かったし。ほんとにもう駄目かと思ったわ」
そう言えば…。 お願い、殺さないで! が初対面だったね。 (怯えてたー)
だねー。随分変わったものだよ。
「それがこんな…」
「あぁ、ねえ様。私アスカについていくから、どちらにしても届けられないわよ?」
「うん?今もそうじゃない」
「アスカ達の世界にって事。離れたくないし」
「…は? ちょっと待ってね。 え?アナタこの世界の人じゃないの!?」
「ルナリア話してないの!?」
そこからか〜。
ここ迄の経緯をかいつまんでルナティアさんに説明をした。
未だ信じられないって顔してるけどね。
食べてるお菓子が証拠だから信じるしかない訳で。
「わかったよ」
「ホント?じゃあ、かあ様達によろしくね。ねえ様」
「そっちじゃないよ! アスカの話がわかっただけ。リアがついて行くのは納得してないよ!」
「なんでよ、良いじゃない」
「ダメとは言ってないけど、理由を聞きたいの私は!」
妹の事だし心配だよね。
「離れたくないからって言ったわ」
「だからどうして?」
「一緒にいたいからよ」
「その理由を聞いてるの!」
「あーもぅ! 大好きだからよ!」
「それって、そういう? 女の子同士よね?」
一応、元男ではあるけどね。 もう戻れないし、そのつもりもないけど。
「ルナティアさん! 女の子同士でも別にいいと思う! それはそれだよ」
未亜ちゃんどうした…。成り行き見守ってて口挟まなかったのに急ね?
「ティーもママのこと大好きだよー」
「ありがとね、ティー」
可愛いから撫でとこう。 (♪)
「しかも子持ち!」
「そうだけど、違うから!」
「ティーはママが作った魔法だよー」
「…もう訳がわからない。頭痛くなってきたよ…」
でもお菓子は食べ続けてるね。よっぽど美味しいのかな?
「はぁ…もうわかったよ。リアの好きにして。ただ、かあ様達への伝言は知らないからね?」
「まぁ、ねえ様の事だし。どうせ帰らないんでしょ?」
「一つ気になったんだけど、ルナティアさんが帰らないからってルナリアを迎えに来させて、そのルナリアまで帰ってこなかったら二人のお父さん大丈夫なの?」
「あ…」
「大丈夫よ。かあ様がいるから。 ねえ様を私が迎えに行くのも、かあ様は反対してたのよ。好きにさせてあげてって」
「そうなんだ。かあ様ありがとう…」
「私にも、折角行くなら色々見て楽しんできなさいって言って送り出してくれたのよ」
「いいお母さんだね」
「そうね。とう様は自分勝手なだけよ。それにそろそろ弟か妹が生まれてるはずだから」
「え? リア、私それも聞いてないんだけど!」
「まだ来るとき卵だったし。 気になるなら帰ればいいじゃない」
「それはイヤ。とう様になんて会いたくないもの」
一応ルナリアの同行許可は貰えたってことでいいのかな?