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召喚被害者の日常は常識なんかじゃ語れない  作者: 狐のボタン
第一章
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勉強会 魔道具編



お昼も少し過ぎて、ルナリアとティーがお昼寝をしだした頃。

アリアさんから、”そろそろ手が空くから研究室へきて〜”という王妃様からの伝言を貰った。


未亜ちゃんは遠慮したのか部屋で待つらしい。

寝てるティー達とお留守番してくれるって。



アリアさんに案内されて廊下を進み、今まで行った事のないエリアに踏み込む。

「こちら側は王妃様の私室や研究室などのプライベートエリアになります」

後宮って言うんだっけ?よく知らないけど…。


「私が入って大丈夫なんですか?」

「今まで王族の方やご家族しか入られた方はおりません。私達近衛兵は別ですが…。しかし、王妃様のお呼びですから問題はありませんよ」

そういうものなのね。


途中いくつか扉があったりしたけど、案内されたのは一番奥、いかにも重厚そうな扉の部屋だった。

「こちらが王妃様の研究室になります」

「ありがとうございます」

「私はここで待機していますので何かご用がありましたらお呼びください」

扉をあけてくれたのでアリアさんと別れ、中へ入る。 なんか緊張するね。


「王妃様?お邪魔しますー」

結構な広さがあり、色々な物が置かれていて確かに研究室っぽい。


「アスカちゃん?ちょっと待ってね〜」

「はいー」

奥の部屋でなにかしてるみたい。



〜数分後~


「待たせちゃってごめんなさいね。魔石とか準備しようとしてたら、昔に作った魔道具とか崩れてきて片付けてたの」

「大丈夫です、色々置いてあるので眺めてましたから」

「そう? それじゃあ早速お願いしようかしら。 そっちに掛けて」

「はい」

普段お茶したりするテーブルより無骨で大きなテーブルに向かい合うように座る。


「魔刻刀は使えてますか?」

「まだ思うようにはいかないわね。魔力の消費が思ったより多いのと繊細な扱いにまだ慣れないわ」

「なるほど…。でしたら、こないだ魔法のイメージについてお話した事を思い出してください」

「うん? イメージで魔法の威力や消費魔力が変わるって話よね?」

「はい。おそらくですが…魔刻刀に魔力を流しすぎてるのではないかと」

「でも弱めると上手く彫り込めなくなるでしょ?」

「どう言えばいいのか、説明が下手で申し訳ないのですが…」

そう前置きして説明する。

たくさんの魔力を一度に魔刻刀に流すのではなく、

細く、強く魔力を魔刻刀へ流すようしっかりイメージする事を心がけるようにと。



「難しいわね、イメージかぁ…」

「そうですね、魔刻刀本体へ魔力を流そうとするのではなく、魔刻刀の刃先。その鋭さに意識を向けて魔力を流すといいかもです」

「鋭利な刃物の様に鋭く魔力を流すってこと?」

「そうです。 それを意識してやってみましょう?前回お見せした安全装置の魔道具なら簡単ですし」

「わかったわ」


安全装置の術式は大きく紙に書いてテーブルへ置いた。

範囲、効果、発動までの時間。 それぞれ1つだけだから本当に簡単。

範囲は半径1メートル、効果は装備者が動きを停止したら魔法の打ち消し。発動までの時間は5分。

これを重ねると装備してる人が5分間動かないと、半径1メートル内で発動している魔法を打ち消す。になる。


例えばこれが鑑定の魔道具の場合、効果の部分が膨大に膨れ上がる。

ステータスの項目ごとに必要なわけだからね。その上で状態異常等の検知とか…。

上げだしたらきりがないくらいに。



「魔力を鋭く…刃先へ」

一応魔力の流れを見てるけど消費はそれなりに少ないんじゃないかな。

細く魔刻刀へ魔力が流れる様になっている。これなら大丈夫そうだけど…後は慣れかな?

「今のそのイメージを忘れないようにしてください」


集中している王妃様はそのまま術式を書き終えるまで一気に進めた。

「ふぅ…確かに魔力の消費は明らかに減ったわ。 ただ…慣れないから疲れるわね」

「そうですね、同じ力で魔力を流し続ける為に集中力が必要ですから。ブレなければ術式はキレイに書けます。逆にブレると術式も乱れて効果に影響が出ます。 でも慣れてしまえば、繊細な魔力操作がいつでもできるようになっていきます」

「そうなの!?」

「はい、思い通りに魔力の出力を調整できるようになりますからね。例えば、細くしたり太くしたり…。そうすると魔力ドームを維持したり〜とかもしやすくなります」

「なるほどね…ある意味この魔刻刀を使いこなす事で、魔力操作を鍛えれるのね」

「そうなりますね」


王妃様はその後も魔刻刀を使い魔石を彫り込んでいった。

術式は簡単なものを色々見本として書き出しておいたよ。

魔刻刀の制作はまだ複雑すぎるから慣れてからってことに。


邪魔してもいけないから私も鑑定の魔道具を作りますか。

こっちはかなり複雑になるからなぁ…。ある程度容量のある魔石がいるね。

王妃様が用意してくれた赤の魔石なら大丈夫かな。

いくつか必要みたいだからそれも作っちゃおう。


愛用の魔刻刀で彫り込む…1つ、…2つ、…3つ…


「アスカちゃん…完成してるのを見てもいいかしら?」

「どうぞー」

並べられた完成品の1つを手に取り確認する王妃様。

これからギルドとかへ配備するなら確認は大事だもんね。


「この複雑さをそのスピードで終わらせてるの?!」

一応この道のプロですから…。この技術で魔族を復興させたと言ってもいいくらいに。

術式の簡略化、作れる人材の育成。便利な魔道具を広め周知させること。

それによって豊かになる生活。


「私の目指す所はここかぁ…遠いなぁ」

私もこの魔刻刀を扱いだしてから、ここ迄ある程度はかかったもの。

魔刻刀を思いついて設計して、実際に作るまでのが遥かに長かったけど…。


確認が終わったのか、また作業を再開しようとする王妃様。

「魔力は大丈夫ですか?無理しないようにしてくださいね?」

「ええ、以前ギリギリまでやって心配かけたから…それから気をつけてるわ」

やっぱり…。私も魔刻刀が出来てすぐに嬉しくて無茶して。

魔力が尽きかけて倒れた事で魔王城がパニックになったんだっけ。後から側近達に聞いたんだけどね。

暫く魔刻刀取り上げられたっけ…。 魔王なのに。


暫く王妃様の作業を見ながら魔力の流れも確認する。

危なかったら止めないとね。

集中力も落ちてきたのか乱れがあるし…そろそろかな。

キリのいいとこで止めないとね。


「王妃様、そろそろ終わりにしましょうか」

「まだいけるわ…」

そう言って次の魔石に手を伸ばす王妃様。

「ダメです。ここは譲れません。それに無理しても良いものはできませんし、身に付きませんよ?」


「…そうね、確かにそのとおりだわ」

「良かったです。わかってくれて…昔の私みたいに駄々をこねないだけ大人ですよ」

「アスカちゃんそんなことしたの?」

「はい、それで倒れて大騒ぎになりました」

「あははっ、経験者だからキツく止めたわけね」 

「そうですね。その後暫く、魔刻刀取り上げられましたから…」

「ふふっ、何してるのよ。 その辺は年相応なのかしらね?」

魔王として百年近く経ってたとは言えないね…。

まぁほら、魔力体だから?身体が成長とかしないし?


いくつか王妃様からの質問に答えたり、完成した鑑定の魔道具を渡したり…。

私はいつでも作れるから、できた分は全部渡しておいたよ。

そんな事をしてるうちに夕方になっていた。

そろそろユウキも帰ってくるかな。

自宅へ帰る事も相談しないと。

滞在を延期する事になった当初の目的は、魔道具の勉強会だったし、それも今日済んだからね。


後は王妃様が魔力操作に慣れることだから。こればっかりは焦っても仕方がない。










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