魔法の鞄
午後から王妃様と魔道具のお勉強会の予定があるので、お昼少し前にはお城へ帰ってきた。
帰り道でルナティアさんおすすめのお店でテイクアウトしてきた。
ファストフードみたいな感覚で買うことができて便利だった。
丸いパンに、挟むものを選ぶとその場で作ってくれる。
皆それぞれ好きなものを選んで挟んでもらった。
帰りの馬車に乗っていても食べやすくて、全員お昼ご飯はお城へ帰る馬車の中で済ませた。
ルナティアさんは宿にお金をすでに払ってあるからと今日は別れることに。
私達もそろそろ地球へ帰らなきゃいけないし、どうしようかな。
ルナリアを置いていって大丈夫なのか心配になる。
ドラゴンに戻れるだけの魔力はおそらくチョーカーの魔道具に溜まってはいる筈だけど…。
一度どうするか話さなきゃだね。 (ついてくるって言いそうー)
その時はまた考えるよ。
王妃様との約束の時間まではまだあるから、今のうちに二人のマジックバック作っちゃうか。
ルナリアはほっといたらお昼寝しそうだし。
「未亜ちゃん、ルナリア。 マジックバッグ作ろうか?」
休んでる二人に声をかける。
「うん! どんな風に作るのか楽しみ」
「私は未亜の後でいいわ。一度見てるし」
「そうなの?」
「ええ、ティーが作って貰ってたの見てたのよ。だから私も欲しくなったのだけどね」
そう言えばそうだったね。あの時は何も言わなかったから…。
未亜ちゃんにカバンを持ってきてもらって、ワッペンを手渡す。
「これをカバンの内側。なるべく真ん中辺に貼って。そしたら完成だよ」
「それだけ!?」
「ママがワッペンにもう全部準備してあるのー」
ティーは見てたもんね。 (うん!)
「そうなんだ…ありがとうお姉ちゃん」
「いいよー」
未亜ちゃんがワッペンを受け取りカバンに貼り付ける。
「消えちゃった…?」
「うん、それで完成だよ。中に手を入れてみて?」
恐る恐る手を入れた未亜ちゃんはかなり驚いたようだね。
「なにこれ!? 中の広さが感覚で分かる…広いなぁ」
魔力に比例するから、未亜ちゃんのはかなりの広さになるとは思ってた。
「その中に物を出し入れ出来るのは未亜ちゃんだけだから安心していいよ」
「ありがとう。何か入れてみていいかな?」
「大丈夫だよ。時間も止まった状態になるから食べ物を入れても腐らないからね」
「お姉ちゃんのストレージだっけ?それと似てる?」
「そうだね、私のはスキルだから”物“としてカバンがないだけだよ」
「ねぇアスカ…そのカバンが、もし破れたり、無くしたりしたらどうなるのかしら?」
「いい質問だねー。その辺はぬかりないよ? ワッペンが貼られると、破れたりしないように全体が強化、保護されます。 そして、盗難や紛失対策は…まずは本人しか出し入れできないのが1つ。手元にカバンが無い時は、引き寄せる様にイメージをすれば手元に現れるよ。 ワッペンを貼り付けた時に本人の魔力波長が登録されてるからね」
「これがほんとのカムバック…ママ凄いー」
「そんなダジャレで考えたわけじゃないよ!?」
「じゃあ学校行くときに家に置いていっても、カバン来てーって思えば手元に出てくるの?」
「そういう事だね。だから盗られてもすぐ取り返せるよ」
「便利すぎる…」
「よしっ、じゃあルナリアも作りましょうか」
「わかったわ」
ルナリアも今日買ったカバンに、ワッペンを貼り付ける。
二度見てるからスムーズだね。
「これで二人共完成だね。 何か他に聞きたい事とかあるかな?」
「私は大丈夫かな。もし何かあったらその時に聞いてもいい?」
「勿論大丈夫だよ」
「私は…聞きたい事はもう聞けたから大丈夫。 ただ…お願いがあるのだけど」
「うん?私にできる事ならいいよ?」
「………。私もアスカ達の世界に連れて行ってほしいの」
その話、しなきゃなって思ってたからちょうどよかったのかも。
「ルナリアちゃんも? それも楽しそう…お姉ちゃん、私からもお願い」
未亜ちゃんが乗っかるとは思わなかった。 私はいいんだけどね。
「そうね、いくつか条件があるけど。大丈夫かな?」
「言って! どんな条件でも飲むから…」
「そんな身構えなくて大丈夫よ」
「ええ…」
「まず、世界を渡るのに私の魔力をルナリアに循環しなきゃいけないの。その事に抵抗感とか拒否感があると連れていけないよ」
「大丈夫よ。問題ないわ」
みんなここを即答するんだよね。不思議だわ…。 (そう?)
だってあまり気分の良いものじゃないと思うのだけど。 (そう思ってるのママだけー)
みたいだねぇ…。
「後はルナティアさんにちゃんと話して許可をもらうこと。できたらご両親にも許可を貰ってほしいけどね」
「わかったわ…。ただ、とう様達への許可をもらいに行くのは難しいわね」
「やっぱり? そんな気はしたけど」
「ええ、まず距離が遠いから今から行っても戻るまでに何日もかかってしまうわ。それに、許可は絶対にくれないと思うから」
「そうなんだ。それなのにいいの?」
「過保護なのよ。 それに、とう様より強い人について行くのだから問題ないわ」
そう言われると私はなんだか複雑なんだけど…。 (ママは強いのー)
「じゃあせめてルナティアさんにはちゃんと話してね?」
「約束するわ」
「条件はそれだけだよ。後は向こうへ行ってからになるね。こっちとは色々違うから」
「そうね、そのときに教えて貰うわ」
ユウキには事後承諾になっちゃうけど、反対はしないと思う。
なんとなくね。