第八話 所有者
第八話 所有者
「この時の為にこの記者の渡辺がいる。」
「説明してくれ!記者さん!ひいじいちゃんの凄さを知ってるんだろ?」
善一が記者の渡辺に懇願する
「ま、吾妻家のひいじいちゃんの凄さはまたの機会にしてだ。」
「なんでだよ。」
「その自伝を取りに戻る必要はないぜ。」
その時炭勝があることに気づいた。
気づいてしまったら聞かずにはいられない
「そういえば、さっき、自伝の保管場所、知ってましたね?」
「ああ、知ってる。」
「他人の家の物置なんて実際いかなきゃわかりませんよね?」
「そうだな。」
「行ったんですね?」
「ああ、行ったさ。」
「いつですか?」
「もちろん事件の後さ。」
「それってついさっきですよね?」
「まぁそういうことになるかな。」
「行っただけなワケ、ありませんよね。」
「お見通しってことは…」
「出してください。」
「OK、そんな顔しなさんなって、初めから渡すつもりだったさ。」
「ほんとにそうですか?」
「まぁ、ちょっと遊んじまったのは認めるよ。悪い悪い。」
「反省してるようには見えませんが?」
「届けてやったんだから、感謝されてもいいと思うがな?」
「緊急事態じゃなきゃ泥棒ですよ?」
「緊急事態じゃなきゃ他人の家の物置なんて漁らないさ。」
「今回は、助かりました。ありがとうございます。」
記者の渡辺はカバンの中から袋を取り出した。
「なんせボロボロだったんでね。保管させて頂いた。」
「これで燈の日記を取り戻せるな。」
要が吾妻のひいじいちゃんの自伝を受け取ろうとすると
「だめだ!!」
善一が横から奪い取った
「何すんだ善一!」
「これは一冊しかないんだぞ!わたせない!」
「いらないだろ!そんな本!」
「他人は口を出すな!これは吾妻家のものだ!」
「・・・・」
流石の要も言い淀む。
善一の言い分が正しいからだ。
その本には吾妻伝と書かれてある。
吾妻家のものである証明だ。
扱いがどうあれ吾妻家の人間が所有しているのだ。
道義上要が勝手にはできない
「ハイ、ストーップ!」
記者の渡辺がのんびり止めに入る。
さっき見た光景だ。
「ま、こんなこともあり得ると思ってな。」
記者の渡辺がさらに一冊の本を取り出した。
「要君、これを君に進呈したいと思う。」
「これは?」
「あれのコピーさ。」
「コピー?」
「そう、君も言ってたろ?直筆の価値があるのは彼だけだ。」
「我々にも奴らにもコピーで十分だ。」
「随分用意がいいですね?」
「記者だからな、交渉材料は多いに越したことはない。」
「条件は?」
「ん?」
「タダってわけじゃないでしょ?」
「まぁ、な。」
「目的は何ですか?」
「なぜ目的があると思う?」
「貴方には奴らとは違う目的があるからこうして警察までわざわざ来たのでしょう?」
「スルドイね。ま、嫌いじゃないケドね。そういうの。」
「取締役自ら来たら普通そう思うでしょ?」
「目的は、密着取材さ。」
「…誰のですか?」
「君たちと君たちの関係者全員のさ。」
「関係者?」
「吾妻家と門田家だけじゃないんですか?」
「いーや、違うね。もっと大勢さ。なぁおまわりさん?」
「おまわりさん?警察の方が密着取材の対象なんですか?」
「そのうち分かるさ。すぐにね。」
「ぼくらは別にかまいませんよ。必要性を感じる範囲なら。」
「OK、交渉成立だ。まずこいつを渡しておくよ。」
「ではありがたく頂きますが。」
「どうしたんだい?」
「犯人と交渉する方法がわかりません。」
「…そのうち連絡があるさ。」
「なんでわかるんですか?」
「手詰まりになったら交渉するしかないからさ。」
「どうして手詰まりになったとわかるんですか」
「日本の警察は優秀だからね、ここにいる限り手詰まりさ。」
「さっき襲撃されましたが?」
「だからここにいる。後は警察と相談しな。」
「帰るんですか?」
「今日のところはな。すぐにまた来るよ。密着取材だからな。」
「そうですか。協力できるかどうかわかりませんが。」
「大丈夫。君たちが俺に協力するしかないの今日わかったろ?」
「うれしくないですが。」
「じゃまたな、今日の用事は済んだしな。」
「ご苦労様でした。」
そう言って記者の渡辺は去っていった。
ただ要の対応がひどく事務的に感じた。
記者の渡辺が出て行ったのを見て警察の説明が始まった