第七話 候補
第七話 候補
「兄さん心当たりがあるの?」
「ある、といえばある。」
「!誰?僕の知ってる人?」
「シッテルヒトダナ…」
「もう!兄さんまで何やってんだよ!」
「悪い、あまりの意外さについ思考が。」
「誰さ?その意外な人物って?」
「そうだなまず本人に聞こう。」
「本人?ここにいるの?」
「そりゃそうだ、吾妻家に泥棒に入ったんだから。」
「そっか…そうだよね。ってことはその人物は…」
「善一意外にいないだろ?」
「燈さんの弟の?」
「そうだ。善一、君は日記を書くのかい?」
イキナリ話を振られた善一が驚いて固まる。
「…イヤ…書いたことない…」
「だよな…安心した・・」
「なんだよ、それ、当然僕じゃないみたいな感じ!」
「当然きみじゃない、なのに候補に浮かんだから燈がこうなった。」
「悪かったな。勘違いさせて!」
こうして燈の弟の善一は候補から外れた。
「お楽しみ中悪いんだがな。」
記者の渡辺が面白そうにこちらを見ている
「そろそろ限界みたいでね。おまわりさんが。」
「我々もです。あなたは答えを知っているんですよね?」
「もちろんだ。」
要が記者に問いただしながら燈を呼ぶ。
「おい燈、善一は違うってさ。」
「・・・・そう!そうよね!そんなわけないわ!良かった。」
「悪かったな俺じゃなくて。」
善一がふてくされている。
「じゃ渡辺さん、茶番は楽しんでくれたかな?」
「ああ、楽しませてもらったよ。」
「では答えを頂きましょうか?」
「ああ、そうだな。」
「一体犯人は吾妻家の誰の日記を奪おうとしているんですか?」
「さっきの話の通りここにはいない奴さ。」
「どういうことですか?吾妻家の人間がほかにいるんですか?」
「そうだとも言えるし、違うともいえる」
「はぐらかすのはやめてください。本当に知ってるんですか?」
「ああ、知っている。」
「誰ですか?」
「そいつは自分の活躍を書き記した書物を残した。」
「その人のことを知ってるみたいに言いますね。」
「知ってるからな。」
「そいつが書き残したのは正確には自伝さ。日記とは少し違う。」
「自伝…?」
「そう、自伝さ、まぁ多少本人がカッコよく書かれているがな。」
「…さっきから聞いていると、」
「聞いてると?」
「いいです。今は。で誰なんですか?その自伝の著者は?」
「ま、ほんとはもっと大事に保管されてると思ってたんだがな。」
「?吾妻家にですか?」
「そう、吾妻家の家宝的な扱いを想像していたんが、まさか・・」
「…まさか?」
「家の外の物置にしまってるとはね、奴らも気付かなかったわけだ。」
「それってまさか・・・」
突然善一が飛び出してきた。
「気付いたかい?」
「ひいじいちゃんの?」
「そうだな、君らからするとひいじいちゃんか。」
「燈は小説だと思ってたけど…」
「自伝さ、君たちのひいじいちゃんの。」
「やっぱり…ほんとだったんだ」
「そう、大体事実さ。」
「…大体?」
「そう、大体だ。」
「大体事実?」
「そう、大体だ。」
「丸ごと全部じゃなくて?」
「そう、大体だ。」
「どうしてそう言えるんですか?会ったことないですよね?ひいじいちゃんに。」
「…まぁ、会ったことあるかないかは今は置いといて。」
「誤魔化さないでください。ひいじいちゃんは俺のヒーローなんです。」
善一がヒートアップするの見た要が途端に割って入る
「善一、その話はあとだ。僕も聞きたいことが山ほどある。」
「ありがとうよ、要君。」
「渡辺さん。奴らはその自伝を欲しがっているんですね。」
「そう、奴らはそれが欲しいのさ。」
「しかし吾妻家では予想に反して大事にされていなかった?」
「そう。」
「善一!その自伝はどこにあるんだ?」
当然の質問だが善一は困った顔をしている
「…家…の物置に置いてある。」
「…ほんとに大事にしてないんだな。」
「誰も信じてなかったんだ。ひいじいちゃんの活躍。」
「…取りに帰ろう。奴らに先を越されると燈の日記を取り返せなくなる。」
「!渡すのか、ひいじいちゃんの自伝!」
「吾妻家には大事じゃないんだろ?」
「僕には大事だ。百年吾妻家にあるんだぞ。」
「そもそも書物だろ?コピーでもなんでもすればいい。」
「そんなものあるわけないだろ!ひいじいちゃんの直筆だぞ!」
「どこの大物小説家だ。直筆になんの価値がある。」
「今価値が分かっただろ?凄い価値があるんだよ!」
「ない!そんなもの!」
「ハイ、ストーップ!」
記者の渡辺がのんびり止めに入る。