第六話 心当たり
第六話 心当たり
「それじゃ説明するよ。俺が何でここに来たのか。」
なんとなく全員に緊張が走る。
この記者の渡辺はまだ敵か味方かも分かってないのだ。
「まずは自己紹介何だが、すでに調べがついているみたいだな。」
「ある程度身元は確認させて頂きました。」
「ま、そりゃそうだな。」
「職業は記者。」
「そう。」
「伝承出版の取締役。」
「そう。」
「取締役?」
全員が驚きの声を上げた。
「ま、そりゃ驚くわな。」
「取締役自らどの様な御用ですか?」
「そんな怖い顔しなさんなって、ちゃんと説明するよ。」
「そう願います。あなたが敵か味方かも分からない。」
「大丈夫、味方さ。取材に応じてくれるしな。」
「誰もそんな約束はしてないのですが。」
「大丈夫、応じるさ、そうしないと困るしな、お互いに。」
「生憎だがうちの家族も燈の家族も何も困らないぜ」
要が割って入っていった。
「困るさ。特に吾妻家は。」
「どういう意味だ?」
「泥棒、入っただろ?」
「そうよ!どうして私の日記を盗んでいったのよ。」
燈が声を上げたが全員が疑問に思っていることだ。
「簡単さ。」
「理由を知ってるの?」
「ああ。」
「なんで私の日記を盗んだのよ?」
「…間違いさ。」
「・・・は?」
さすがの渡辺もちょっと答えずらそうだったし燈も受け止め切れていない。
「・・・間違いなのさ、あんたの日記を盗んだのは。」
「…どういう…こと?」
「ほかに狙いがあった。そういうことか?」
燈の隣にいた要が燈の肩を強く抱きながら問いただす
「正解だ。奴らの狙いは別にあった。」
「それじゃ私の日記は…今頃…」
「大丈夫だ。読まれただろうが捨てられたりはしてないだろう。
「どうしてそんなこと分かるのよ?」
「燈の言う通りだ。そんなんこと犯人にしかわからない。」
要が問いただす
「冷静になれ。簡単なことだ。」
「だったら答えてみろ。なぜ日記が無事とわかる」
「さっきも襲撃されたな?」
「ああ、そうだ。」
「奴らがまだ目的を達成していない証拠だ。」
「そうかもな。」
「敵は目的達成の為に警察を襲撃するような連中だ。」
「そんなんことはわかってる。」
「だろ?そんな連中がそんな簡単に目的を諦めるか?」
「また来るって言いたいのか?」
「その為にここに移動した。そうだろ?藤川真実さん?」
すぐ傍で警戒していた警官が微動だにせず答える
「その通りです。ここならそう簡単に襲撃などされない。」
要は納得できない感じだ
「それが燈の日記が無事なのとどう関係する。」
「奴らはまだ欲しいものは手に入れていないが?」
「燈の日記を持っている…」
「強引に奪いことも難しい。そうなったら?」
「燈の日記と交換したい・・・?」
「だろうな、おれならそうするがね。」
「ちょっと待ってください。」
これまでことの成り行きをただ見守っていた炭勝が割って入った
「そもそも彼らは何が狙いで吾妻家に泥棒に入ったんですか?」
「そうだな、君たちは何も聞かされていないんだったな。」
「どういうことですか?あなたは何か知っているんですか?」
「ああ、知ってるさ。」
「何をですか?」
「何もかも、だ。」
「部外者のあなたがですか?信じられません。」
「そうだろうな。だから答えをやる。」
「なんの答えですか?」
「奴ら狙いさ。」
「本当に知ってるんですか?」
「もちろんだ。」
「燈さんの日記は何と間違われたんですか?」
「奴らが間違えるのも無理はないんだが、」
「なんです?」
「それはほかの奴の日記を探してたのさ。」
「ほかの奴?」
「そう、ほかの奴さ。」
その瞬間に要と燈にある人物が浮かんだ。
要が燈のほうを向きに問いかける
「まさか、とは思うが。」
「そんなわけないわよね。」
「彼はそういうことするタイプなのかい?」
「しない、…トオモウケド…。」
「そう、だよね。」
「…キイタコトナイ…」
燈の思考が停止している。
考えることができなくなっている。
それほど抵抗感のある人物が思い浮かんだのだ
それを感じた炭勝が要に問いかける
「兄さん心当たりがあるの?」
「ある、といえばある。」