第五話 交渉
第五話 交渉
「先ほどは失礼しました。渡辺さん。」
「じゃ椅子に座ってもいいかな?」
「いいえ。」
「あ?」
「お帰り下さい。」
「どういう…ことかな?藤川さん?」
「あなたはどういうつもりか知らないが、我々は取材を受ける状態にないのです。」
「俺の身元は確認できたんだろ?」
「出来ました。」
「だったら話を聞いてもらおうか。」
「取材なら後日、広報を通して正式に申し込んでください。」
「オイオイ。」
「今日の所はお引き取り願います。」
「釣れないねえ。」
「見ての通り我々は市民の護衛任務に就いている。お引き取り願おう。」
「知ってるよ。門田家と泥棒に入られた吾妻家だろ?」
「!どこからその情報を?」
「それもあってあんたたちに会いに来た。」
「藤川、真実さん、藤川 玄人さん。」
「我々の名前を知っていることは珍しくありませんが。」
「ここは先ほど襲撃されましたね?」
「!共犯か?玄人!」
呼ばれた警官が記者に詰め寄る
「逮捕します!」
「オイオイオイ、それなら自分でここに来ないさ。」
「なら何し来た?何を知っている?」
そう言って真実が記者の前に出る
「まぁそう焦りなさんな、それをこれから説明するよ。」
「そう願おう。それに…」
「それに、何だい?」
「帰ってもらうわけにはいかなくなった。」
「そうだろう?」
そう言って真実はこちらを向いて
「皆さん、申し訳ありませんが場所を移動します。」
「そうだな、ここは風通しが良すぎるな。」
記者が立ち上がった。
「玄人。」
そう言われた警官が記者を連れて出て行った。
そして、真実がこちらへ来て、
「ここは危険かもしれません。上に安全な場所があります。こちらへ。」
そして案内され移動した場所は
「武器保管庫…」
「入ってください。」
「はい…。」
武器保管庫に入ってみると、
「武器、保管庫・・・?」
「ここは現在武器庫ではありません。」
真実さんはそう説明してくれたが、要が、
「ではこの表記は何ですか。」
「ダミーです。」
「なんでそんなことしてるんですか?」
「そもそもこの建物にこんな広い武器保管庫なんて必要ありません。」
「じゃこれは何なんですか?この分厚い扉は?」
「単なるアピールです。」
「誰になんのアピールですか?」
「敵の侵入に対する難しさをアピールしています。」
「随分準備がいいですね?」
「市民を守るのは警察の義務ですから、当然の備えです。」
「へえ-、敵の襲撃を想定しているワケですか…」
「…みなさんお入り頂きましたか、では扉を閉めます。」
そういって玄人が重そうな扉を閉める。
閉まった扉はピ-と電子音が出てガシャンと言っていかにも鍵の掛かった感じがあった。
部屋の中はそれなりの広さがあり生活に必要な一式がすべて揃えてあった
「ここなら安全です。渡辺さん。」
「OK、OK、ちゃんと説明するよ。俺が何者なのかね。」
そういって渡辺は部屋の入口付近のダイニングテーブルに座った。
「お願いします。場合によっては…」
「よっては?」
「あなたを逮捕します。」
「くっくっくっ、そいつは困ったねぇ。」
とても困っているようには見えない態度だ。
「それじゃ説明するよ。俺が何でここに来たのか。」