第四話 記者
第四話 記者
「はい、襲撃犯は鬼です。」
「ええーー」
その場にいる全員が驚きの声を発する
「鬼と言っても見た目は人間です。」
「そう…ですね。」
「こうなってしまった以上ことは急を要します。」
「そう…ですよね。なんでこんなことが…。」
「それをこれから説明します。ひとまず場所を移します。」
「そうですね。」
「ここは危険です。次の襲撃がある前に移動します。」
「行こう、みんな。後のことはそれから考えよう。」
そういうと驚きも冷めやらぬ内に荷物を持って移動しようとした。
遠くから女性の声が聞こえる。
「ちょっとお待ちください!」
その声を振り切って一人の男が会議室に入って来た
「こんばんわ。皆さんお揃いで。」
「何者だ貴様?」
さっき発砲した警官が銃を向ける。
すると女性警察官が慌てて、
「ちょ、ちょっと、いきなり銃を向けるなんて、どうしたんですか?」
すると要が全員に、
「そうか、事情を知らない人から見たらいきなり銃を向けるのはおかしいんだ。」
「不審者だからじゃない?」
炭勝も冷静さを取り戻して答える
「それでも日本じゃ職務質問が妥当だ。銃は向けない。」
「婦警さんも見てるしね。」
「同じ理由で発砲もできない。」
「さっきはいきなり撃ってたね。」
「麻酔銃って言ってたな?」
「うん。」
「だから音もそんなに大きくなかった。」
「それでか!」
「何か見たのか炭勝?」
「入って来たお巡りさん。」
「あっちか。」
「撃つ前に足でドアを閉めてた。」
「!」
「どうしたの?」
「そうか…そいつは貴重な情報だ。」
「そうなの?」
「ああ、間違いない。」
「何が?」
「あの二人の警官は…」
要の話の途中で不審者?らしき男が話し始めた。
「おっと、待ってくれ、敵じゃない。」
「信じられるか。何者だ?」
「コレ、コレ。」
不審者は左上腕の腕章を指さした。
「そうなんです。プレスの方らしいんですけど、勝手に入っちゃって。」
「悪いな、婦警さん。急いでたもんで。」
後にいた婦警さんが説明してくれた。
プレスを名乗る男が内ポケットに手を入れようとした。
「動くな。」
警官の声が響く。小さいがとても威圧的だ。
銃を構えたままだ
「ちょっと藤川さん!」
婦警さんが止めに入る
「どうしたんですか?藤川さん?相手はただの記者さんですよ。」
「君は下がっててくれ。」
「やりすぎです。問題になりますよ!」
「君には関係ない。」
「大ありです。記事になったらどうするんですか?」
「どうもしない。大丈夫だ。」
「大丈夫なわけないじゃないですか!一体どうしたんですか?」
プレスを名乗る男がゆっくり前に出る
「いやいや、ありがとう婦警さん、大丈夫だ。ここまでありがとう。」
「しかし…」
「ちょっと強引な取材なんでね、怒らせることには慣れてるから。」
「これは警官の対応として…」
「まぁまぁまぁ。」
そう言って会議室の外に送りだす。
だが婦警も、
「このままではあなたの身も危険ですし、警官の不祥事に…。」
「大丈夫です。職務にお戻りください。案内ご苦労様です。」
そう言って会議室のドアを閉める。
「さてと、さっきの続きだが、名刺出していいかな?」
「‥‥そこの机に置いて下がれ。」
「はいはい。」
そう言って男はポケットから名刺を三枚出して下がった。
「…なぜ三枚だ?」
「あんたたちに一枚づつ。」
「もう一枚は?」
「そっちの避難してる方々に。」
炭勝たちのそばいる警官が名刺を三枚とも取り、
一枚をもう一人の警官に、もう一枚を要に渡した。
「そのままじっとしてろ。」
「ハイハイ。」
名刺を受け取った警官が電話をかけた。
それを見た炭勝が不審に思う
「どこに電話してるんだろう?」
「ここだろ。」
そう言って要は名刺を炭勝に渡した。
「伝承社…出版社の名刺。本当に記者なんだ。」
「だといいがな。」
「名刺持ってるのに?」
「名刺なんていくらでも作れる。だから確認してるんだろ。」
「流石に電話の内容は聞こえないね。」
「たぶんこっちに聞かせたくないんだ。」
「何でさ?」
「出版社に電話してるんじゃないんだ。」
「だって、さっきは…」
「そんな名刺いくらでも偽造できる。」
「電話はどうなの?」
「偽の電話番号にかけても奴の仲間なら意味がない。」
「‥最近はやりの詐欺みたい。」
「そう思ったから別なところ電話したんだ。」
「それってどこさ?」
「身元が照会できる警察の部署だろ。」
「そんな事できるの?」
「一般人なら難しいけど…。」
「けど?」
「記者ってなら話は別だ。」
「どうして記者なら話が違うのさ?」
「あんな風体だ、他の記者や出版社を当たればすぐに分かる。」
「あんな風体…。確かに。」
そう、記者を名乗る男はボサボサの長髪、
ヨレヨレのスーツ、おおよそTVで見る記者とは程遠い。
そうこうしている間に電話が終わる
「玄人銃を下ろしていい。確認が取れた。」
「はい。」
そう言って記者に向き直って
「先ほどは失礼しました。渡辺さん。」
「じゃ椅子に座ってもいいかな?」
「いいえ。」
「あ?」
「お帰り下さい。」