第十六話 新居
第十六話 新居
「ここですか?」
「そうだ。ここだ。部屋に案内する。」
そうって連れてこられたのはこの敷地の外のタワーマンションだった。
「言っておくがここは敷地の外だが管轄外じゃない。」
「どういうことですか?」
「この当たり一帯の土地すべてがある企業の所有地だ。」
「警察にスポンサーがいるんですか?」
「まぁそういうことだ。」
「本当ですか?」
「正確には協力企業だ。アマテラス計画は官民一体のプロジェクトだ。」
「それでなんでタワマンがあるんですか?」
「それを今から説明する。着いたぞ。」
そう言われてついていった先は大きな会議室のような所だった。
その中にはいると
「炭勝!」
「要兄さん!善一さん!燈さん!」
「無事だったんだな!炭勝!」
「兄さんも!善一さんと燈さんも!」
「心配したぞ!鬼に襲われた後連絡できなくって!」
「ごめん。心配かけて。みんなは何もなかった?」
「こっちは何もない。ここに連れてこられただけだ。炭勝は?」
「さっきまで健康診断、持ち物検査。」
「ははは、それは俺たちもやったよ。」
「そうだよね。よかった。」
「よーし。そこまでだ。もういいだろ。座れ。」
藤川 真実の声が響き4人とも椅子に座った。
「ここまでくるとこれって監禁ですよね?僕たちの人権ってどうなってます?」
珍しく善一が質問した。
「そうだな。我々警察は君たちには監禁しているように見えるだろうな。」
「違うんですが?」
「一応保護してる形にはなってる。」
「とても保護に見えませんよ!」
「保護っていうか、隠してる。」
「誰からですか?」
「鬼に決まってるだろ。」
「はは…そう…ですよね…」
善一の確認めいた質問も無理なかった。
実際鬼に襲撃されただ隠れてるだけ、
この状況下で恐怖を感じずにはいられなかったのだろう。
「君たちの不安はもっともだ。」
藤川が善一の心を見透かしたかのような事を言い出した。
「そこで提案がある。選択肢と言ってもいい。」
「聞きましょう。」
要が乗り出してきた。
「僕たちにも選ぶ権利があるんですね?」
「そういうことになる。」
「教えてください。その権利を!」
「一つ目は我々に保護されこのまま隠れている。」
「その場合どうなります?」
「デメリットのが大きくなる。」
「どういう風ですか?外に出れないからですか?」
「それもある。」
「ほかには?」
「この戦いに期間がない。」
「つまり長い間身を隠さなければならない。」
「そうなる。」
「どの位の期間が想定されているんですか?」
「…暁 桃次郎の話をしたな?」
「はい。」
「彼の家は代々続く鬼狩りの家系だといったな。」
「はい。」
「この戦いは、千年続いている。」
「つまり…?」
「一生出られない可能性が高い。」
「鬼を殲滅できないときの話ですよね。」
「デメリットはまだある。」
「聞きましょう。」
この時点で要以外の三人に話す気力がなくなっている。
無理もなかった。
既に諦めってしまっても無理もない話だった。
「この戦いが千年続いているが、我々が全滅したとき。」
「そんな可能性があるんですか?」
「ゼロじゃない。」
「全滅したらどうなるんですか?」
「君たちの安全はなくなる。」
「・・・・」
四人とも言葉を失った。
今このアマテラス計画の成否が自分たちの運命そのままだと、
改めて突きつけられたのだ。
「さっき選択肢があるって言いましたよね?」
「ああ。」
「隠れるばっかりじゃないんですよね?」
「そうだ。二つ目の選択肢だ。君たちにも戦ってもらう」
「戦う?」
「そうだ。」
「あの鬼と?」
「そうだ。」
「本気で言ってます?」
「本気だ。」
「どうやって戦うっていうんですか?あんな化け物と!」
「これから教える。」
「僕たちはただの高校生ですよ?イキナリ戦えだなんて…」
「確かにただの高校生ならあんな化け物と戦うことはできないだろう。」
「そうです。もっと建設的にできることを提示して下さい。」
「戦うのが一番建設的なんだが。」
「そもそもなんで僕らが戦わなきゃならないんですか?」
その瞬間4人の思考は一致した。
(そうだ!なんで僕たちが戦わなきゃならないんだ。
これだけ多くの人が戦っているのにさらに僕たち迄戦う必要があるのか?
戦闘のプロが大勢いる。
素人の高校生が戦う必要なんて無いはずだ。)
「戦うのはあなた方の仕事じゃないんですか?」
要の口調がきつくなった。
「もちろん我々も戦うし、専門家の護衛もつく。」
「じゃ僕たちが戦う必要はないのではないですか?」
「そう言いたい所だが、そうも言ってられない程窮する事態だと理解してほしい。」
「何をそんなに急いでるんですか?」
そうだ。ここで護衛を待っていれば守りは強固になる。
鬼もそんな簡単にこここには侵入できないだろう。
焦っても状況がよくなるようには思えないけど。
「それはだな・・・」
藤川が話し始めると入口のパトライトが光りだした。