第十五話 検査
第十五話 検査
「今すぐやってもらうことがある。」
「はい。」
「持ち物検査と、」
「はい。え?」
「健康診断だ。」
「ええー!」
「どうした?なんか困ったことでもあるのか?」
「いや、別に何もありませんけど、」
「じゃ、まず持ち物検査だ。」
「どうして持ち物検査が必要なんですか?修学旅行じゃないですよね?」
「お前の持ち物に怪しい物が無いか確認するんだ。」
「無いですよ。あやしいものなんか。」
「分かってないな。」
「何がですか?」
「お前の知らない間に何か仕込まれてないか調べるんだ。」
「!…そんな、まさか。」
「お前が知ってるわけないからこっちで調べるんだ。」
「分かりました。」
そういって炭勝は全ての荷物を差し出した。
「全部だ、全部。」
そういわれた炭勝は怪訝な顔をして
「もうないです。荷物はこれが全てです。」
「何言ってる。スマホも出せ。」
「スマホもですか?」
「当然だ。むしろそっちが本命だ。」
「そうなんですか?」
「お前スマホがどれだけのことができると思って、って、お前スマホ持ってるか?」
「何ですか、その質問。持ってますよ、ハイ。」
そういって炭勝はスマホを取り出した。
「何ですか?スマホです。」
それを見た藤川巡査が固まっている。
「お前、二台持ってるのか?」
「そうです。それがどうかしましたか?」
「いや、あまりに意外だったんでな。」
「もういいですか?」
そい言ってスマホをしまおうとすると、
「待て待て、スマホこっちに渡せ。」
「え?持ち物検査ですよね?没収されるんですか?」
「没収じゃない。中を調べるんだ。貸せ。」
「何でそんな事するんですか?」
「鬼側にサイバー犯罪のプロがいたらそっからこっちの情報が洩れるだろ?」
「そんな可能性があるんですか?」
「さっき言ったとうりだ。あらゆる可能性を考慮する。」
「人に渡したことないんですけど。」
「じゃなおの事念入りに調べる。プロテクトも掛ける」
「ええ~、なんですか、それ?いつ帰ってくるんですか?」
「何もなかったらすぐ返す。」
そういった藤川巡査は炭勝の荷物を全て取りに来た人に渡してしまった。
「行くぞ。」
「どこにですか?」
「さっき言ったとおりだ。健康診断だ。それと精密検査もあった。」
「何ですか精密検査って?」
「お前の体の中まで調べる。」
「どういうことですか?」
「体に発信機でも埋め込まれてたら厄介だからな。」
「流石にそれは無理があるんじゃ…」
「あとDNA鑑定も行う。」
「そこまでやる必要あるんですか?」
「ある。」
「だいたいそれで何が分かるんですか?要兄さんとはちゃんと兄弟ですよ?」
「そんなことは分かってる。」
「じゃ何が分かるんですか?」
「伝承の答え合わせがある。」
「何ですか?それ?」
「今は知らなくていい。ついいたぞ。」
「ここ、ですか?」
「ここだ。」
炭勝が疑問に思うのも無理はなかった。
連れてこられた建物は大きなビルだがただの雑居ビルに見えた
「ここ・・・?ですか?」
「そうだ。問題あるか?」
「問題はないですけど・・」
「なんだ?」
「ここ病院ですか?」
「なんに見えるんだ?」
「病院には見えません。」
「病院じゃないからな。」
「え?じゃなんなんですか?なんでここに来たんですか?」
「ここは医療棟、一般に開放してる病院じゃない。」
「医療棟?」
「医療施設と言っていい。設備も十分だ。行くぞ。」
「あっはい。」
建物の中に入ると医療スタッフらしき人が受け付けてくれた。
「この後どうするんですか?」
「君はどうしたいんだ?」
「…もとの生活に…学校に通える日々に帰りたいです。」
「我々も最大限協力する。だから君も協力してくれ。」
「いつになったら帰れるんですか?」
「まだ答えられない。今は耐えてもらうしかない。」
「ですよね。行ってきます。」
「終わるころ迎えに来る。」
炭勝は妙に藤川 真実の言葉が気になっていた。
{まだ答えられない。}って言ってた。
何かある。藤川さんたちは何か知っている。
まだ足りない何かがあるんだ。
だからまだ答えられない。
諦めちゃだめだ。まだ希望はある。
桃次郎君たちみんなでと卒業するんだ。
ー数時間後ー
「ようやく終わったか。」
藤川 真実が迎えに来ていた。
「行くぞ。」
「どこにですか?」
「当面の君の家だ。」
「そうりゃそうですよね。」
そう言って車で1分。
連れてこられた建物の前で炭勝が固まってしまった。