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God:Rebirth(ゴッドリバース)  作者: 荒月仰
第10章 終末の戦い
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第232話 終末の戦い⑤

激戦のヴィーグリーズでエインヘリヤル第七部隊は次々立ち向かって往く。一方アンドローナの方では獣将部隊の別動隊が迫っていた。

 ヴェネルーサ王国の東の果て――ヴィーグリーズ平野にて激戦の火蓋は切られた。


 しかし戦力には深刻なほどの差があった。

 敵勢はおよそ七万超。片やこちらはただでさえ人員の少ない部隊が、所属隊員の大半が逃散したこともあって十四人しか残されていなかった。具体的には隊長のフリーレ、その取り巻きであるディルク、アベル、ラルフ、ケヴィン、アルブレヒト、ドレイク、ユルゲン、サミー、ジンナル、元フェグリナ親衛隊の幹部であったグスタフ、皇帝リドルディフィードと魔軍(レメゲトン)を裏切りラグナレーク側に付いたエリゴスとウァラク、そしてビフレストの戦災孤児ヴィーザル……


 その戦力差はもはや戦いと呼べるのか疑問に感ずるほどだった。ひとりひとりが文字通りに一騎当千の活躍をしたところで勝利には程遠いだろう。もはやフリーレの言う通り、此処は死地以外の何物でもない。一目散に脱兎のごとくに逃げ出すことこそが最適解であったろう。


 であれば、何故彼らは立ち向かうのだろうか?

 その理由は様々であった。


 或る者は無謀でも立ち向かう以外の生き方を知らなかったからとも言えるし、或る者は命を賭けるに値する真実の愛に気づいたからとも言える。一見矛盾しているようだが、敢えて死線に向かいこれを越えることこそが生である見出した者さえいた。それでも全員に共通して言えるのは、此処で命を散らしてもよいと思っていたことだった。


 一人だけ……ヴィーザルだけは違っていた。彼は死ぬ為に此処に来たのではない、この残酷な世界を生き抜く力を得る為に……その為に自ら地獄にやって来たのであった。だから彼は決して無茶はしなかった。逃げ惑いながら、隙を見つけたら槍を振りかざして跳びかかる。そんな戦い方を幾度も繰り返してゆく。


「……」


 既にストラータ城で実戦を経験しているとはいえ、今まで兵士たちに紛れて訓練に参加してきたとはいえ、元来此処は子供には荷が勝ちすぎる場所のはずだった。歴戦の戦士でさえも裸足で逃げ出すであろうほどに。


 しかしヴィーザルの思考は、苛烈な熱の中にあってもどこか冷静だった。彼は戦いながらに思いを馳せていた。戦場を駆け抜け此処で命を散らさんとする者たちの、生き様と胸中に――


「お頭ぁ!貴女の元での野盗暮らしは、ロクでもねえが最高でしたぜ!」


 図体も気心もでかいディルクは、大柄な体で戦斧を振るい襲い来る獣人と戦っている。

 彼は取り巻き連中のまとめ役として活躍してきた。決して善良な人柄ではなかったが、かといって性根の腐り切った悪でもなかった。そんな彼がならず者に身をやつしたのは自由に憧れたからだった。社会の窮屈さに辟易し、いつの間にか荒野に身を置いていた。


 そんな彼が集団のまとまりを重んじ、そのような役回りとなったのはどこか皮肉であった。彼はおよそ十数人の獣人を屠った後で、心臓を刺し貫かれて絶命した。


「お頭ぁ!社会に爪弾きにされた俺を、アンタは面倒見てくれたなぁ!」


 お調子者のアベルは、力強く迫る獣人の頭を戦斧で殴り付ける。

 彼はとにかく思慮の無い男だった。無計画に金を使い込み、底が付けば他人からゆすり上げる。とても見習えないようなその日暮らしを続け、やがて社会から弾き出された。ここで彼はようやく深刻に、己の身の振り方というものを考え始めたが、荒野での出逢いがすべてを変えた。


 彼にしてみれば、ならず者という生き方は性に合っていた。心の欲するままに生き、そして心の欲するままに彼は絶命した。


「お頭ぁ!最後に見せてやりましょう、俺たちが紡いできた絆ってやつをよぉ!」


 荒くれものだが人情味のあるラルフは、敵兵の力強い攻撃に跳ね飛ばされる。

 彼は強面で体格も大きく、誤解の受けやすい男だった。他人にどうにも距離を置かれがちだったが、荒野で出会ったならず者たちは違った。臆せず挑んで来る彼らに対し、彼らであれば自分も受け入れてもらえるのではないか、というおかしな幻想を抱いた。その想いは実り、彼らはかつてないほどに気心の知れた仲間となった。


 彼はとにかく仲間たちを愛していた。愛する仲間たちの為に武器を振るい、そして愛する仲間たちの為に死んでいった。


「お頭ぁ!アンタとの出逢いが、俺のくだらない劣等感を消してくれたんだ!」


 体は小さいが夢は大きなケヴィンは、戦場を駆けまわり武器を振るう。

 彼は背丈が小さいのでよく絡まれていた。しかし両親が夭逝(ようせい)し金もない彼は治安の悪いスラムに身を置くしかなかった。喧嘩の堪えない毎日に嫌気が差し、いつか金持ちになってやるという彼の想いとは裏腹に、荒野へと逃げ出すようにしてやって来た。そこで出会ったならず者の頭領は、女でありながらならず者たちをまとめ、とにかく彼に衝撃を与えた。


 今までの劣等感については、自身への単なる言い訳でしかないことに気づかされた。そして大きな存在に成ってみせると決意した彼は、彼の背丈の何倍も大きな獣人たちに立ち向かっていく。


「お頭ぁ!アンタともう酒が飲めねえと思うと残念だぁ!」


 大酒飲みのアルブレヒトは、力強く敵の攻撃を受け止める。

 彼はうわばみの如くに酒を飲み、家計を食いつぶしてきた。妻や子供にも逃げられ仕事もクビになった。行く宛ての無い彼は荒野で出会ったならず者とその日暮らしをするようになる。そこは良くも悪くも体裁など気にせず心の赴くままに生きている者たちの集合であった。


 彼はその時初めて、心から気に入った居場所を見つけられたのである。そしてその甘美な余韻に酔いしれたまま、死という奈落に呑まれてゆく。


「お頭ぁ!こりゃイチかバチかなんてモンを越えてるなぁ!」


 博打好きのドレイクは、敵の意表を突くような動きから槍を突き出す。

 彼は大のギャンブル狂であり、金ができればすぐさま賭けにつぎ込んでしまう哀しき男であった。とにかく金がなく、やがてボロを纏って路上で寝起きをするようになった。汚らしい彼はとにかく嫌われ、街の兵士からも度々厄介になっていた。やがて気分を変えるつもりで試しに荒野に繰り出してみることにし、そこで運命的な出逢いを果たした。


 彼はその時初めて、賭けで大きな勝利を掴んだのである。そして最後には敬愛する頭領の為に、負けと知りながら己の命をも賭けた。


「お頭ぁ!アンタいい女なんだから、せめて来世では幸せになってくれよぉ!」


 女好きのユルゲンは、ねっとりと絡みつくような視線を敵に向ける。

 彼はとにかく女癖が悪く、度々問題を起こしては街の厄介者になっていた。彼にしてみれば女は気まぐれなものだから真剣に向き合うものではなく、恋愛もただの遊び道具であった。腹が減れば食うのと同じように、心が乾けば女を抱きそして軽はずみに捨ててきた。いよいよ街に居場所がなくなった彼は、新天地を求めて荒野を渡る決意を固めた。そこで運命的な出逢いを果たした。


 世間の目など一切気にせず、己の矜持のみを堅持し続ける彼女に、彼はとにかく心酔した。彼は初めて見捨てたくない見捨てられたくないと思える女性に出逢い、そして彼女の為に戦場で死ぬことを選んだ。


「お、お頭ぁ……!やるよ、やるよ俺……見ててくれよぉ……!」


 気弱だが勇敢なサミーは、ぶるぶる震えながらも槍を手に立ち向かっていく。

 彼は気が弱く体格も小さいのでよく虐められていた。彼は元来悪のような心は持っていなかった。ただ悪どい連中に使いっぱしりのように扱われていた。或る時荒野に連れられて、囮の役回りをさせられた。そこで名うてのならず者集団と鉢合わせをして、彼は仲間たちに置き去りにされた。絶体絶命を悟り、窮鼠猫を噛むが如くにならず者連中に挑むが、何故だかその意気をならず者の頭領に気に入られた。


 彼はその時初めて自身を肯定してくれる存在と出逢い、このならず者連中はただ弱い者虐めをするだけのゴロツキとはどこか違うと感じた。それからは土壇場で幾度も勇気を見せては仲間の窮地を救い、その生き様は最期までぶれることはなかった。


「……お頭、今までありがとう」


 寡黙だが誰より心豊かなジンナルは、静かに斧だけは豪快に振り続けている。

 彼はとにかく口下手で話すことが苦手だった。話し声を馬鹿にされる経験を幾度も経て、すっかり口を閉ざすようになってしまった。そんな彼が社会で居場所を作ることは難しく、いつしか荒野でその日暮らしを始めた。或る時出逢ったならず者連中と、彼は成り行きで行動を共にするようになるのだが、何故自分のような者を信用してくれるのだろうと初めは疑問だった。結果として彼らが波乱慣れをしており良くも悪くも頓着がなかったこと、そして彼らの頭領が言葉でなく直感に従う気質であったからということに気づかされる。


 自分の居場所は此処しかないと思った彼は、懸命に仲間たちに尽くし始めた。誰かと心を通わす生き様を言葉なくして実現し、そしてさよならも言わずに消えていった。



 戦場の右翼側、グスタフは大槍を振るって戦い続ける。

 既に敵兵を何人も返り討ちにしていた。


 しかし無傷で済むはずもなく、彼は既に満身創痍であった。それでも惚れ込んだ女性の為、彼の中には尽きぬ熱き炎があった。


 大勢の獣人どもの背後から、ひと際大柄の獅子の姿が現れる。


「キシシシシ……随分とでっけえ人間だなぁ……俺は第3師団”獣将部隊”のヴァレフォル。俺の兵士たちをぶち殺してくれやがって、ただで済むと思うなよぉ……!」


「エインヘリヤル第七部隊グスタフ!俺は敬愛するあの(ひと)の為にも、全霊を尽くして戦います!」


 グスタフは力強く地を蹴って駆け出した。


 戦場の左翼側、エリゴスはハルバードを振るって戦い続ける。

 先遣部隊の将軍級(コマンダー)だっただけあって彼女は戦い慣れしている。おまけにフォルネウスという死線をも越えた彼女は現状フリーレの次に、多くの敵兵を返り討ちにしていた。


 彼女はフリーレに敗れ皇帝に見限られた。そこで情けを掛けられたフリーレに、生きるということの残酷な真実を教わった。生と死が隣り合わせであることに気づかされた。


 しかし今度の死線には活路など見えず、やがて刀を携えた豹の獣人が眼前に立ちはだかった。


「ほう、誰かと思えば裏切者のエリゴスではないか。貴様ごときが陸戦最強部隊の将軍級(コマンダー)であるこの我に勝てるとでも?」


「……黙れサブナック。私はもはやかつての私ではない。私は真に生きるということの意味を学んだ。泥に(まみ)れ敗北を喫したことのない貴様には分からんだろうがな」


 エリゴスはハルバードを振り上げながら立ち向かってゆく。



 戦線の中央付近を、フリーレはスレイプニルに跨って駆け抜けていく。

 グングニールをブンブン振り回し敵を薙ぎ払っていく。正に獅子奮迅の戦いぶりであった。彼女とすれ違った敵兵はみな土を付けてゆく。


 それでもフリーレに向かってくる敵兵の数は常軌を逸していた。敵はみなフリーレこそがラグナレーク側の大将首であると認識しているからだ。彼女の首を獲らんとみな躍起になっていた。そんな敵兵をフリーレは次から次へと屠ってゆくが、歴戦の彼女からしても手が回り切らなかった。


 そこに巨大な飛行物体が低空飛行で突っ込んできて、敵を一網打尽にする。それは神器レーヴァテインであったがオリジナルはアミーと共に爆散しているので、これがウァラクの変身した姿であることは考えるまでもないことだった。


【お姉様……!どうか今の内に……!】


「ナイスだ、恩に着るぞウァラク」


 スレイプニルを跳び上がらせ、フリーレは更に前方へと突き進んでいく。


 フリーレは敵に狙われる大将首であったが、同時に敵の大将首を狙ってもいた。敵を蹴散らしながら駆ける内に、その大将首がズシズシと足を鳴らして自ら姿を現した。


「グハハハハハッ!強えなあ。さすがラグナレークの隊長勢で最強と呼ばれているだけのことはあるぜえ」


 黒い毛皮に身を包んだ大柄の狼であった。

 太い脚で大地を踏みしめ、鋭い爪の伸びた腕を振り上げる。


 フリーレもまた、その狼が敵将であることを見出した。彼女はスレイプニルから颯爽と飛び降りると、グングニールを構えながら近づいていく。


「お前がこの部隊の師団長か?」


「おおともよ!俺様は魔軍(レメゲトン)第3師団”獣将部隊”の師団長、マルコシアス様だ。テメーがフリーレだな?その強さは噂に聞いているぜい」


 マルコシアスはにやりと口元を歪めて笑い、牙を見せた。


「デカラビアやエリゴスを単騎で圧倒するばかりか、ブネすらも手玉に取ったと聞く。お前と戦えるだけでも此処まで来た甲斐があったってモンさ」

「お前は戦いに楽しみを見出しているのか?私には理解できんな」

「なんだよ、つれねえなあ。お前は感じねえのか?圧倒的な力で敵を屠る快感を!敵を踏みにじることで得られる心の充足を!」

「そんなものは知らん。私はただ生きる為に戦ってきただけだ……今も昔も」


 フリーレはグングニールを突き付けながら、鋭い眼光をマルコシアスに向けている。


「ならば何故こうして死地まで来た?」

「貴様らが来るからだろう」

「グハハハハハッ!そりゃそうだわなっ!」


 マルコシアスは豪快に笑いながら、その鋭利な爪牙を見せつけた。


「だが諦めな!弱え者は踏みにじられ、生きる権利すらも剥奪される……それが世界の正体よ!せいぜいあがいてみせなっ!」


「ラグナレーク騎士団エインヘリヤル第七部隊長、フリーレ・ヴォーダン。推して参る……!」


 ◇


 ヴィーグリーズ平野からヴェネルーサ王国を挟んで西側――アンドローナ王国のアレッサで、テュール率いる第四部隊は地元兵と共に奮戦を続けていた。


 暴れる武器たちはいよいよ倒し尽くしてきた様子があったが、この街には更に幽冥部隊のガミジンによって不死族(アンデッド)として復活させられたアロケル隊の兵士が入り込んでいた。夜の闇の下では彼らは死ぬことを知らずに動き続ける。


 テュールたちは懸命に抗戦を続けて、なんとか持ちこたえてきた。やがて朝陽が昇り不死族(アンデッド)が消えていくのを見ると、彼らは大きく安堵の息を吐いた。


 そこに、寝耳に水の情報が入った。

 街の西側に突如敵勢が現れて、進軍を開始しているとのことだった。


「ハァッ!?どういうことだよ!アンドローナの西側に国はねえんだから、敵が西から来るわけがねえ!」


 テュールは知らせを聞いて声を荒らげた。

 アンドローナ王国はヴェネストリア連邦でもっとも西側に位置している。アレクサンドロス大帝国とは東のヴェネルーサ王国としか接しておらず、そもそもヴェネストリア連邦自体が大陸の最も南西部に位置している地域なので、アンドローナの更に西側は海ばかりで一切の国家が存在しない。


 つまり彼の言う通り、敵が西から来ることはあり得なかった。


 しかしビフレスト防衛戦の時も敵は北から来るはずがないと思い込み、実際にはそちらからも攻められた。今回も同様に、東だけでなく西からも来る可能性を考慮すべきであったのだ。突如勃発した武器と不死族(アンデッド)の暴走が、とにかく思考力を奪っていた。


 彼は既に疲れ切った体をなんとか起こすと、まだ動ける部下たちを引き連れ街の西側へと出陣した。


 既に敵勢は間近に差し迫っていた。犬頭の獣人たちが土埃を上げて向かって来る。もはや正面からぶつかる以外に道はなかった。


 テュールは鎖型の鞭の神器――グレイプニルを振るい敵を蹴散らしながら突き進んでいく。巨漢の彼が着込んだ特注の甲冑が金属音を奏でている。部下たちも死に物狂いで立ち向かい、或いは敵を倒し或いは敵に殺されていった。


 さすがのテュールも前日夜間から戦い通しで疲れ切っていた。ぜいぜいと息を切らしている。


 やがて前方からフードを深く被った犬の獣人がのこのこと現れた。雑兵よりも随分と大きな体格だった。


「おやおや、もしや貴方が第四部隊長のテュールではありませんか?」


「……テメェが敵将かぁ?」


 テュールはジロリと苛立ちに満ちた目線を向けた。


「ふふふ、だいぶお疲れのご様子。まさか西側からも敵が進軍してくるとは思わなかったのでしょう?まあ挟み撃ちは戦術の基本である故、これしきの事態をも想定できなかった方が悪いと思いますがねえ」


「……この犬畜生めが」


 テュールの凄みに臆することなく、フードを被った犬はクククと笑い始める。


「さてと、死に往くその前に自己紹介とさせていただきましょう……!私は第3師団”獣将部隊”の……」


 そこでフードがバッと勢いよく捲れたかと思えば、なんと更に二つの犬の頭が出てくるのだった。


「おいおい待ってくれよぅ、やっぱ俺っちに名乗りを上げさせてくんねえか?」

「い、いや……ボクこそが自己紹介をするのに相応しいよ……!」

「黙らっしゃい!先ほど決めたでしょう!今回は私が敵に名乗りを上げるのだと……!」


 突如現れて抗議する左右の頭に、最初から見えていた真ん中の頭が立腹して叫んだ。


 三つ首の犬……テュールは流石に驚きの表情を浮かべていた。


「ククク……改めまして、私は第3師団”獣将部隊”のナベリウスという者です。出逢って早々申し訳ありませんが、貴方にはこの場で(むくろ)に変わって頂きましょう。なあに痛いのは初めだけです、すぐに楽になりますよ」


 ナベリウスはそう言うと、勢いよくフード付きの外套を脱いで投げ捨てるとともに、地に両手を付いて四足歩行の体勢を取った。三つの頭を持つ大柄な犬が、テュールを紅い六つの瞳で睨み付けていた。

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