6 鏡の向こう
「リリー様、湯浴みはどうされますか?
お一人が宜しいですか?お手伝いしても宜しいですか?」
「一人で入りたいのですけど、使い方などを教えていただけますか?」
「はい。ではバスルームへどうぞ」
バスルームへ入って、今日初めて鏡を見た。
ん?誰?
鏡の向こうに知らない美少女がいた。
私と同じ動きをする。
「えええええーーー!!!」
「ど、どうされました?」
「私が私じゃない!」
「は???」
私はパニックになって支離滅裂の説明しか出来ずマーサを困らせた。
少し落ち着きを取り戻した頃、ルーがやって来た。
「入っても良いかい?」
「どうぞ」
頷くだけの私の代わりにマーサが答えた。
「何か、大きな声が聞こえた気がするけど、大丈夫かい?」
「すみません、最初に10歳って言われた訳が良く解りました」
「どういうこと?」
「私、あ、今の私は、 自分が認識している私ではありません。確かに今の私は10歳位に見えますし、元の私より遥かに美人です。元の私は中年の普通の主婦でした。」
「そうなんだ。視界は変わらなかったの?」
「元の私は大人にしては背が低い方だったので、おそらく今の身長とそう変わらないのだと思います」
「なるほど」
お互いが色々と納得した。
そうか、姿が変わっているということは元の私には戻れないのだな。と自分を納得させる。
「今日はもう、おやすみ。明日またいろいろ考えよう」
ルーが優しく声をかけてきた。
いろいろ放り出して寝よう。
なんか一気に疲れてしまった。
「はい。ありがとうございます」
私の返事を聞くと、ルーは静かに部屋を出ていった。
マーサにバスルームの使い方を聞いて、シャワーを浴びて早々に寝た。