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5 折り紙

廊下をぞろぞろと歩き、私に与えられた部屋を通り越した。


広いなぁ。

大きいお屋敷だとは思ったけど、外から見るよりも広く感じる。


読めない名札のかかった部屋の前で止まり侍女らしき女性が部屋の扉を開けた。


「ここだよ!」


ミューが手を引いて私を招く。

ルーは入らないようだ。


つられて入った部屋は私が思う子供らしさが無かった。

自分にあてがわれた部屋とあまり変わらない作りのようで、向かいにドアが2つ見える。


でも決定的に違うのは、ティーテーブルがとても低い。

ラグのような敷物の上に座卓くらいの低いテーブルだ。


敷物の手前で履き物を脱ぎ、ミューは低い椅子に座る。


「ハヤトさんの故郷の食卓用テーブルらしいですよ。確か、こたつ?とか言っていました。」


マーサが小声で教えてくれた。


洋館の要素が強いのに不思議に思っていたのが伝わったようだ。


こ、こたつなのか。

それは既視感が半端ないはずだ。


そんなことをぼんやり考えているとミューが呼び掛けてきた。


「リリーちゃんはここね。」

「あ、はい」

「エリーおねえさんはこっちね。マーサおねえさんも おえかきする?」

「はい。私もご一緒させてくださいね。」


マーサも参加するようだ。

先程から一緒に来ていた侍女らしき女性はエリーさんと言うらしい。


私は「ちゃん」で、何故二人は「お姉さん」なのだろう?

私より遥かに若そうなのに。

ま、いっか。ミューちゃんの定義なのかもしれない。


好きなものを描くのは楽しかった。

ミューは花の絵を描いているようだ。

私は果物の絵を描いた。

マーサは風景のようで、エリーは人物が無茶苦茶上手い。


あれ、エリーさんはもしかして私を描いているのだろうか?たまに目が合うなぁ。


もしそれなら過剰に美化しすぎである。


持ってきて貰った紙の中に色紙が数枚あった。


これ折り紙に良いかも。


「ミューちゃん、この紙貰っても良い?」

「いいよー。」


ミューちゃんが描いたような花を作るかな。


大体15cm位に折り目をつけて手で切り、百合、朝顔、薔薇をつくった。


ふと顔を上げると全員がこちらを見ていた。


「リリーちゃん!それどうやるの!?」


他二人もうんうんと頷く。


あ、折り紙が珍しいのか。

そういえば、外国でも喜ばれるって聞いたこと有るなぁ。


「えーと、作ってみます?」

「おしえて!おしえて!」


他二人もうんうんと頷く。


この中で一番簡単なのは朝顔かな。でも見映えは百合や、薔薇だよね。


「では、まず朝顔を、次に百合を。私の名前の花です」

「すごーい。リリーちゃんの花なの?」

「そうですね」


ふふ、と笑って答える。


すると、どこかからエリーがハサミを持ってきてくれた。


「まずは、正方形の紙を用意します」

「せいほうけいってなあに?」

「4つの長さが同じ四角ですよ」


私はミューの分まで紙を切り、正方形になった紙を渡した。


「まずは、角がきれいに合わさるように斜めに折ります」


みんなで折り始めた。


「む、難しいですね。ちょっと私には向かないかもしれません」


マーサが一番に脱落した。

エリーは途中までついてきたが、絵の方が簡単ですと言ってリタイアした。

意外にも、最後までついてきたのはミューだった。


「ミューちゃん上手!」

「お嬢様凄いです!」

「ミューゼェニア様 凄いです!」


「えへへ。リリーちゃん、次はこれ教えて」


ミューが指差したのは薔薇だった。


薔薇は難しいかもなぁ。

でも、今日はじめて作った折り紙の花の出来を見ると、薔薇も作れるかもしれないなぁ。


「とっても面倒だけど大丈夫?」

「がんばる!」

「お嬢様頑張って下さい!」

「うん!」


「まずは、半分に折ります」


私は先に折り、何個か途中のものを作る。

追い付いてきたら工程を先に進める。


テーブル作業のうちはついて来られたが、浮かしたまま折り込む段階でミューの限界が来た。


「リリーちゃん、もったままは おれないよー」

「そうだよね。私も初めて作ったときは出来上がらなかったよ」

「そうなの?」

「色々折っているうちに作れるようになると思うよ」


ミューは折り紙を見ながら考えたようで


「これもお花にして」


途中まで折ったものを渡してきた。

ちゃちゃっと折って仕上げた。


エリーが小さめの籠を差し出した。


「こちらにどうぞ」

「リリーちゃん、このおはな もらっていい?」

「どうぞー。なにか他にも作りましょうか?」

「ほかにもつくれるの?なにができるの?」

「鶴とか、箱とか、風船とか、苺とか色々有るよ」

「ぜんぶつくってくれる?」

「はい。良いですよ」


目をキラキラさせたミューが嬉しそうに見ている。


色の着いている紙を使って苺を作った。

赤い15cm位の紙とその四分の一のサイズの緑の紙が望ましい。


薄紅色の紙と若草色の紙で出来た苺は評判が良かった。

マーサやエリーまでもが欲しがった。


白い紙で鶴を、模様の有る紙で箱を作った。


残っていた紙で風船を作ると、膨らませたとき歓声があがった。


「すごい!ほんとうにふうせんになった!」

「紙一枚が膨らむなんて凄いです!」

「紙が風船になるなんてビックリです!」


「もしかしてもっと大きな風船も作れますか?」

「そうですね。なにか大きな紙はありますか?包装紙とか新聞紙とかがあれば良いのですが。」


エリーが探してきた紙は新聞に入っているチラシのような紙だった。


「これはいかがでしょうか?」

「はい。これで作ってみます」


読めない文字のチラシは、写真入りの食品の売り出し広告のようだった。


風船を作り、みんなで風船バレーボールのような遊びをして楽しんだ。


コンコンとドアを叩く音がした。


「ミュー、入っても良いかい?」


ルーが来たようだ。


「ルーちゃんどーぞ」


ルーは自分で開けて入ってきた。


「ミュー、まだ寝ないのかい?もう遅いよ。」


エリーが時計を見ておたおたしている。

マーサはハッとした顔をして片付けを始めた。

ミューは籠をルーに差し出した。


「ルーちゃん!これ!リリーちゃんがつくったの!」

「ほお。これは凄い・・・紙だけで出来ているのか。興味深い」

「いちご、おいしそうねー。ぜんぶ せいほうけいの かみでできてるんだよ!」


マーサとエリーが頷く。


「正方形とは、ずいぶんと難しい言葉を覚えたね。ミュー遊んで貰って良かったね。」

「うん! リリーちゃんありがとー!」

「いえいえどういたしまして。私も楽しかったです」

「リリー、ミューと遊んでくれてありがとう」

「いえいえ、本当に楽しかったです。 それでは、ミューちゃん、また明日遊んでください」

「はい!あしたもあそんでくれるの?」

「はい。お願いしますね」

「やったー!」


ミューの部屋を退室し、自分の部屋へマーサと共に戻ってきた。

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