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3 いただきます

食事するのにこの格好で良いのかなあ?

ふと疑問に思い自分の服を見た。


別段汚れてはいないけれど、明らかに普段着。

そうだバスルームに鏡有るかなぁ?

ちらっと覗いたけれど中迄入らなかったのよね。


バスルームに行こうとしたら呼ばれた。


「失礼します。リリー様、お食事のご用意が整いました。」

「あ、はい!今行きます」


ドアの外から呼ばれ、急いで部屋を出た。


「そう、急がずとも大丈夫ですよ」


マーサが優しそうに笑う。


「ははは、なんだか緊張しちゃって」


私はテレ笑いをし、マーサとメインダイニングに向かった。


来たときは気がつかなかったけど、そこかしこに有る置物とかが高そうだ。

マーサが重厚そうなドアーを開けると、丸テーブルにルーと、ハヤトと、小さな子供が座っていた。

きっとあの子供が妹だろう。


「お待たせいたしました」


マーサが言うと


「大丈夫全然待ってないよ」


ルーが答えた。

私も何か言うべきだろうか?


「お招きありがとうございます」

「そんなに格式張った席ではないから楽にしてね」

「ミューゼリアだよ!」


幼女が自己紹介してくれた。

マーサが言っていた名前と若干違うのは子供の発音のためだろうか。かわいいなあ。


「妹のミューゼェニュアだ」


あれ?ルーの言う名前も違って聞こえる。

私が悩んでいると


「あー聞き取れないのか。妹のことはミューと呼ぶと良いよ」

「はい。ミューちゃん、はじめまして。私はリリーです。どうぞよろしくね」

「リリーちゃん?ミューとあそんでくれるの?」

「はい。何してあそびましょうか。お食事が終わったら一緒に遊びましょう」

「やったー!」


かわいいなあ。

3歳にしては小さい気もするけどお話はしっかりしているから流石 女の子なのかな。


ニコニコした幼女が期待を込めた眼でこちらを見ていた。


マーサと着席する。

部屋の一番奥にルー、右横にミュー、左横に私、その隣にマーサ、ミューとマーサの間がハヤト


「失礼します」


食事が運ばれてきた。

ワゴンのような台に乗っている。


テーブルに並んだのは、

ホワイトシチューとパンとサラダとワインのような飲み物だ。


「リリー様、苦手そうなものはありますか?」


マーサが心配そうに聞いてきた。


「これはお酒ですか?もしそうならごめんなさい。」

「お酒です。他の物をお持ちしましょう」

「ありがとうございます」


同じタイプの空のグラスに褐色の液体が注がれる。

フワッとりんごジュースのような甘い香り。

おいしそう。りんごジュースは大好きなのだ。


「では、食べよう」


ルーの言葉でみな食べ始めた。

私は一人で手を合わせ


「いただきます」


と、いつも通りに無意識で言ってしまい注目を浴びた。


「リリー、それはなんだい?何かのお祈りかい?」


そう言われて気がついた。

たしか、外国語にも該当する言葉が無くて、いただきますとご馳走さまは日本の素晴らしい文化だとかなんとか。何かで読んだ。


「私が居た国では、食事の前に作ってくれた相手やその食材に感謝の言葉として、いただきます。と言い、食べ終わった後には、食事を用意してくれた相手やその食事に、ごちそうさま。と言います。」


こんな説明でよかったかしら。


「おもしろいね。食べる前は作ってくれた人で、食べたあとは用意してくれた人なんだね」


あれ?本当だ。習慣だからと ちゃんと考えたことが無かったのかもしれない。


「そうですね。習慣だからとあまり深く考えたことがありませんでした」

「そうかい。でも良い習慣だと思うよ。感謝は大事だよね」

「はい。ありがとうございます」


横でマーサが小声で いただきます。と言い、こちらを見てニコッとした。

私もつられて微笑んだ。


ホワイトシチューは普通にホワイトシチューだった。

パンも普通にパンだったし、飲み物はりんごジュースの味だった。

でも、サラダの葉っぱは、何か知らない葉っぱだった。

レタスではなく、ベビーリーフっぽい感じ。


「リリー様、お口に合いましたか?」


ハヤトが、声をかけてきた。


「はい。食べなれた味にとても近くて食べやすいです」

「それは良かった。私は最初、食べたことの無いものばかりでした」

「そ、それは大変でしたね」


明治か大正かって感じなら洋食風もあまり馴染みがないのかしら。

日本史に詳しくないからいつ頃洋食が家庭の食卓に登場するようになったのかわからないや。というか、言葉が通じるだけで まったく同じ世界 、ではなかったんだった。


「私で力に成れる事が御座いましたら遠慮無くお声がけください」

「ありがとうございます」


みんな優しいなぁ。

こんな何処の誰かも判らない人物に親切だ。

何かお返しができると良いなぁ。


食べ終わりそうな頃、デザートらしきワゴンが運ばれてきた。


「リリー、食べたいのはあるかい?なんなら全部でも良いよ」


少し笑いながらルーがデザートを勧めてきた。


「全部は要りません。そんなには食べられません。どれも美味しそうですが、これを頂きたいです」


私はチョコレートケーキに見える物を選んだ。


みんなも食べたいものを選び配膳される。


一口食べるとガトーショコラだった。

そういえば、ガトーショコラってそもそもチョコレートの丸いケーキって意味らしい。

四角い形だとガトーショコラって言わないの?と聞けば四角いケーキはシュニッテンだとお菓子に詳しい友人に言われたことがある。


美味しかった。


「ごちそうさまでした」

「ごちとま!」


私の後にミューがおそらく、ごちそうさま らしき事を言った。

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