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#4 俺の用心棒生活について(1)

 俺が猛火亭にて用心棒を始めてからはや二ヶ月がたった。時間が経つのは早いものであっという間の二ヶ月間だった。

 夏も終わりに差し掛かり夜の街は以前とは違い冷たい風が吹いている。

 俺の生まれ育ったところはカイロ霊峰のすぐ真横で、冬の始まりが早く今の帝都の気温はまだまだあったかいと感じるほどだ。


「くしゅん。」


 シェリーが可愛らしいくしゃみをすると客からは体調を心配する声が聞こえる。

 今の猛火亭は今までと同じような活気がありながらも、あらあらしい雰囲気の人間たちは鳴りを潜めている。

 今までは冒険者がメインの酒場だったのだが、俺が用心棒として働き出したことをきっかけにだんだんと冒険者たちは遠のいていき、代わりに安全に美味いメシと酒が頂けるということで商人が増えたのだ。

 足繁くここに通う商人たちから聞いた話によると商人が酒を飲む時は周りに細心の注意を払うそうだ。

 商人だとわかれば、絡まれる可能性が上がるそうだ。酒を飲み陽気になった冒険者は歯止めがきかないのだという。


 俺は今バーカウンターの一番箸の席に座りおっちゃんの作ってくれた賄いと酒を楽しんでいる。

 三色飯付き家賃なしの条件で俺は住み込み用心棒として働いている。昼の営業は酒を出していないので夜だけ用心棒として働いているのだ。

 その間俺が何をしているのかというと、この店で知り合った様々な業種の人間の手伝いをしている。

 商人の商品の積み込みから魔導書の解読までなんでもやっている。

 そのおかげで今では俺はこの町に馴染みつつある。最初は常連客の一人、アンドレア商会のロポポさんが体力があるならどうだ?と誘ってくれたところから始まった。それからは常連客を中心に頼まれごとを受けるようになったのだ。


「ふー。休憩休憩!」

「お疲れ様。今日も大忙しだな。」

「ほんと!嬉しい悲鳴だよー!あ、お母さん。私にも賄い頂戴!」


 そう言いながらシェリーは俺の隣の席に座り、顔をパタパタと仰いでいる。忙しく動き回っていたからだろうか。汗をぬぐいながら火照った様子のシェリーは妙に色っぽいのだ。思春期をまだギリギリ過ぎていいない身からするとなかなかに我慢ならんのだが・・・


 シェリーは賄いを美味しそうに頬張り舌鼓を打っている。


「そういえばもう夏も終わるね。」

「そうだな。帝都に来てから時間が経つのが早いよ。」

「私もそろそろ学園の準備始めないといけないから大変だよー。」


 シェリーはただの町娘なんかじゃなく、帝国最高学府のウォーレル学園の生徒なのだ。帝国の名のもとに作られたウォーレル学園は門戸を広く開いている。ウォーレル帝国内だけでなく留学生として様々な国から生徒を募集しているのだ。今は夏休み中ということもあり学園の生徒はほとんどが帰省しているが学園が再開されればここも学生で溢れかえるそうだ。


「それは忙しくなるな。夜の手伝いも減らすんだろ?」

「うーん。出来るだけ減らしたくは無いんだけどテストの前とかは流石に減らさないとダメかなー。」

「やっぱり学園の勉強は難しいのか?」

「そーだね。教えてくれる内容もレベルが高いけど、それよりも周りの子達の熱意の高さに気圧されちゃう感じかな。私もやらないとってなっちゃう。」


 ウォーレル学園を卒業できればそれだけでこれからの人生は安泰だろう。もしも成績上位者であったならば帝国のエリート出世コースにまっしぐらだ。


「それに今年はマーリーン導師の授業が開設されるらしいからね。ぜひあってみたいなあ。成績上位者しか受けられないらしいから頑張ってみようかなって。」

「マーリーン導師?それは有名な先生なのか?」


 俺の質問にシェリーは驚きのあまり食事の手を止め目をまん丸に開いている。


「ロイってばマーリーン導師を知らないの!?」

「いや、そんなに驚くほど有名なのか?」

「有名だよ!帝国だけじゃなくて世界的にも有名な魔法使いだよ!?いくつもの古代魔法を復活させた、歴代魔法使い番付でいつも一位のあのマーリーン導師だよ!?」


 そこまで言われても本当に知らないんだよな。実際俺は学者には興味がないし、魔法もそれなりには使えるが刀術の方が使い勝手がいいので使う必要がない。だからわざわざ学術書を買うこともないし誰かに教えを請う必要もないわけだ。そうなると自ずと魔法界隈の常識ってのには疎くなるわけで。


「申し訳なんだが、そこまで言われてもやっぱりピンと来ないなー。」

「そっかー。それなら仕方ないなー。でもねとにかくとーってもすごい人なんだよ!」


 シェリーにそこまで言われるとは正直かなり気になってきた。


「でもそんなに有名な人なら学園の先生なんかやってていいのか?国々から引く手あまたなきもするんだが。」

「それがね。変わり者らしくてどこの国にも仕える気がないんだって。マーリーン導師曰く、『私が仕えるに値する王は今の世にはいない。それならば次代の若き才能たちに期待するのも必然だろ?』だって。八国会議で王様たち全員の前でいったんだよ?本当に憧れちゃうよー。」


 俺はその話を聞いてどきりとした。俺はマーリーンという人間は知らないが、同じ話を聞いたことがある。それも本人が酒の肴に語った話のうちの一つだった。普通ならとんだホラ吹き野郎なのだが俺はその人が本当にそれをするのだろうという確信があった。

 こんなことを言える人間は極稀だろう。嫌、二人といて堪るもんかって話だ。


 そのあともシェリーはマーリーン導師のファンなのだろう。様々な英雄譚を聞かせてくれた。楽しそうに話してくれるシェリーとは裏腹に俺は嫌な予感が絶えず冷や汗をかき続けていた。



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