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67 花嫁奪還

 居間で朝ご飯を食べていると、鳩が飛んできた。

 

 チュンチュン。


「食べれるかな、コイツ」


 オレは鳥を焼いたやつが好きだ。


「伝書鳩食べると怒られますよ」


 コリンナが伝書鳩に縛ってある手紙を取ってくれた。

 ヘルガはもうギルドに行ったらしい。


 オレは遅い朝ご飯を取っていた。


「読まれます?」

「……読めない、読んで」

「フフ……正直なリク様は可愛いですね。

 わかりました」


 オレは呪いの影響で知力が下がってて文字とか読めない。

 ……いや、ホントはけっこう賢いんだから。


「お父様にリク様との結婚を認めてもらうのに失敗しました。

 今にもジークムント家と結婚させられそうです。

 私は東の塔の自分の部屋で軟禁されています。

 早く助けに来てください。あなたのミアより」


 コリンナはオレでもわかるようにゆっくり読んでくれた。


「何! ミアが結婚させられるだと?」


 オレのミアを奪おうなんて許せないな。


「ジークムント家って何だっけ?」

「たしか、ミア様が縁談を進めてる侯爵様らしいですけど……」

「くそお、ミアはオレの嫁だぞ。

 奪うなんて……」

「あちらもそう思ってらっしゃるでしょうけどね」

「何か言ったか?」

「いえ、そんなことありません」

「ま、いいけど」


 オレはコリンナの作ってくれた朝ご飯を口に突っ込んだ。


「もごご」

「急ぐと、のどに詰まっちゃいますよ」


 コリンナが優しく背中をトントンとしてくれた。


「ありがと」

「ふふ、美味しかったですか」

「コリンナの料理はみなおいしい。

 もう少しゆっくり食べたかったんだけどな」


 コリンナはオレの背中にぴったりくっついて来た。


「明日も私が作りますからね、リク様が喜んでくれるから」

「うん、頼む」

 

 コリンナの身体がぴったりとくっついている。

 肉球をムニムニしてると、時間がたつのを忘れるな。

 

「……ふみあ……」


 あ、ムニムニしすぎてコリンナが甘い声を出してしまった。

 これ以上すると、出発できなくなるな。


「さ、着替えるか」


 コリンナは頭をブンブンと降って、衣服を正した。


「はい、準備いたします。

リク様、紅茶とか飲まれないんですか?」

「うん、急ぐからな」


 コリンナがてきぱき着替えさせてくれた。

 よし、貴族の坊ちゃんみたいな格好だな。


「じゃあ、行くか」

「わかりました。

 ヘルガ様のところに相談に行くんですね?」

「いや、ミアを連れて帰ってくる」

「へ? ヘルガ様とかに相談されないんですか?」

「ミアが泣いてるかもしれないだろ、急がなきゃな」


 オレの好きな人たちが悲しい思いをするのはいやだ。


「そんな、かっこいい顔してむちゃくちゃ言わないでください!」

「行ってくる、コリンナ。

 ヘルガに伝えて」


 オレは瞬間移動した。


「ちょっと待ってください! リク様!」


 ★☆


 ベケットの街の一番高いところに来た。

 

「ミアのうちは確かあっちの方だったかな」


 大きいお城がある。

 たしか、東の塔って言ってたな。


 あれか、じゃ、飛ぶか。


 ヒュン


 オレは瞬間移動した。


「ぐええ」


 おっと、カエルでも踏みつぶしちゃったかな。


「リク様!」


 目の前にはミアがいた。


「無事か、ミア」

「はい!」


 ミアが感極まってオレに抱き着いて来た。


「ぐええええ」


 その勢いで下のカエルがつぶれたのかな。


「何だか、下のカエル潰しちゃったみたい」


 足をどけると甲冑に身を包んだ騎士がいた。


「何だ、コイツ」

「あ……リク様、ローゼンクランツの上に飛んできたんですね」


 ミアがローゼンクランツとやら脈を取った。


「生きてるならいいわ、このままにして置きましょう」


 さて、長居は無用だな。

 おっと、ふらついてしまった。

 この感じ、さっきの瞬間移動でもう魔力がないぞ

 

「リク様、大丈夫ですか!」


 ミアがオレを支えてくれて、ソファに連れてってくれた。


「瞬間移動はだいぶ魔力を使うからな」

「……もう、そんな大変な魔法を使って……心配させないでくださいね」

「ちょっと休めば平気だから」

「はい……」


 ミアはもじもじしていた。


「どうしたんだ?」

「あの、久しぶりに会うリク様がかっこ良すぎて……」


 耳まで真っ赤だ。


「ははは、そうか。

 こっちおいで」


 オレの隣に座るよう促した。


「はい……」


 照れながら、ミアはオレの隣に座った。

 ちょこちょこと動く様子が小動物みたいで可愛い。

 久しぶりで照れてるって言うミアを見るのも嬉しいもんだな。


「ねえ、リク様」

「何だ?」

「良ければ、久しぶりに膝枕しませんか?」

「……嬉しいぞ」

「やった!」

 

 ミアは手を握って喜んでいたので、頭を撫でてやる。


「ここは私の部屋ですから、どれだけ撫でてもいいですよ?」

「うーん、でも今は膝枕してもらおうかな」

「あ、そうですね」


 ミアはオレが頭を置きやすいように座りなおしてくれた。


「あー、落ち着くな」

「良かったです。

 私は全く落ち着きませんけどね、ドキドキして」


 太ももを通してミアの鼓動が聞こえてくる。


「そんなこと言われると、オレも落ち着かなくなるぞ」


 寝っ転がって下から見上げるミアも、照れた笑顔が可愛い。

 オレもドキドキしてきた。


「リク様は疲れてるだろうから、寝てていいですよ」

「そうか」


 目をつぶると、一層身体が癒されて行く気がした。


 ちゅ……


 ふと、唇が触れ合った感触があった。


 眼を開けると、ミアが顔を真っ赤にしていた。


「膝枕にはキスがついてるのか?」

「……ついてます。

 目をつぶったリク様可愛くて、キスしちゃいました」


 可愛いことを言ってくれるな。


 ぱっと立ち上がったオレは、ミアを抱え上げベッドにポイっと投げた。


「きゃ」

「いたずらっ子にはお仕置きが必要だな」

「な、何するんです?」


 ミアは頬に手を当て今から何されるのか想像して真っ赤になっているようだ。


「眼をつぶって」

「はい」


 ミアに覆いかぶさって、唇に優しくキスをした。


「ぷは」

「リク様!」


 ミアはオレをぎゅっと抱きしめた。


 互いの心臓が重なり、鼓動が加速度的に激しくなっていく。


「ミア」

「リク様……」


 オレとミアは互いに激しく抱きしめあった。


 突如、ノックの音。


「ミア様、護衛のフリックです。

 ローゼンクランツと交代に参りました」


 オレとミアは抱き合ったまま、しばらく固まってしまった。


「……どうしましょ、リク様」

「ワープだ、ワープ」


 難しいことは後回しだ、オレはミアがいればいい。


 ヒュン……

 

 ――瞬間移動した町長の家にはみなが集まっていた。


「「リク様!」」

「きゃ」

「あいたたたた」


 ミアにケガさせるわけにはいかないので、オレが下敷きになった。


「お帰り、ミア様」


 ヘルガの後に続いて、みながミアに挨拶をする。

 ミアも久しぶりにみなと会えて嬉しそうだった。

 

「ねえ、リク」

「どうした、ヘルガ」


 ヘルガが心配そうに尋ねた。


「話し合いはうまく行ったの?」

「してないな。

 瞬間移動でミアの部屋に行ったら、久しぶりだったからな」


 ミアが顔を真っ赤にしていた。


「きっとリクのことだから、ミア様と久しぶりにあったから、イチャイチャしてて……見つかったから逃げてきたってとこかな」

「おお、ヘルガ。

 名探偵だな」


 ヘルガはため息をついた。


「……リクはミアちゃんが心配だったのよね?」

「当たり前だろ? 自分の部屋に閉じ込められてるって言ってたからな」


 オレは立ち上がってミアの頭を撫でてやる。


「オレの嫁なんだから、ずっと一緒に居なきゃだめだ。

 そうだろ、ミア」

「はい!」


 ミアがオレに寄り添ってきたので頭を撫でてやった。

 コリンナと……お、リンもついでに頭を撫でてほしそうだ。

 

「それで、ヘルガ様。

 今からどうなさるのです?」

「ミア様のお父様、グラフ侯爵様を倒すしかないかもね」

「よし、決まりだな!」


 オレは天高く拳を空に突き上げた。


「グラフ侯爵をぶっ倒すぞ!」

「「おー!」」


 ミア、コリンナ、リンは元気よく拳を上げた。


「ちょっと待てええええ!」


 町長が勢いよく入ってきた。


「アンタ、グラフ侯爵から町長にしてもらってる私の家でよくそんなことが言えるなあ!」


 町長は顔をゆでだこみたいにして今にも血管が張り裂けそうだった。


「町長、あまりカッカとしてると早死にするぞ」

「リク様、私が早死にするとしたらアンタのせいですよ!

 明日にでも侯爵様に殺されたっておかしくありませんからね!」

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