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56 貸し切り風呂

 町長がブライアンやザイフリート、アルベルトを別室に連れて行くと、プロジア、キットとトビーは自分たちの宿屋へ戻って行った。


「あれ、リン。

 オレがあげた黒い服着ないのか?」


 リンはまだみすぼらしい服を着ていた。


「あれはまだもったいなくて着れないのです」


 ぴょんぴょんと飛び上がっているリンは嬉しそうだが、顔を横に振っていた。

 レレムが作ってくれた服は普段着だと思うんだけどな。


「おっと、いたいたヘルガちゃん」


 大きな声を出しながら服屋のおばちゃんが町長の家に入ってきた。


「あ、おばちゃん」


 ヘルガはおばちゃんに気づくと近づいて行った。


「孤児院に行ったらここだっていうからさ、持ってきたよ。

 よいしょっと」


 おばちゃんは背中に背負っていた布袋をゆっくりと床に置いた。


「出しちゃダメ!」


 ヘルガは慌てておばちゃんの手を止めた。


「リクには着た状態で見てほしいから内緒だよ」


 ヘルガは布袋を大事に担ぎ上げた。


「リク、風呂入っておいでよ。

 今からファッションショーだよ!」


 ヘルガは楽しそうにオレをお風呂場に連れて行く。


「着替えるの見ちゃダメか?」


 オレはヘルガに聞く。


「えっと……着替えを見るのは、ファッションショーの後、リクの部屋に行くまで待てない?」

「……待つ」


 オレは風呂場を目指して歩いていた。

 朝から忙しかったから、結構汗もかいてるしゆっくり入ろうかな。

 それに……ヘルガの眼が本気だったからな。

 ちゃんときれいにしておこう。


 脱衣所で脱いだ貴族服もなんだかなじんできた気がする。

 レレムが作ってくれた服は体にピッタリくるんだけど目立ちすぎるし。

 あ、そういえばおばちゃんはオレの服も作ってくれたんだろうか。

 少し楽しみだな。


 ガラリと戸を開け、石造りの風呂場へ。

 誰もいないから、ゆっくりできそうだな。

 丁寧に体を洗い、湯で洗い流した後、湯船に肩までつかった。


「ふう、やはりいいもんだなあ。

 足を伸ばせる風呂って言うのは」


 今日はハンスと戦ったり、ザイフリートを懲らしめたり大活躍だったからな。

 

 バチャバチャ


 誰もいないと泳ぎたくなって足をばちゃばちゃするくらい大人だってみんなやってるんじゃないか。


「ふふふ、リク様こどもみたい」


 あれ、いつの間に入ってきてたんだろう。

 コリンナがタオル一枚で風呂場にいた。


「あれ、コリンナ今混浴だったっけ?」

「いえ、男湯って書いていましたけど貸し切りって板をぶらさげておきました」


 まあ、この時間は町民は来ないみたいだからいいけどさ。


「お背中お流ししましょうか?」


 コリンナがタオルで体を隠しながら湯船の端にいるオレの隣に来た。


「フハハハ、かけ湯をしてやろう」


 オレはコリンナの頭からバシャンとお湯をかけた。


「あ、ちょっとリク様ったら」


 コリンナの身体がビシャビシャになってコリンナの豊かな胸元にピッタリタオルが張り付いている。


「もう全身ずぶぬれになってしまいました……これだと私もリク様と一緒にはいるしかありませんね!」


 コリンナはぽいっとタオルを放り投げて湯船にいそいそと入ってきた。


 ちゃぽん。


「あの、コリンナタオルってつけて入らないの?」

「あれ、リク様知らなかったですか?

 湯船にはタオルつけたまま入っちゃダメなんですよ」

「知ってるけど……」


 コリンナの身体は湯舟に浸かってはいるけど、別にお湯に色がついているわけじゃない。

 それにコリンナの胸はぷかぷかと浮いているしな。


「それにリク様は背中を流したいならタオルを置けと言ってましたよ?」


 コリンナが前オレにハニトラしてきたときのことを話し出した。


「アレはしかたなくだな。

 やましい気持ちなんてなかったぞ」

「じゃあ、ジャンプしろって言ったのもそうなんですか」

「アレはだいぶやましい気持ちがあったな。

 コリンナがいい体をしていたものだからつい口走ってしまった」

「正直なリク様も好きですよ」


 湯船につかりながらコリンナは器用にオレの側まで移動してきた。


「私、この湯船につかるのは初めてです」

「え、そうなの?

 町長の家にいたのに?」

「私、奴隷でしたからね」


 なんでもない風に言うコリンナの肩を抱いた。


「リク様、奴隷でも私割と幸せな方だって思っていたんです」


 コリンナはオレのもう一方の手を取って話し続ける。

 うーん、コリンナの手が近くにあるとついつい肉球をプニプニしてしまう。


「もう……リク様ったら私今から真面目な話するんですよ」


 コリンナは口を尖らせた。


「コリンナ、そんなこと言いながら尻尾がぶるぶると動いて喜んでるぞ」


 コリンナが尻尾を動かすものだから湯がバシャバシャと跳ね回ってオレの顔にも湯があたった。


「だって、リク様に手を触られると嬉しいですから」

「じゃあ、触ったままでいる」


 オレはコリンナの肉球を触り続けた。


「もう……じゃあこのまま話し続けますからね」


 コリンナは尻尾を動かしながらも真剣な顔をしながら話し続けた。


「湯船に入ったことはなくても、きちんとした食事と温かい布団は用意されました。

 町長はヒドイ命令はしませんでしたし」

「オレにはハニトラしろって言ったのにか?」


 オレはコリンナにハニトラしろって言った町長のこと許してないからな。


「あの時だけですよ。

 リク様、私だれにでもハニトラするような子じゃありませんよ。

 キスだってリク様がはじめてですから」


 コリンナがぎゅっとオレの手を握ってきた。

 いつになく真剣な顔をしているが、ハニトラしてるときの反応を見れば男を知らないだろうってのはわかったけど……


「わかってる。

 でもコリンナには婚約者もいたんだし、キスも初めてだとは思わなかったな」

「小さな村でしたからね。

 年の近い男の子はその人くらいで

 親同士、大人になったら結婚させようって話してたみたいです」


 コリンナは淡々と話し続けた。


「後数年働いて、借金を返したら村に戻ってその人と一緒になるんだろうなって思っていました。

 寡黙ですが、働き者な人です。

 その人と一緒ならきっとそれなりに幸せに生きていけると思います。

 でも、私はリク様に助けてもらいました」


 コリンナはオレの手を取って自分の背中を触らせた。

 傷一つない背中にはコリンナの長くてツヤのいい銀色の髪が張り付いている。


「リク様が私を自由にしてくれました。

 どこに行ってもいい、誰を好きになってもいいと」

「ああ、その通りだ。

 湯船に入ったっていいんだ」

「ふふふ、じゃあ湯船を満喫しますね」


 コリンナは足をバシャバシャさせた。


「私、ミア様が戻ってきて挨拶したら村へ帰ろうと思います」


 コリンナはオレの方は見ず、そう告げた。


「……そうか」


 コリンナは元々婚約者がいる。

 ヘルガの時とは違い、話を聞く限りコリンナを幸せにしてくれるような気がする。


「今日の夜はヘルガ様のところに行くんですね」


 オレに話しかけるコリンナはオレの方を見ずそう告げた。


「ああ」


 オレはコリンナの顔を見て返事をした。


「ねえ、リク様。

 私を抱いてもいいですよ」


 コリンナは急にオレを振り返りじっとオレを見つめていた。


「オレは……」

「わかっています。

 抱いてもいいだと抱いてやらないですよね。

 リク様は婚約者のいる私のことを思ってくれていたのでしょう」


 コリンナはそう言うと湯船から出て歩き出し、オレの方を振り返った。

 何もつけていないコリンナの裸身がオレの眼に飛び込んでくる。

 濡れた銀色の髪と、長いまつ毛で飾られた金色の瞳。

 豊かな胸とくびれたウエスト。

 手はモフモフで可愛い肉球がついている。

 すました顔の時も多いけど、オレと居るときは良く笑ってくれる。

 笑顔の素敵な女の子だ。


「リク様、私は自由になりました。

 どこに行ってもいい。

 誰を好きになってもいい。

 私は、初めてヒトを好きになりました。

 ありがとう、リク様。

 さよなら」


 コリンナは風呂場を出て脱衣場へ向かった。

 オレにコリンナを引き留める権利なんてない。

 婚約者はコリンナを幸せにしてくれるかもしれない。


 でも……


 オレは風呂場をでて脱衣場へ向かった。

 コリンナはすでに下着を来ており、その上からメイド服を着ようとしているところだった。


「コリンナ」

「……リク様」


 コリンナは服を着る動作を止めない。オレはコリンナがメイド服を着るのを見続けていた。


「あの、私着替えるのを見られるの恥ずかしいんですが……」


 それでもコリンナは動作を止めず、メイド服を着終わった。

 オレはそのコリンナを後ろから抱きしめた


「リク様……」

「コリンナの婚約者はいいやつなのか?」

「そうですね、寡黙ですが働き者で村のみなからその人の悪口を聞いたことがありません。

 信頼できる人だと思います」

「そうか」


 オレはそのままずっとコリンナを抱きしめていた。


「……リク様。

 私、もう行きますね」

「嫌だ」


 オレはコリンナの身体をこちらへ向けさせ、コリンナの唇を強引に奪った。


「……ん……」


 されるがままのコリンナをきつく抱きしめオレはコリンナの唇を貪った。


「コリンナ」


 オレは抱きしめたままコリンナに想いをぶつけた。


「コリンナは村へ帰っても婚約者と幸せになれるんじゃないかって思う。

 可愛いし、オレに向けてくれる笑顔もすごく素敵だと思う。

 きっといろんな人がお前のこと好きになると思う。

 でも、離したくないんだ。

 オレと一緒にいてくれよ。

 朝、コリンナが起こしてくれないとオレは嫌だ。

 それに、コリンナの肉球はプニプニして可愛いし、ずっと触っていたいんだ。

 さっきの風呂だってコリンナの裸にずっとドキドキしてたんだ。

 オレ、コリンナが欲しい。

 ずっと一緒にいてくれよ!」


 コリンナは瞳に涙を貯めたままオレをぎゅっと抱きしめ返した。


「リク様、やっと求めてくれましたね。

 試すようなことをして申し訳ありませんでした。

 リク様のヘルガ様をみつめる瞳がうらやましくて……」


 コリンナはオレから離れ、オレに頭を下げた。


「私、リク様とこれからもずっと一緒にいます。

 私は自由ですから好きな人の側にいたいです」

「……ありがとう。コリンナ」


 コリンナは瞳の涙を払ってオレに笑顔を見せてくれた。


「リク様、私にキスしてもいいですよ」


 コリンナは目を閉じた。

 オレは婚約者のいるコリンナに少し遠慮していたところがある。

 だから、オレと一緒にいたいっていうコリンナにオレも素直な気持ちをぶつけようと思う。


「キスだけじゃいやだな」


 オレはコリンナと唇を合わせぎゅっと抱きしめる。


「……ん……」


 コリンナは瞳から涙を流し、オレの唇を受け入れていた。

 オレにキスをされたままコリンナは安心したような顔をしていた。

 ……コリンナは不安だったのかな。

 いつもオレについてきて体をピッタリくっつけてくるコリンナに対してオレは少し腰が引けていたような気がする。

 婚約者がいるからって。

 

「コリンナ、可愛いぞ」


 オレは思っていることをしっかり伝えて行こうと思った。

 まだ濡れているコリンナの髪をゆっくりと撫でて行く。


「ありがとうございます。

 ……初めはリク様と一緒にいれるだけで嬉しかったんです。

 でも最近どんどん欲張りになってきて……私はきっとリク様にお前が欲しいと言ってほしかったんです」


 コリンナは体を押し付けてきた。

 

「コリンナ……」


 オレはもう遠慮なんてしないことにした。

 コリンナを床に優しく押し倒し首筋にキスをしながらコリンナの耳を触った。


「ン……ふみゃあ」


 コリンナは顔を真っ赤にして身をよじらせると尻尾をふるふると震わせていた。

 オレの身体に喜んではねまわるコリンナの尻尾が当たっていた。


「リク様……」


 息を荒くして肌をほんのりと赤くしたコリンナを見て思わず唇を奪った。


「……あ……」


 しばらく夢中で口づけをしていた。


「これ以上はもう、我慢できませんから」


 コリンナがオレのほほに両手を当てコリンナの唇を求め続けるオレを離した。


「今日はヘルガ様のところへ行ってくださいませ。

 私を可愛がってやってといってくれたヘルガ様に対して抜け駆けはできませんから」


 コリンナは少し寂しそうに笑っていた。

 オレはコリンナが愛しくてもう一度抱きしめるとコリンナと唇を合わせた。

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