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48 闘争開始

 オレは町長に無実の罪で締めあげられていた。

 

「争いの続きは法廷でやっていただけますか」


 アルベルトはクククと笑いながら、表を指し示した。


「じゃあ、仕方ないな。

 町長、法廷で戦うとするか」


 狭いけど、オレは法廷などの屋内の戦いのイロハも学んでいるぞ。

 魔王城は屋内だからな。

 オレは町長の手を払った。


「アンタ、本当に物理攻撃で法廷で戦う気でしょうが!」


 え?

 法廷で物理攻撃以外にどうやって戦うっていうんだ?


「フン、オレは殴る以外の戦い方なんて知らないな」

「リク様を法廷に連れて行くのはやめた方がよさそうですね」


 町長はため息をついていた。

 どれだけため息つけばすむんだ、町長の奴。


「さて、リク・ハヤマ様。

 私の後についてきてください。

 ククク、みんな仲良く法廷で思うさま自分達を弁護してくださいよ」


 アルベルトは揉み手をやめ、玄関を顎で示した。

 逮捕するオレにはもう機嫌を取る必要もないってことか


「自分達?」


 町長とオレは顔を見合わせた。

 しまった。

 商会が持ってる情報網は甘くはないだろう。

 この町ベケットの大通りを二人で腕を組んで歩いたんだ、すでにオレとヘルガが懇意であるとの情報くらい手に入れているはずだ。


 それに侯爵令嬢であるミアと一緒にプロジアと戦ったことだって、ザイフリートの依頼中の出来事だ。

 どんな出来事があったかを依頼主であるザイフリートは依頼失敗の報告を受け取っているはずなんだ。


 侯爵家やギルドと表立って事を構えることはザイフリートだってしたくないはず。

 町長の居候になっていてミアとヘルガと婚約しているオレに逮捕状がでるくらいだ。

 キットとトビーが見逃されるはずがない。

 

「町長、キットとトビーはどこに行った」


 オレはつとめて冷静に町長に聞いた。


「孤児院のみなを送った後、庭で遊んでいたと思いますが……」


 オレたちは急いで窓の側へ行き、庭の様子を確認するが誰一人庭にはいなかった。


「……キットとトビーをどうした?」

「さあ、お庭で遊んでいるのを見ましたけど、あとのことは知りませんねえ。

 くまなく探してみてはいかがですか?

 そうそう、ウチの護衛がこれを拾ったみたいなのでお返しします」


 護衛は歪な笑顔を浮かべながら町長にスリングを渡した。


 トビーが持っていたスリングだろう。

 オレは見せてもらったことがあるが昔から使い込んでいるようで、柄の部分には無数の傷があった。

 同じ傷がある市販品などあるわけがないんだ。

 

……てめえら、許さねえぞ。


「では、大人しくついて来てくれます?

 ああ、変な気を起こさないでくださいね。

 私にもしものことがあれば、あの二人も無事じゃいられませんよ」


 アルベルトは踵を返し、玄関を出て行こうとしていた。

 ……奴隷商人のやり口は知っている。犯罪奴隷は通常の奴隷以下の扱いをされる。

 オレが大人しくしていたってキットとトビーを許すわけなんてないんだ。


「リク様、ここはおとなしくしていましょう。

 ミア様に知らせて、なんとかしてもらいましょうよ」


 ミアがここに着くまでにキットとトビーは犯罪奴隷に落とされてしまう。

 そんなもの待てるわけない。


 アイツ等全員の口を封じる。

 答えはそれ以外に残されていなかった。


【エネルギー覇!】


「「ぎゃああああああ!」」


 オレの右手から金色のエネルギーをアルベルトと護衛にぶつけた。

 良し、奇襲成功。

 全員吹っ飛ばされ、地面にのびていた。

 はは、武闘家は丸腰だろうが関係ないんだぞ。


「よし、トビーとキットを助けに……」


 あら、目が回る。

 そうか、さっき隷属紋の解呪に魔力を使ってしまっていた。


「町長、とりあえず、奴ら縛ってくれ……」


 オレはそう言い残し、その場に倒れた。


 ☆★


 ちゅぱ……


 ヘルガが馬乗りになってオレの唇を熱心に求めていた。

 「リク、リク」とオレの名を呼び、必死になって唇を合わせてくる。

 うーん、そんなに必死に求めてられると男冥利に尽きるってもんだけど、キスするのにそんなに真面目な顔しなくてもいいと思うけど……夢なんだし

 

 オレと体を密着させているヘルガの身体の柔らかさがオレの肌にも伝わってきていた。


 ああ、クソ。

 むにゅむにゅと妙に感触がリアルな夢だな。

 ハンスのせいで、中途半端なところでヘルガとのイチャイチャが終わったからこんな夢を見るんだな。

 北国の冬じゃあるまいし、真っ白な空間などベケットにありはしないから。


 まあ、いいや。

 夢なのはわかるけど、せっかくいい夢なのでもう少し見ておくとするか。

 

 ポタリ。


 何かほほに冷たいものが当たった。

 夢の中のヘルガをよく見ると泣いている。

 夢の中でもヘルガを泣かせちゃいけない。

 さっさと起きよう。


 気合を入れ直してみても泣き顔のヘルガが消えることはなかった。


「おい、オレ。

 目を覚ませよ、ヘルガ泣かせてる場合じゃないだろ」

「夢じゃないよ。

 良かった、リク。目を覚ませてくれた」


 寄り添うようにオレの身体に乗っかっていたヘルガはオレと目が合うと笑ってくれた。。

 良かった。泣き止んでくれた。

 涙を拭っていたけど。


「何だ。また倒れたのか、オレ」

「心配させないでね」


 よくエネルギーを失ってぶっ倒れてるよな。オレ。

 レベル1なのにレベル255の感覚で技を使っちゃってるからなあ。

 そして、ヘルガはけしていやらしい気持ちではなく、キスをしてオレにエネルギーを分け与えてくれていたのだろう。


 ただ、ヘルガの瞳は赤く光っており、興奮していることはわかる。


【ヘルガの魔族化を解け】

 

 オレがサキュバスと化したヘルガを元に戻すと、ヘルガは瞳の代わりに顔を真っ赤にしてオレから飛びのいた。


「リク。

 身体は大丈夫?」

「ありがとう、ヘルガがエネルギーを渡してくれたんだろう」

「うん」


 オレはがばっと飛び起きて体の筋を伸ばした。

 うん、調子は悪くないな。

 

 オレが倒したアルベルト達の様子が気になって目線をやると、ヘルガと町長の手によってしっかり所持品を調べ上げて、ロープでぐるぐる巻きにされていた。


 これでオレたちが到着するまで、ザイフリート商館にオレたちの動きが分かることはないだろう。


「ヘルガ様、リク様が無茶苦茶しないよう目を見張っていてくださいね」

「うん、でも孤児院の子たちにヒドイことしてたら、私止まらないと思うよ」


 町長がヘルガにオレのお目付け役を頼んでいたが、ヘルガの瞳は怒りで赤く燃え上がっているように見えた。

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