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34 ヘルガのお仕置き

「誰だ! 昇格試験中だぞ」


 ギルドメンバーは乱入者に短槍を突き付けたが、あっという間に後ろを取られ関節を極められた。


「グアアアアア」


 乱入者はギルドメンバーに関節技を決めたまま、稽古場中央のオレ達へ近づいてきた。


「誰だ!」

「私が誰かわからないものが、この場所にいるとはな」

「あ、あなたは……」


 乱入者はギルドメンバーを突飛ばした。

 乱入者は引き締まった体に赤い戦装束を着こなし、長い黒髪を左右に揺らしながらこちらへ歩いてくる。

 整った顔はキツイ印象を与えるが、本当は優しい女の子なんだ。

 オレは知っているぞ。

 なんたって、オレのヨメだからな。


「「ヘルガ様!」」


 その場にいた全員が平伏した。


「みな、遊びはおしまいだ。幹部は残れ。

 おっと、下手に逃げようと思うなよ。

 この場にいる幹部の顔は、全員覚えた。正座して待て。

 他の冒険者は、とっとと出ていけ。……いいな」


 感情を抑えたヘルガの声色から、怒気を感じるくらいの危機感は皆持っているらしい。

 すごすごと出て行った。

 ヘルガが初めて会った時のように剣士モードになっている。

 うんうん。こっちのヘルガも悪くはないんだけど。

 オレが怒られるのでなければ、というカッコ書きはつくけど。


 倒れていたマリー以下ヴァルキュリアの面々も飛び起きて正座をし、ヘルガの顔色を伺っていた。


「整列」


 ヘルガの掛け声で全員正座から飛び上がり、2列横隊が少しの乱れもなく組みあがる。

 と、オレの目からは見えたんだけど、一人遅れたみたいだ。


「遅いな」


 ヘルガは瞬時に遅れたヴァルキュリアの後ろに回り、関節技を決める。


「グゥゥゥゥ、申し訳ありません」


 腕を変な方向に曲げられているヴァルキュリアは苦しそうに呻いているが、表情はニコニコしている。

 ん? こいつだけじゃなく、眉の吊り上がったヘルガの様子をみな妙に嬉しそうに見ている気がするが……

 マリーなんて目がトロンとしているぞ。


「整列の練度もこの程度か。

 貴様ら、魔族にすぐに殺されたいか」


 先の整列の遅れたヴァルキュリアから手を放してヘルガが言葉を続けた。


「この子の教育係メンターは誰だ、マリー」

「はい、私です!」

「ほう」


 ヘルガが、コツコツと足音を鳴らしながら、マリーの隣へ。


「特別昇格試験はギルドマスターの専権ではなかったか?

 今回のリクの昇格試験、責任者は誰だ」

「はい、私です!」

「そうか」


 ヘルガはくるっと回ってオレの方を向いた。

 オレに対してはうるうるした瞳でとびきりの笑顔をくれる。


「リク。

 あ、今気づいたけど、椅子がないよね」


 ああ、椅子でも取ってこようか。

 と、オレが動こうとしたら、ヘルガから手を握って止められた。

 オレに対しては、普通の少女のようにふるまうヘルガ。


「旦那様なんだからリクは動かなくていいよ」


 ヘルガは天使のような笑顔をオレに向けてくれる。


「イスはここにあるんだから。

 そうだろう、マリー!」

「は!」


 マリーは、前に進み出て当然のようにブリッジしている。


「座って、リク」

「へ?」

「使い心地は悪いかもしれないけど、どうぞ」


 有無を言わさぬ、ヘルガの圧力に促されるまま座る。

 マリーのぽよんとした柔らかい感触が伝わってくる。


「ク……」


 ……そりゃきついよね。


「マリー。

 新人シスターの教育も出来ていないお前が、私を差し置いて特別昇格試験の責任者を名乗るとはな。

 ギルドマスターの権限を濫用した罪、軽くはないぞ。

 ヴァルキュリアまで勝手に動かして…」

「す、すみません。ヘルガ様!」


 ヴァルキュリアの面々も、前に出てきてヘルガに土下座をした。


「私たちは、私たちの判断でやったこと!

 マリー様のご指示ではありません。

 どうか、ご容赦を! お怒りをお収めください!」


 ヴァルキュリア達は、頭を地面に擦り付けすぎて摩擦熱でも出そうだ。


「私にはいい。

 リクに謝りなさい。

 私の旦那様なのだから」


 驚いた顔をしているが、少し間ののち理解したのか。


「すみません、リク様! 申し訳ありませんでした!」


 ヴァルキュリア達の一糸乱れぬ謝罪を受けた。


「すみません、ヘルガ様。

 それでもどうしても私は賛成できないのです。

 一度慰み者にされたからと言ってこんな魔族に輿入れする必要はないと思います!

 ご事情を説明して、子爵家のご子息様にお許しいただきましょう!」


 よくブリッジしてオレを乗せながら朗々としゃべれるもんだ。


「……イスが許しもなく喋るな!」


 ブリッジをしているマリーの乳房を激しく握りしめるヘルガ。

 

「ヒグゥ! ク、フゥ……申し訳ありませんでした」

「なんなんだお前ら、楽しそうだな」


 マリーは苦悶に顔を歪めているが、口角は上がっているし、よだれも垂らしている。

 ……変態だな。

 しかし、マリーはオレを魔族だとかたくなに信じているようだな。


「みなは、もういい。

 ……マリーは私の部屋に来い」


 ヘルガは冷徹に言い放つ。


「あ、リクも来てね」


 ヘルガはオレの腕の裾を握って上目遣いで見つめてくる。


「ヘルガ様、リク様にご迷惑をおかけしたわたくしたちへの罰をお与えください!

どうか、自分を罰せねば気が済みません!」


 そんなに反省するんだったら最初から徒党を組んで殺しに来るんじゃないってば。

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