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33 世界1位のキス

 少年とかスンゲエ好きなギルド受付嬢、フリーダ・ベッカー。

 彼女の正拳突きをノーガードで腹に食らったプロジアは口から泡を吹きながら全身をピクピクさせていた。

 拳を突き上げたフリーダに会場中が拍手喝采あめあられ。


「後はあなただけですよ、リク・ハヤマ」


 マリーが会話のたびにかき上げるので銀髪にき込めた香が広がる。


「せっかくのツヤのいい銀髪なのに意地悪そうな笑顔で台無しだぞ」

「あなたに褒められたくなどありませんから」


 マリーは眉を吊り上げて残りのヴァルキュリアに命令を下した。


「みなさん、相手はヘルガ様に認められた男です。

 けして油断せず息の根をとめるのですよ……

 今です!」


 マリーの合図でヴァルキュリアが一斉に襲い掛かってきた。

 オレぐらいになると構えを見ただけで冒険者ランクがわかる。

 マリーがAランク、他がBランクだ。


 だが、斧使い、槍使いはイイものを持っている。

 残りのみなもまだまだ伸びしろがありそうだな。


「フフ、やはりいい体をした女戦士を見ると心が躍るな。

 全員オレが組み敷いて手取り足取り腰の使い方や、手指、顎の使い方を教えてやりたくなったぞ」


 オレの言葉にヴァルキュリアはみな顔を真っ赤にしている。


「「破廉恥です!」」

「そうやって、ヘルガ様を弄んできたのですね……リク・ハヤマぁあああああ!」


 マリーが真剣な顔で瞳に涙を貯めたまま、唇を強く噛み締めている。


「覚悟おおおお!」


 マリーの双剣と同時に全員が襲い掛かってきた。

 フン、これくらいレベルマックスのオレだったら見てからだってかわして……


 ブスブスブスブス


 オレは仁王立ちで余裕を見せる。

 フ、レベルが低いのを忘れて全部食らってしまったってオレは強いから平気だぞ。


 ブシャアアアアアアア


 オレの体に空いた10か所以上の穴から血が噴き出ている。


「いやあああ、リク様、リク様ああああ!」


 ああ、コリンナがいつの間にか来ていてオレを介抱しようと走ってきたが、ギルドメンバーに止められていた。


「心配するな、コリンナ。

 いつだって、最後にはオレが勝つ。

 フハハハハ……ゲホバアアア」


 オレは、膝から崩れ口から血を吐きだした。



「リ、リク様ああああ」


 コリンナは心配してくれているけど、くそ、内臓までズタズタだぞ……


 フリーダが笑いながら近寄ってきた。


「大人の男なんて死ねばいいのよ」


 フリーダが、オレの髪をつかみ体を引き上げた。

 オレは力が入らずにフリーダにしなだれかかる。


「フン、男なんて口ではいいこと言いながら結局肝心なところで逃げるのよ」

 

 フリーダはオレの頬に手を添えた。


「男なんて、男なんて……」

「フン、なぜ大人の男を嫌う?

 お前はいい男を知らなかったんだろうな」

「減らず口を叩くわね、立ち上がる力もないアンタに一体何ができるっていうのよ」

「そうだな、キスくらいか。

 ただし、世界一位のだ!」


 オレは最後の力を振り絞って強引にフリーダの唇を奪った。


「な、な……?」


【エナジードレイン】


 オレはフリーダに腰がとろけるような世界一位のキスとともにエナジードレインを食らわせた。


「あ、あ……イヤアアアアアアアア!」


 オレの熱情のこもった唇の応酬にフリーダの尻尾とウサ耳は歓喜に震えていた。

 フリーダのエナジーが唇を通じてドクンドクンとオレになだれ込んでくる。


「アレは、私をトリコにした世界一位のキスです!

 ああ……もう一度、すべて奪われるようなキスを私にもしてほしいです、リク様」


 コリンナはなぜか胸を張っているが、次第にオレとのキスを思い出してきたのか、へたりこんでキツネ耳を真っ赤にして尻尾を振り回していた。

 コリンナの白い素肌はじっとりと汗をかいているようだ。


 フフフ、コリンナめ。

 可愛い奴だ。

 今日の夜は、尻尾を撫でまわして肉球をプニプニしてやろう。


【オレの体を治療しろ】


 オレは鬼道を使い、全身を治療する。

 瞬時に血は止まりオレの体に空いた穴は塞がった。


「もう、ダメぇ……

 立ってらんない。

 これが、大人のキスなのね……こんなに素敵なものを知らずに嫌っていたのね」


 オレはとろけそうな顔をしたフリーダの尻尾をぎゅむっと握った。


「ふみゃああああああああああ!」


 嬌声をあげ、気を失ったフリーダはオレにもたれかかった。


「な、なぜ傷がないのです?

 幻術を使ったのですね、やはり卑怯な魔族ですね、正々堂々勝負する気もないのですか?」


 マリーは動揺している。その隙に、オレはゆっくりとフリーダを寝かせた。


「フフ、ヘルガ様を倒したあなたを我々が倒すなんて所詮無理だったのかもしれませんね……」


 マリーは、袖で涙を拭った。


「「マリー様」」


 ヴァルキュリア達はマリーに近寄ってきた。


「それでも、私はあなたに挑まなければならないのです。

 私にとってヘルガ様は、この世界を照らす光なのですから」


 マリーは、ぐっと双剣を握りこむとオレに駆け寄ってきた。


「「覚悟!」」


 続いてヴァルキュリアも向かってくる。

 勝てなくてもなお向かってくるというのか。

 オレはその心意気嫌いじゃないぞ、マリー。


「【エナジードレイン】」

「「ギャアアアアアアア」」


 ヴァルキュリア達はオレから力を奪われその場に倒れた。


「な、なにをしたの?」

「お前を可愛がってやるため、力を借りたんだ。

 悪く思うなよ」

「何を言ってる、魔族め……私がヘルガ様を救うんだ!」


 マリーは立っている味方が誰もいなくなっても必死になって突撃してくる。

 フウ、弱くなったオレだが、ヴァルキュリア達から奪った力を使って今のオレができる最大限を見せてやろう。


 左手で突き出してきた剣をかわし、右手が振り下ろされる前に手首をつかみ、引きずり倒す。


「くっ……」


 それでもマリーは剣を地面に突き刺し起き上がろうとする。


「参ったと言え」

「……嫌だ」


 マリーはそれでもまだ双剣を手放さない。


「……ヘルガ様を、返せええええ!」


 マリーは大粒の涙を流しながら、オレに斬りかかってくる。

 そんなに泣いたら前なんて見えないだろ。

 仕方ない、苦しくないよう意識を奪うか。


「行くぞ」


 オレは、拳を深く握りこんだ。

 

 ドタアアアアアン。


 突如、鍵のかけられていた稽古場の扉が蹴倒され、乱入してくるものがいた。



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