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25 余った小銭

 さて、エナジードレインして元気いっぱいなので速攻でぶっ飛ばしてやろう。


「フハハハハ、かかってこいプロジア」

「てめえ、さっき死にかけてたのによお。

 はああああ!」


 プロジアが槍を持って跳躍し、上空から突きを放ってきた。

 残念ながらオレのレベルは低いままなので、正面切って戦うとまず負けるだろうな。

 完全に【鬼道☆】だのみだ。


【プロジアを地面に叩きつけろ】


「ぐ、ぐわあああああ」


 オレが言うとすぐにプロジアは真っ逆さまに地面に叩きつけられた。


「プ、プロジアさん!」


 冒険者二人が駆けつけてきた。

 他の冒険者たちは面倒だから一斉にぶっ倒そう。


【エネルギー覇!】


 オレの右手から金色に輝くエネルギーが放たれ、冒険者たちを薙ぎ払った。


「ぐわあああああああああ!」


 冒険者たちはエネルギー覇を食らって倒れた。


「で、でたらめだ……お前魔法使いか?」

「フハハハハ、伝説の武闘家だ」


 プロジアの問いに答えた。


「さて、そろそろ負けを認めたらどうだ?」


 オレは地面に這いつくばるプロジアに尋ねた。


「オレ達は、お前みたいな貴族とは違う、負けたら食べるもんがないんだ。

 依頼失敗で帰ったら莫大な賠償を払わせられる……それくらいならここで死んだ方がましだ」

「そうか、金の話か」


 オレは、冒険者たち全員に聞こえるような声で話しかけた。


「依頼失敗は、だいたい生き残った全員で分担する。

 オレがお前たちだったら、プロジアを見捨てて逃げ出すけどなあ。

 それとも、お前たちオレに勝てるとでも思ってるのか……フハハハハ。

 もし、オレと戦いたい奴は手を上げろ。

 今度はきっちり殺してやるぞ?」


 オレは、冒険者達を威嚇するように右手にエネルギーを集める。

 

「う、うわああああああ!」


 冒険者たちは逃げ出した。

 倒れたプロジアを支える二人を除いて。


「まだ戦える? キット」

「トビー、オレならまだ戦えるよ」


 二人の冒険者はいまだ少年といったところ。

 黒髪単発のキットの腕には大きな切り傷。

 金髪を結び、前髪を伸ばした糸目の少年がトビー。

 二人とも、まだ手足も伸びきっていない年だろう。


 キットと呼ばれた少年は、片手で剣を持ち、トビーと呼ばれた少年はスリング(パチンコ)を手にオレを見つめた。


「プロジアを見捨てずに戦うか、勇敢なことだ。

 だが、死にたいのか。

 先ほどは手加減してやった……次はないぞ」


 オレが冷徹に言い放つと、少年たちは身体を震わせた。

 それでも、二人は目線を交わし頷きあうとオレの方へ武器を向けた。


「フハハハ、いい根性だな」

「プロジアさんには恩があるんだ」

「だから、ボク達は戦うよ」


 少年たちはオレとの間合いを詰めた。


「やめろ、トビー、キット!

 降参だ」


 プロジアは地面に頭を付けた。


「オレ達の負けだ。

 獣人達は諦める。

 アンタは強かった。謝るよ。

 オレを殺しても構わないから、二人には手をださないでくれ」

「プロジアさん」


 二人は、プロジアの元へ駆け寄った。


「アンタ、名前を教えてくれないか」

「……リク・ハヤマ」

「リクさん、オレは姿をくらませるから。

 こいつら引き取ってくれないか」


 プロジアは、頭を下げた。


「こいつら、筋がいいんだ。

 アンタが預かってくれるなら、冒険者としてすぐに飯が食えるようになると思う。

 2、3年……飯だけでも食わせてくれたら、あとは二人でどうとでも生きていけると思うから」

「プロジアさん……オレ、一緒に借金返すよ」

「ボクも頑張るから」


 キットとトビーはプロジアをうるんだ瞳で見つめた。


「ミア」

「何ですか、リク様」


 ミアがとことことこちらへ来た。


「小銭が余ってるんだけどさ、これで借金って返せるかな」


 オレはミアに金貨を渡す。


「リク様……金貨を小銭って言う人私、初めて見ましたよ」


 ミアはプロジアに近づくと話しかけた。


「プロジア、奴隷狩りの報酬と、失敗の罰金いくらなのか教えなさい」

「報酬が、10万チロルで、罰金が100万チロルだな」


 ミアが眉を吊り上げた。


「商会の名前は?

 あなたに奴隷狩りを依頼した」

「ザイフリート商会だが、知っているのか」


 ミアは腕を組んで考え込んでいた。


「ザイフリートね……叩けばホコリが出るとは思っていたけど。

 ヒドイことをするものね。

 罰金は報酬の2倍までしか認められてない」

「そんな法律ザイフリートが守るわけないんだ。

 知ったうえで無茶を通す」


 プロジアは地面を叩きつけた。


「リク様、100万チロルほどありますから、20万程使ってもいいですか?」

「ん? いいぞ。

 お金の計算できないしな。

 オレ5+5までしか計算できないから、金勘定できないし」


 ミアが喜んでいる。


「お財布を任されると奥様してるッ! て感じがしますね」

「任せたぞ」


 オレはミアの頭を撫でた。


「……はい、リク様」


 ミアは懐から紙を取り出して書状をしたためた。

 

「受け取りなさい、プロジア」

「……これは?」


 ミアがオレに小銭を渡してきた。


「ちょうど、20万チロルあります。

 リク様があの者にお渡しください」

「ふーん」


 オレはプロジアに渡す。


「はい、あげる」

「こ、これは20万チロル!」


 プロジアは驚いている。

 

「しかし、これでは100万チロルには足りない……」

「そのために、私が書状を書いたのよ」


 ミアがプロジアに話しかけた。


「その書状には、依頼失敗の罰金は2倍まででしたよね、と確認する手紙を入れているわ」


 プロジアは、書状を開いた。


「差出人……侯爵令嬢ミア・グラフ……」


 プロジアは目を見開き、ミアを見た。


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