24 何度でも立ち上がる
オレの挑発にプロジアは眉をピクリと動かした。
「何だと?」
「お前の構えた槍を見るだけで、多少腕が立つことはわかる。
その磨いた腕で、少女を奴隷にした金で……食う飯はうまいかって聞いてるんだッ!」
オレの言葉にプロジアの瞳が怒りに燃えた。
「いい服を着て、いい飯を食えてるあんたみたいな貴族にはわからねえだろうよ……
オレは、オレの仲間を守るだけで精いっぱいなんだッ!
弱い奴は死ぬんだ、オレが弱いから、リエルを守れなかったんだッ!」
「リエルって誰だ?」
怒りに燃えたプロジアの叫びに、オレは興味を持った。
「アンタみたいな貴族達には何の価値もない平民の……オレの妹だ。
村が戦争に巻き込まれて畑を焼かれて、食べ物がなくて、リエルは死んだ。
オレが弱えからだ、オレが弱えから、リエルは死んだ。
弱えと、奪われる。
だから、オレが奪うんだッ!」
「負け犬が」
オレは、プロジアを挑発した。
「強くなったなら……だれかを守るためにその武を振るえ、このバカ野郎が!」
オレはプロジアの怒りを受け止めるべく拳を握り構えた。
「お前に何がわかるんだああああ!」
プロジアは槍を持って突撃してきた。
プロジア、妹であるリエルを失ったお前が傷ついていることはわかった。
でも、お前の振るう槍が少女を傷つけることをリエルは望んでないんじゃないか?
プロジアを諭す言葉を投げかけてあげたいと考えている間にプロジアの槍はオレの目の前に来ていた。
おっと、危ない。
だが、しかし。
レベル255のオレだったらこれぐらい見てからかわせる。
【三段付き】!
ほほう、踏み込みを重視した目にもとまらぬ三段攻撃。
ふふふ、プロジア見事な技だな。
ブスッ、ブスッ、ブスッ。
プシャー。
脳天、胸、丹田。
うーん、見事な3段付きだな。
オレじゃないとかわせなかったな。
「いやあ、リク様!
頭が、胸が、腹が」
「ん? ミアいつの間に来てたんだ?
頭が、胸が、腹がどうしたんだ?」
なんて言ってると、頭がくらくらしてきた。
オレの目の前には3本の赤いシャワー。
ブシャ、ブシャ、ブアシャーーーーーー。
脳天と、胸と、腹から血が噴き出している。
おっと、かわせてないな。
そういえばオレレベル1だったな。
体が思うように動かないんだよな。
「ミア、とりあえずこいつら倒すから後で回復してくれ。
あ、くらくらする倒れる……」
ドタッとオレは倒れた。
「うわわ、リク様、リク様ッ!
あわわわわ」
ミアはオレの元に飛び込んできて、オレを抱きかかえると止血魔法をかけた。
【聖蛇の縛り】
ミアが魔法を詠唱しオレの身体に触れた。
すると光がオレの体の流血部分を包み込んで体が圧迫され、血は止まった。
ミアは身体に触れたままオレを抱きかかえた。
「またまた抱きかかえてもらったな」
オレはミアの頭を撫でた。
「もう、リク様ったら」
ミアが頬を染めて真っ赤になってオレの身体から手を離した。
そのせいで、止まっていた血が噴き出した。
ブシャ、ブシャ、ブアシャーーーーーー。
「ミ、ミア様。
また血が噴き出しています」
いつの間にか駆けつけたコリンナが噴き出している血を指し示した。
「だって、リク様が頭をなでるんですもの……ってきゃあああああああ!
死なないで、死なないでリク様!」
本当に、ミアは元気だなあ。
ミアは慌ててもう一回止血魔法を唱えると、オレの身体に触れた。
なんとか血は止まった。
「ハハ! どうした、アンタ威勢よく啖呵を切ったと思ったらただの雑魚じゃないか。
おまけに女に介抱されて……それにしても良く脳天を突かれて即死しないものだな」
プロジアは即死しないオレをいぶかしんでいる。
伝説の武闘家が、頭を貫かれたくらいで死ぬものか。
根性があれば死なないんだ。
「く、クソ……」
だが、血が抜けすぎたオレは立ち上がる力すら残っていなかった。
プロジアはオレ達の元へ近づいてきた。
「どうだ、降参するならお前たちは助けてやる。
貴族を殺すと厄介だからな。
だが、獣人女は置いて行ってもらうぞ」
プロジアはオレ達を槍で牽制した。
コリンナがオレとミアの前に両手を広げて立つ。
「ハハハ、女にかばわれてやがる。
何だお前、その耳キツネ族じゃねえか。
へえ、このあたりじゃ珍しいな」
「私を連れて行って構いませんから、そのネコ族達を許してやってもらえませんか?」
コリンナは頭を下げた。
ミアが叫ぶ。
「何言ってるの、コリンナ!」
「みんな、私の後ろにおいで」
コリンナは獣人の少女たちを呼び寄せた。
怖がりながらも獣人の少女たちはコリンナの言うとおりにした。
「ミア様なら、悪いようにはしないわ。
あなたたちを助けてくれる」
「へへへ、キツネ族のしかもアンタみたいな上玉なら依頼者も許してくれるだろうよ」
プロジアはコリンナの提案に頷いた。
「どうして、そこまでしてくれるの?」
ネコ族達を守ろうとしたナイフを持った少女がコリンナに尋ねた。
「……私も、助けられたから」
コリンナは少女にそう答えると振り返ってオレに近づいた。
「リク様……少しだけでもあなたと一緒に過ごせて楽しかった」
コリンナは、ミアに抱えられたオレをぎゅっと抱きしめてキスをした。
「リク様、私幸せでした」
じゃあ、お前の瞳から落ちていくものは何だ。
コリンナ、お前はいつも自分が傷つく方法ばかり選ぶ。
そんなコリンナをオレの側から手放すわけないだろうがッ。
だが……くそ、立ち上がれない。血が抜けすぎて声も出ない。
ようやく、出来たのは指を一本立てることだけ……
「……もう一回ですか?
ふふふ、リク様。
できれば、あなたとずっと一緒にいたかった……最後のキスですよ」
コリンナはそっとオレの唇と唇を合わせた。
悪いな、コリンナ。
お前の力、オレがもらうぞ。
【エナジードレイン!】
オレは全力でキスをすると、コリンナの身体からエナジーを奪い取った。
「ああああ、そんな凄いキス見たことありませんッ!」
ミアがオレとコリンナのあまりにも情熱的なキスに、腰を抜かしている。
「く……ふううう……あああああ!」
コリンナは力を失って倒れそうになった。
コリンナからエナジーを奪い取ったオレは、倒れそうなコリンナをゆっくりと地面に寝させてやる。
オレは【傷よ治れ!】 と叫んだ。
すると、穴が塞がり、オレの身体のケガはたちまち治っていく。
ふ、これが【鬼道☆】だ。
この世のすべての物質・状態に変化をもたらすこのオレに不可能など無い!
「な、何が起こった!」
プロジアたちは驚いている。
「これが、リク様です!
いつだって誰かが困っていると助けてくれるんです。
傷ついたって何度だって立ち上がる、リク様は私の英雄です!」
ミアがキラキラした瞳でオレを見る。
「フハハハ、下がってろ。
ミア、すぐに終わらせるからな」
「はい。リク様、頑張って」
オレはミアの頭をわしゃわしゃ撫でた。
「何だかはじめて会ったときみたいですね」
「そうだな、あの時もミアが助けてくれた」
「ふふふ、リク様。
あのときは心配だったけど、いまは何の心配もありません。
リク様は、必ず勝つんですから」
ミアがほっぺにキスをしてくれた。
「帰ったら、唇にしてあげますからね」




