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20 最高のパートナー

「ちょっと私から見えないところで何やってるんですか?」


 仕方ない、ミアが怒っているので話をしてやろう。

 クルっとミアの方を向く。


「あら、リク様。

 貴族的衣装もお似合いですよ?」

「あ、ミア。

 衣装ありがとう。

 コリンナを雇ってくれるのか?」

「だって、コリンナは可哀想な子なんですよ?」


 ミアがオレに真剣に訴える。


「食べ物にも困る生活で、小さな頃に町長のところに買われて……村で待つ婚約者にも会えずに……」


 ミアが笑顔でオレの手を握る。


「それを、リク様が助けたんですよね?

 私、感動しました! 助けたのに何も見返りを求めないリク様!

 やっぱり素晴らしいお方ですわ!

 コリンナが私に言ったんです。

 リク様に恩返しがしたいって……できれば側にいたいって……

 だって、リク様は素敵な方ですからね、一緒にいたいのもわかります」


 ミアはキラキラした目で見てくる。

 本当に素直な子だなあ。

 言葉に裏がなくて、ミアの笑顔を見ると幸せになるぞ。


「ははははは、オレは偉いのだ。

 コリンナは、寂しそうだったからな」

「ふふふ、リク様が偉いのは知ってますよ」


 ミアが嬉しそうにしている。

 ミアは頭を撫でてもらうのが好きみたいなので、してあげよう。

 なでなで。

 

 コリンナが拍手をしてくれた。


「ご婚約おめでとうございます、ミア様、リク様」


 ん? 誰と?


「ふふ、ありがとう、コリンナ。

 昨日した私とリク様の馴れ初めの話、覚えてる?」


 コリンナはキラキラした顔をしてミアに返事をした。


「ええ、リク様の活躍と情熱的なプロポーズですよね!」


 んんん? 活躍はいつもしてるけど、プロポーズしたっけ?

 えっと、ヘルガにはした。

 ミアにはしてないぞ?


 ミアが得意げに頷いた。


「リク様は、ゴブリンライダーから私を助けると頭を撫でて私に求婚したのです!

 私は侯爵令嬢ですから、それこそ地位や財産目当てに求婚する男はそれこそ山ほどいたのです」


 ミアが笑顔でオレの手を取った。


「でも、リク様は私が侯爵令嬢だということどころか、名前すら知らなかったのに……求婚してくれました」


 ミアは頬を真っ赤にして嬉しそう。


「私は、私を助けようと身を挺して傷ついたリク様をお助けしたかった。

 必死になって神聖魔法を使っていた私をリク様が気に入ってくれました」


 ミアがぽろぽろと涙を流した。


「貴族が習う必要ないと、お父様もお母様も神聖魔法の習得には反対でした。

 そんなの部下にやらせればいい……」


 ミアがオレにしなだれかかってきた。


「私、英雄の物語が好きでした。

 決して無敵ではないけれど、傷ついては立ち上がる……そんな英雄様と一緒に冒険の旅に出たい。

 ……ふふふ、私はコドモなのです。

 できれば、いつもお城にいる侯爵令嬢じゃなくて、ただの癒し手として冒険に出たかったのです」


 ミアがオレを上目づかいで見上げてくる。


「フハハハ、コドモじゃなくたって冒険は何歳になったって楽しいのだ。

 ミアが行きたいなら明日にだって連れて行ってやるぞ。

 英雄と一緒が希望なら、オレがついていってやる。

 間違いなく、オレは英雄だからな」


 ミアは涙を流しているけど、笑っていた。


「ふふふ、英雄様、今日でもいいですか?

 傷ついたヘルガ様のための薬草がもう少し欲しいんです」

「フハハハハ。

 もちろんなのだ、オレがいればどこにだって行けるぞ」


 オレはミアの頭を撫でてやる。


「私子どものころは、どうして求婚するときにあたまを撫でるのかわかりませんでした」


 ミアはオレの手の甲に頬を寄せた。


「今なら、わかります。

 愛する人の手に守られたいからなんですね。

 リク様、頭を撫でてくれて、求婚してくれてありがとう。

 いい夫婦になりましょうね」


 ミアがオレの顔をじっと見つめた。


 いやあ、なんだかミアはオレにぐいぐい迫ってくるなあ。

 とんでもなくエッチな子なのかなあ、と思ってたけど……


 オレ、知らないうちにミアにプロポーズしてたんだなあ……

 

 ミアが頑張ってたから頭を撫でてあげただけなんだけどな。

 「頭を撫でることが求婚するって意味だと知らなかった、誤解なんだ」と言えば、ミアはきっと許してくれるだろう。

 でも――


 良く手入れのされた金の長い髪。

オレの言うことにいちいち笑ってくれる澄んだ蒼い瞳。 

 すぐに感激して抱きついてくるミアの体がたおやかなこともオレは知ってしまっている。

 香草を炊き込めているのか、ミアからはとても良い香りもするのだ。

 

 とか、なんとか思っているとミアをぎゅっと抱きしめてしまっていた。


「どうしました? リク様」


 ミアをぎゅっと抱きしめたオレの頭を、可愛らしい手が撫で返してくれていた。


 はは、オレの知力25の頭で考えなくても、オレの身体は答えを見つけてくれていた。

 オレはミアの手を取った。


「これから、一緒に頑張っていこうな。

 婚約者として」

「はい、リク様……一緒に頑張りましょう」


 ミアはオレと手を絡ませる。

 指と指が一本ずつ絡むやつで、恋人同士がする手つなぎだ。


「まあ、ミアさまったら大胆です」


 コリンナが驚いていた。


「我々の前に立ち塞がる問題は山積みですが、一個ずつ片付けていきましょうね!」


 ミアの目がキラキラしていた。

 まあ、問題はなんとかなるだろ。

 それより、今はこの可愛い婚約者にオレの本気の求婚を見せてやらなくてはな。


「ミア、オレと結婚してくれ」

「は、はい!」

「お前は絶対オレが守って見せるから」

「私が、リク様を回復してあげますからね」


 はは、そう考えるといいパートナーだな。


「目をつぶって」

「は、はい……」


 ミアはつま先を伸ばし、オレに唇を差し出してきた。

 オレは、ミアの背中に手を回し唇と唇を重ねた。


 ……ちゅ……


「ぷは」


 ミアは恥ずかしがってもじもじしている。


「リク様、これからずっと一緒ですよ」

「ああ」


 ミアがしなだれかかってくる。

 オレはその身体をぐっと支えた。


「私、幸せです」


 ミアの顔を見ていると、オレも幸せな気分になってくる。


「オレも……幸せだぞ」

「嬉しいわ、あなた」


 ミアの口から精いっぱい背伸びして出た『あなた』がなんだか可笑しくて笑った。


「ははは、ミアに『あなた』はまだ似合わないぞ」

「ふふ、私も、言っててそう思いました」


 オレとミアが仲良くしていると、コリンナが話しかけてきた。


「ミア様、もう一度目をつぶっていただけますか?」


 コリンナがミアに言う。


「え? うん、なにかあるの?」


 ミアは疑問に思いながらもコリンナの言うとおりにした。

 コリンナは小さくオレの名前を呼んだ。


「……リク様」


 …ちゅぱ…


 コリンナがオレにキスしてきた。


「私のことも……忘れず愛してくださいね、リク様」


 コリンナはそう言ってオレの片方の手に恋人つなぎしてきた。

 

「はは、もちろんだ」

「もう、コリンナもう目を開けていいの?」


 コリンナは素早く手を放し、オレと距離をあけた。

 オレはミアを抱え上げた。


「きゃっ」

「フハハハハ、お姫様抱っこをしてやろう」

「ぐるぐる回ってくれますか?」

「はははは、任せろ」


 オレはミアをぐるぐる回した。

 子どもみたいにきゃあきゃあ喜んでいるミアと一緒なら楽しく生きていける気がした。

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