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13 お前はオレのものだ

 ヘルガは舞台の上で力尽きているが、口元には笑みを浮かべていた。

 すごい勢いで力が抜けていく。


 あ、レベル1になった気がするぜ。

 オレもぶっ倒れた。


「これでお前はオレのものだ」


 オレは横たわったままヘルガに話しかけた。

 フフフ、オレの弟子として物凄く強くしてやろう。

 ヘルガは、顔を真っ赤にしていた。


「す、好きにすればいいだろ」

「(弟子なんだから)一緒の部屋に住めよ」

「す、住むのか? 二人でか?」


 ヘルガは驚いている。


「だって、(オレの流派の一門に)籍を入れるんだろ?」

「入籍までするのか!」


 一応、弟子入りは書類でするものだぞ。

 オレが創始者の一門は、入会申請書と入会審査があるのだ。


 だれでも籍を入れられるわけじゃないんだぞ。

 ふふ、冒険者はみんな籍を入れたいって言ってるんだぞ。


「それはそれで大事にし過ぎじゃないか?

 奴隷にされたって文句は言えないんだぞ、決闘で負けたんだから」

「お前をオレの(流派の)籍に入れたいんだ。

 嫌か?」


 なんだか、ヘルガが嫌がっているみたいだ。

 オレは少し悲しくなった。


「嫌なんて言ってないぞ!」


 ヘルガはとても嬉しそうな声だ。


「リクは優しいんだな」

「何を言ってるんだ? めちゃめちゃ厳しくしてやるぞ」

「……私は、戦いばっかりだったから、そういうのは不慣れなんだ。

 頑張るから、優しく躾けてくれないか」


 うんうん、弟子のしつけは師匠のつとめだ。


「お前は(剣士として)、いい胸(の筋肉)と、(筋肉のついた)いい尻をしているからな」

「な、何を言ってるんだ!」


 ヘルガは耳まで真っ赤になった。


「なあ、リク」

「ん、なんだヘルガ」


 ヘルガはオレを見つめた。


「助け起こしてくれないか」


 オレもヘロヘロなんだけどな。

 ここは、男を見せる場面か。

 地面に倒れているヘルガを助け起こそうとした。


 ヘルガは魔族化は解けて人間に戻っている。

 オレがヘルガを抱きかかえると、


「これが、私の気持ちだから」


 ヘルガはオレの顔に触れて、唇を重ねた。


「……ここは舞台だから、ここまでだよ」


 ヘルガは笑うと、オレの手を払い立ち上がった。

 会場は喧騒に包まれている。


「ヘルガ様が、敗れた!」

「なんだ、あの男の動き、全く見えなかったぞ!」

「人間業じゃねえ!」


 騎士たちが騒いでいる。

 少し目立ちすぎたようだが殺さずに武闘家として勝つということはできた。


 ミアと町長が駆け寄って来た。

 ヘルガが、町長に伝える。

 

「町長、私の負けです。

 リクの勝利宣言をお願いします。騎士たちもざわついていますから」

「うむ」


 町長は、小型の石板を取り出し、短く呪文のような言葉を詠唱した。

 声を拡大する魔道具を使うのか。


「ヘルガ・ロートとリク・ハヤマの決闘、勝者は『リク・ハヤマ』!盛大な拍手を!」


 会場は割れんばかりの盛大な拍手に包まれた。


 ☆★

 

 全員で別の馬車に乗り込み、町長の館へ。

 コリンナというケモノ耳の使用人に案内され、大きな円卓のある広間へ案内された。


 すでに3人は着席していた。

 円卓の正面に町長、左にヘルガ、右にミア。


 着席を促されたので座る。

 喉が渇いたので用意された果汁をいただく。

 

「では、入場に対しての決まり事などを話していきましょう」

「ん? 町への入場をスムーズにさせてくれればそれでいいぞ」


 面倒な決まり事などなるべくご遠慮願いたい。


「ギルドマスターが倒されたというウワサ自体保安上問題があります。

 だれが倒したかということも含め、あれだけの群衆の口に戸は立てられますまい。

 一応釘を刺しておきますが……」


 町長とミアが目で合図をし、頷きあったようだ。


「それでは、少しヘルガはギルドの仕事がありますので、これで失礼します」

「え、それよりこれからどうするか話し合うべきじゃないのか」


 ヘルガはオレを見つめている。

 一緒に居たがっているみたいだ。


「いえ、ギルドの方で火急の案件があるそうだから……」


 町長が、ヘルガをギルドへ連れて行った。

 ミアがこちらへ来た。


「リク様。

 この度、決闘をするようなことになってしまって申し訳ありません」


 ミアは深々と頭を下げ、謝罪の意を示す。


「ミアが悪いわけじゃない」


 オレは、ミアの頭を撫でてやった。


「はい。

 決闘でリク様は、命を賭けさせられました。

 そして、ヘルガ様はその身を賭けられました。

 決闘の結果は絶対です。

 ヘルガ様の身柄はまるごとリク様のものです。ですが……」


 ミアがオレの手を取った。


「怒りが収まらないのであれば、私がリク様になんでもしてあげます。

 だから、ヘルガ様をお許しいただけませんでしょうか」


 ミアはオレに真剣にお願いしてきた。


「ヘルガ様は、先の大戦の英雄でもあり、この町の安全に尽力してくれました。

 そして、何より……婚約者がいるのです」

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