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第七話

とりあえず、これで一章終了となります。

次回第二章をお楽しみに!

 《ブレード・リザ》を討伐し、俺達はギルドへと報告しに来ていた。ギルドに入った瞬間、俺達はなぜか馬鹿にされたような視線で見られていた。

 ざっと見ても数十人の冒険者が俺達をにやけた表情で見つめていたのだ。


 その理由はおそらく自由依頼書に関連することだろう。自由依頼書を受ける奴はたいてい実力者だけ。俺達の場合は、まだ成り立てにもかかわらず自由依頼書を受注した。つまり、今俺達を見ている冒険者は「やっぱり、怖くて依頼を破棄しにきたのか?」「はっはっは! 背伸びして、受注したと思えばこれだ!」「お笑いだぜ!」みたいな思考をしてるに違いない。


 つまりは、馬鹿にされているわけだ。低ランクで、まだ実力が冒険者の間で広がっていない俺達が自由依頼書を受注することでいい笑いの種になっている。

 たぶん、受注する時も「おいおい、大丈夫なのか?」「あの馬鹿。もう自由依頼書を受注しやがってぜ?」「どうせ、すぐ破棄してくるだろ。その時は笑ってやろうぜ?」などと思っていたに違いない。

 さて、そんな馬鹿にされている中、俺とエルジェはそっとユリアさんにギルドカードを差し出した。


「すみません。クエストクリアの確認をお願いします」

「しまーす!」


 ざわざわと俺達を馬鹿にしていた冒険者達がどよめく。

 平然と、それも普通にいつものクエストをこなしました的な雰囲気と態度でギルドカードを出したことに動揺していると思われる。

 自慢するわけではないが、俺は魔王でエルジェは天使だ。そこらに居る一般の冒険者達よりは、ランク以上の実力があると思うわけで。


「かしこまりました。それではチェックをしますので、しばらくお待ちください」


 ユリアさんは、いつもどおりの営業スマイルでギルドカード二枚を受け取り奥へと消えていく。その待ち時間の間、冒険者達の視線を気にしながらずっと待っていた。

 エルジェはなぜか平然としている様子。こいつはあまり気にしていないんだろうな。


「ねえ、霊児。なんで、そんなにそわそわしてるの? トイレ?」

「アホか。周りの視線が気になって落ち着かないだけだ。それより、女の子が平然とトイレなんて言うもんじゃありません。もう少しオブラートに包みなさい」

「オブラートに包む? どういうこと? 何かに包むの?」


 そこからかぁ……どうやって説明しようか。普通に説明したほうがいいか。あまり考えて説明すると余計に理解不能になるだろうし。


「オブラートに包むっていうのはだな」

「お待たせしました。チェックが終了いたしましたのでギルドカードのほうをお返しします」


 説明しようとすると丁度ユリアさんが帰ってきた。ギルドカードを返却し、いつも通り報酬が入っている袋を取り出す。


「確かに《ブレード・リザ》の討伐を確認いたしました。こちらが報酬となります」

「ありがとうございます」

「やったー! 三万五千ルド! よーし、さっそく買いに行かなくちゃ!!」

「お、おい!」


 報酬を貰うといきなり大急ぎでギルドを出て行く。

 唖然。

 いったい何を買いたいんだ? あれだけ急いでいるんだから、よほどの人気商品なんだろうけど。出て行ったエルジェを見送った後に頭を掻きながら振り返ると、なぜかユリアさんが意味深な笑顔で俺を見詰めていた。


「ど、どうしたんすか?」

「いえいえ。素敵な仲間に出会えて魔王様もお幸せだなぁっと思っただけですよ」

「どういう意味ですか?」

「ふふふ。さて、どういう意味でしょうね。たぶん、すぐわかると思いますよ。きっと」

「そう、ですか」


 わけがわからなかった。そんなわけのわからないまま俺はギルドを後にした。




・・・・・




 宿に戻ったが、エルジェが帰っていなかった。

 まだ買い物をしているんだろう。

 いち早く戻ってきた俺はベッドに寝転がり休憩をする。

 それにしても、エルジェの奴……今日は唐突にあんな依頼を持ってきて、少しは考えてクエストを受注しろよな、まったく。

 いくら報酬が高いからって。


 それに、あの急ぎよう。よほど、あの報酬で買いたいものがあったんだろうな。買いたいものがあるから、あの自由依頼書を受注した。

 何を買いたいのかは検討もつかないけど。付き合わされるこっちの身にもなってくれっての。


 俺が魔王じゃなかったらどうなっていたことか。

 そういえば、今日の夕食はどうしようかな? 宿の飯はうまいけど、久しぶりに外食でもするか。報酬で三万五千ルド手に入ったことだし。


 ドン!


 そんな時、またもや乱暴にドアが開かれる。そこに居たのはもちろんエルジェだった。満足げな表情で、手を後ろにしながらこちらい近づいてくる。

 なんだ? 何を企んでいる? 


「どうしたんだ?」

「えへへ。実はね……これ!」

「ん? 箱か? 何が入っているんだ?」


 隠していたのは掌ぐらいの箱で、律儀に包装までされているな。


「開けてみてよ!」

「……わかった」


 言われるがままに俺はその箱を開けていく。リボンを解き、包装用に使われた紙を丁寧に取り、開けた。

 そこに入っていたのは、二つのリング。

 指輪サイズのリングだった。銀で作られているようだけど、装飾は何もなく、ただのリングだ。でも、何かが刻まれている。

 なんだこれ?


「これは?」

「記念!」

「記念? なんの?」


 エルジェはそのリングを指にはめて笑う。


「私達にパーティー結成記念! 人間界では記念にこういうプレゼントを渡すって聞いたことがあったから」

「確かに記念にプレゼントを渡すけど……さすがにパーティー結成記念でっていうのは大げさ過ぎないか。それに、このリングは何なんだ?」

「えっとね、お互いにひとつずつつける事で絆が深まる! ていうリングらしいよ。絆のリングって名前の。これを見た時ね、これだ! って思ってさっき買ってきたんだぁ。ねえねえ! 霊児もはめてみてよ!」

「お、おう」


 若干、押されながら俺は残ったリングを指にはめる。

 絆のリング、か。まさか、エルジェにプレゼントを貰う時がくるとは思わなかったな。それにしても、魔王と天使に絆ね。

 ちょっと考えるとおかしいものだな。


 本来なら相反する存在同士が絆、なんて。

 知らないとはいえ、ここまでアホだとは……ま、悪い気はしないけど。


「これからもよろしくね! 霊児!」

「ああ、よろしくなエルジェ」


 お互いに、つけたリングを繋ぐように握手を交わす。


「ところで、これはどれくらいしたんだ?」

「えっとね、三万ルド!!」

「た、高っ!? てことは、もう五千ルドしかないってことか?」

「うん!!」


 清々しいほどの答えだった。

 まったくこいつは。

 だが、宿代ぐらいはあるらしいな。しかたない。今日は、こんなプレゼントをされたんだ。俺も何かしてやらないとな。


「了解だ。しょうがない奴だな、お前は」

「いやー。これを買うことだけしか考えていなかったから」

「まあいいか。だったら、俺からも何かプレゼントしてやらないとな。どうだ? これから外食でも」

「おお! じゃあ、久しぶりに全部霊児のおごり!?」

「そうなるかな。三万五千ルドが手に入ったばかりだし。パーティー結成記念ってことで」

「やったー! さっそく行こうよ! ほらほら!!」

「お、おい! まだ夕食までには時間があるぞ!」


 いったいどれだけ嬉しいのか、翼を広げてぐいぐいと引っ張ってくる。


「そんなに関係ないよ! 早く早く!」

「はいはい。そんなに急がなくても大丈夫だって」

「よーっし! 今日は一緒に飛んで行こう!!」

「は? おま、何を――ちょっ!?」


 瞬間。

 窓から俺を手を引いたまま飛んだ。

 なんという浮遊感。これが飛んでいるということなのか……って、そんな場合じゃない!


「それー!!」

「アホ! さっさと降ろせ!! 普通に歩けばいいだろう!!」

「いっそげ! いっそげ!!」


 全然聞いてない……あぁ、下で見ている人達の視線がすごい突き刺さってる。こんなことで、本当に絆が深まるのかね?


(ん? なんだ……ブラックボックスの一つが解禁?)


 エルジェに連れられている中、体に力が湧いてきたのに気づく。なんだと思えば、今まで謎だったブラックボックスのひとつが解禁したようだ。

 ……そうか。絆を紡ぎしってこういうことだったのか。


「どったの?」

「いや、まあどうやらお前と仲良くなったおかげで少し強くなったようだ」

「え? なにそれ、どゆこと?」

「さあ、どういうことなんだろうな」


 さて、解禁されたのは……【魔王の威光】? いったいどういう能力かは、食事を済ませた後でもいいか。

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