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第八話

「さあ、どんどんいらっしゃい! 私をもっと楽しませて頂戴!!」


 まさに無双。

 駆け抜ける青き魔王ルヴィアは、氷の魔剣を得物に、戦場で舞う。

 その姿を、見た部下のメイド達は目をきらきらを輝かせていた。自分の主の猛々しくも美しいその姿に、見惚れていたのだ。

 今のルヴィアは、仲間を守るため、昔のように戦いを純粋に楽しむ一人の戦士となっている。


「くそっ! 強すぎる!? あんなのに勝てるのか!?」

「に、逃げるんだぁ! こんな奴に、勝てっこない!」


 相手の兵士はルヴィアの絶対なる力の前に、戦意喪失をしている。


「逃げてもかまわないけど。どうやら、そっちのリーダーさんはそれを許してはくれないらしいわよ?」

「え?」


 戦意喪失をした兵士達が逃げようとしていると、背後より迫りくる力。

 それは、巨大で強大。

 身長が二メートルを超えている巨体が、逃げようとしていた兵士の頭を掴み上げた。

 片手で軽々と持ち上げたのだ。


「貴様。逃げるとは何事だ!」

「ぞ、ゾディガ様!?」


 現れたのは、悪魔ゾディガ。

 まず、目に付くのはその巨体。二メートルを軽く超えているその巨体は、見るだけで圧倒される。

 そして、防御を捨てたその姿。

 背中に背負う大剣のみが目立ち、防具らしい防具を身に纏っていない。

 よほど、攻撃をかわすのが得意なのか。

 それとも、攻撃を食らう前に相手を倒してしまうのか。ルヴィアは、現れたゾディガを観察していた。


「弱き者は我が軍にはいらん!」

「お、お許しを! ぞ、ゾディガ様…!」

「ぬうん!!」

「あああああああッ!?」


 片手を振るい、兵士は彼方へと投げ飛ばされた。

 まるで、ギャグ漫画のようにキラリと星が輝く。それを見たルヴィアは、おお~っと拍手をする。


「すごいわね。その怪力。さぞ、その怪力で振るう大剣はすごい威力なのでしょうね~」

「ふん。貴様のことは聞いている。接近戦無敵と言われる魔王ルヴィア。我が、剣と貴様の剣。どちらが上か」


 すっと、背中の大剣を握り、抜き放つ。

 シンプルなデザインの大剣だが、刃に魔術が刻まれている。

 ルヴィアはそれを見た瞬間、すぐに感づいた。刻み込まれている魔術は、威力強化、切れ味強化。つまり、全て相手を叩きのめすための魔術のみが刻まれているのだ。


「へえ。随分と脳筋なのね」

「俺は、これで全てを薙ぎ倒してきた。貴様も、我が力の前に屈するがいい!!」

「あらあら。そう言われても無理なのよね~。だって、私はあなたを倒して仲間の下へ行かなくちゃならないんだもの」


 ふふっと、余裕の笑みを浮かべながら【アシュレイ】を構える。


「面白い! だが、俺はそう簡単にはやられぬぞ!!」


 大地を強く踏み、突き進む。

 迎え撃つルヴィア。普通ならば、二メートルをも超える巨体から振り下ろされる一撃を受け止められない。

 ましてや、簡単に避けることすらも。

 だがルヴィアは違う。


「ほいっと」

「ぬうん!?」


 簡単に受け止めてしまった。

 ゾディガは両手で全力で振り下ろしたのに対して、片手で受け止めてみせた。


「あらあら? どうなされたのかしら? 私は、片手よ?」

「ぐっ! ぬ……ふん!!」


 馬鹿にされたことにより魔術を発動。

 すると大剣の重さ、切れ味、強度が一気に増した。

 これならばいける! とゾディガは確信した。


「ふふ」


 だが動かない。

 動かせない。


「そーっれ!!」

「ぬおー!?」


 逆に押されてしまう。

 それも軽々と。後ろに押されたゾディガは、豪快に仰向けに倒れてしまった。


 ルヴィアは、魔王だ。

 そして、接近戦で負けなし。

 普通ではないのだ。普通の悪魔ではない。身体能力はどの悪魔よりも高い。例え、相手が魔術により強化していても、それだけでは足りない。


「今まで戦ってきた人に比べたら、足りないわ。私を倒すなら、魔王以上の存在になることね」


 もはや興味を失ったかのように【アシュレイ】を首元に突きつけ、圧倒的な力をゾディガに教える。

 このまま相手の首を落とせば、ルヴィアの勝ちだ。


「覚悟! 魔王ルヴィア!!」

「あら?」


 突然の奇襲。

 ゾディガの部下の一人が、今なら自分でも魔王を倒せると思い攻撃を仕掛けてきたようだ。


「がっ!?」


 が、その攻撃は届かなかった。ルヴィアが倒したからではない。確かにルヴィアであるならあの程度の奇襲などは余裕で対象できるが、やったのはこの場にいなかったはずの第三者。

 赤いハチマキをなびかせ、長剣を振るった少年。

 魔王ルヴィアを久しぶりに傷をつけた強者。


「まったく。迷ったと思ったら、こんな大事に出くわすとはな」

「方向音痴っていうのは、ここまですごいものなのかしら? ……迷子の勇者さん」


 勇者ロイスの登場だ。

 この場にいなかったはずのロイスがどうしてこの場にいるのか?それは……言うまでもない。

 方向音痴のために、迷子になりここまで奇跡的に辿り着いてしまったのだろう。そして、偶然にも目の前でルヴィアが襲われようとしているの目撃して、助けに入った。


「うるさい。それよりも、大丈夫だったか?」

「大丈夫に決まっているじゃない。それに、今の助けてくれなくても私なら余裕だったわ」

「そりゃあ、余計なことをしたな。それで? その足で踏んでいる悪魔は倒さなくていいのか?」


 もちろんゾディガのことは忘れてはいない。

 足でしっかりと踏みつけ、アシュレイを突きつけ逃げられないようにしている。


「今から倒すわ。それと、この場にいるんだったら、この後も手伝ってくれる?」

「この後? もしかして、霊児達のところへ行くのか?」

「ええ。各々役目を終えたら全員集合、てことになっているのよ。あなたも、十分強いんだから手伝ってくれるわよね?」

「……しょうがない。僕も手伝ってやるよ」

「ありがとう。さーて。お待たせ。巨人さん。そういうわけだから、大人しく……死んでね」




・・・・・




「輝け!」

「炎よ!!」


 戦いは緊迫している。戦いが始まってどれくらいが経っただろうか。

 さほど経っていないのはわかるが、それでも感覚的に数時間は経ったような気がする。

 こちらの戦力は俺と、エルジェとレリルだ。

 戦力的にはこっちが不利だ。しかし、個々の能力はこっちのほうが上だと俺は思っている。

 数で圧倒している相手を、逆に力で圧倒している。


「余所見をする余裕はあるのか!」

「おっと」


 フォルガデからの一撃を俺はひらりと回避してみせる。

 数は確実に減ってきている。

 だが、肝心のフォルガデを今だに倒せていない。


「どうやら、我が軍を圧倒しているようだが。俺は倒せぬ! いくら部下達が倒されようとも、この俺は倒せぬ!!」

「言ってくれるじゃねえか。だが、その余裕もどこまで持つかな!!」


 高熱を込めた拳を振るう。

 フォルガデは、それをぎりぎりのところで回避し、魔力刃で切りつけてくるが、俺は右腕で受け止め、そのまま余っている左で追撃。


「ぬるい!」

「おっと。結構やるな」


 しかし、弾かれた。

 どうやら、口だけのやつではなかったようだ。

 さてはて、この場をどうするか。


「魔王の力はその程度なのか?」

「まさか。今のは全力じゃない。お前を全力で倒すのはまだだ。それに、魔王の力をあまりなめていうと痛い目にあうぞ?」

「俺には、魔王を超える力がある。それを今から証明してやろう!」


 フォルガデの体からどす黒いオーラが噴出す。

 そのオーラは、魔王とはまた違った波動を感じる。なんだ? この力は。

 徐々にそのオーラは、フォルガデを包み込み変化を起こす。

 髪の毛は逆立ち、筋肉が膨れ上がって体が一回り大きくなったような気がする。


「ふはははははは!! この力を見よ! 圧倒的な力を! 今の俺は魔王など軽く超える存在となっている! さあ! その命を奪わせてもらうぞ!!」


 謎の力を解放したフォルガデは、高笑いをしそのまま突撃をしてくる。

 このままだと押しつぶされる。

 ここは回避を……いや、しなくていいか。


「霊児!!」

「ぬう!?」


 眩い閃光がフォルガデへと直撃する。

 その攻撃はエルジェのものだった。俺は、嬉しそうに笑い後ろを振り向く。

 そこに居たのは。


「お待たせ~」

「ご無事でしたか?」

「うむ。言われたとおり来てやったぞ!」

「やっほー。ルヴィアお姉さん登場!」

「よう、霊児。僕も来てやったぞ」

「全員集合」

「早かったな! お前ら!!」


 なぜかロイスが混ざっているが、まあいいだろう。

 これで、戦力は揃ったことだしな。


「ぬう。よもや我が部下達が全員やられたか。ならば、俺だけでも貴様らを皆殺しにしてやろうぞ!!」

「んじゃま、ここから全力でいくか!」

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