第五話
「まあまあ、ついにクロちゃんのところにも来たのね」
「うん。だから、後はルヴィアのところだけ」
「そっちの状況はどうなんだ?」
俺、キース、クロときて、最後はルヴィアのところだ。ルヴィアのほうはまだまだ襲われては居ないようだが、前ギルドで聞いた情報だと近隣の村々を無差別に襲っているようだったが。
「こっちはまだ襲われてないわ。そもそも襲ってきても返り討ちにするけどね」
ルヴィアが言うと心強いし安心できる不思議。それだけの実力があるこその余裕の返り討ち宣言だな。
「そんなことより!! 今日は、コスプレをしてちょっとした演劇をしたいと思ってるの!!」
「演劇? 撮影会じゃないのか」
「ええ! 撮影会もいいけど、次はもっと映えるものがほしいの!! だから、私が台本を考えたわ!! 五冊!!」
は、張り切ってるなぁ。台本ってそう簡単に作れるものじゃないと思うんだが。それを五冊も作るなんて、どれだけ張り切ってるのか。
というか、今回のことをそんなことで言ってのけるとは。
「ま、まさかこれから五冊分を?」
相変わらずあんまり乗り気ではないレリルである。
「そうよ!! さあ! スターの皆さん!! 会場へと移動するわよ!!」
「はーい!!」
「最初の台本は……」
そして、相変わらずノリノリのエルジェとクロである。ルヴィアと共にさっさと移動する中、レリルはいまだ動けないでいた。
「嫌だったら、行かなくてもいいんだぞ?」
「で、ですが。演劇に興味がないと言えば嘘になります。でも、また過激な衣装を着るかと思うと……」
なるほどな。演劇はしてみたい気持ちはあるけど、今までの経験から衣装がまたすごいものなんじゃないかと壁ができてしまっているんだろうな。
「俺のほうからルヴィアに言っておくから、参加してみろよ」
「は、はい! よろしく、お願いします……!」
そんなこんなで、俺のほうからルヴィアにレリルのことについてほどほどにしてくれと伝えた。ルヴィアは了承してくれたが、どうなんだろうなぁ。演劇は後で映像で観ることになり、暇になった俺は城をぶらぶらしていた。
すると。
「わー! 霊児様だぁ!」
「遊んで遊んでー!」
「あれ? キース様は?」
幼きメイド達に見つかってしまった。彼女達は、メイドとはいえまだまだ遊び盛りなようで、ここに来るといつものように遊んで欲しいとせがまれるようになってしまった。ちなみに、彼女達と遊ぶ者筆頭はキースである。
そのキースは、まだ周辺にバルザルの部下達が残っていないかと捜索中だ。
「今キースはいないんだ」
「そっかー。じゃあ、霊児様が二倍遊んで!!」
「二倍かー」
この子達は、当然ながら悪魔である。しかも、新世代を生きる才能ある子供達だ。なので、元気が有り余っているのだ。
遊んだ後は、ちゃんと仕事をしている。それでも体力は余りに余っている。
「遊んでー!!」
「遊ぶぞー!!」
「いこうよー!!」
どうしたものかと悩んでいる中、幼きメイド達は俺のことを引っ張ってくる。
「わかった! 俺が二倍でも三倍でも遊んでやる!!」
「わーい!!」
「それじゃ、捕まったら関節技しちゃうぞ追いかけっこをしよー!!」
「なんだその物騒な遊びは!?」
前から思っていたけど、悪魔ってやっぱり遊びもバイオレンスなんだなぁ。この前も、見つかったら崖から落ちよう鬼ごっことかいう遊びをやったなー。結果、俺とキースは見つかってしまい二人仲良く底が見えない崖から飛び降りたっけなぁ。
いやぁ、あれはさすがに肝が冷えたよ。それでも、死ななかったけど。さすがは悪魔の体は頑丈だなぁと改めて確認できた。
「さっそく開始だよ! みんなぁ!!」
《わーい!!》
「ちょっ!? こんなに居たのか!?」
最初の三人を合わせて、ざっと三十人は居るだろう。だが、これだけの数で、追いかけっこをすれば楽しいといえば楽しいだろうな。
「みんな! 霊児様を追いかけるよー!!」
「え!? 俺一人を追いかけるのか!? それはちょっと」
さすがに三十に追いかけられるのは、きついものがあると言おうとしたのだが。
「いっけー!!」
《突撃ー!!》
「ちょっとは人の話を聞いてくれー!!」
しょうがないので、俺は幼きメイド達から逃げることにした。このまま捕まってしまっては、三十人に関節技を決められてしまう!
「お疲れ様でございます、霊児様」
「マエリナ!? すまん! 助けてくれないか? メイド長であるお前から、あいつらを」
「……皆さん」
《はい!!》
よし、これで。
「仕事に遅れないように」
《はい!!》
「え? それだけ?」
「申し訳ありません。これからわたくしはルヴィア様のお手伝いに向かわなければならないのです。今回は、これをお渡しに来ただけなので」
そう言って、全速力で走っている中俺に綺麗に包まれた何かの箱を渡してくる。なんだろう? パッと見はプレゼント箱だけど。
「先日のお詫びです。わたくしも張り切り過ぎたので」
マエリナの言う張り切り過ぎたというのは、ルヴィアが撮影をしている中メイド達の訓練に付き合ったあれだ。結局、いきなり性格が変わったマエリナに対し俺は、やられないようにと全力で応戦。中々の熱戦で、かなり長引いたが俺が勝利を収めたんだ。
「いやあの、お詫びよりも今この状況を」
「危ないと思ったら止めに参ります。では」
「あっ」
つまりマエリナの目には今の状況はまだ危なくないというわけか? ……十分危ないと思うのだが。俺を獲物の如く狙って追いかけてくる悪魔のメイド達。そして、捕まってしまったら関節技を決められてしまうという恐ろしさよ。
「待て待てー!」
「大人しく捕まってくださーい!!」
「無茶言うな! 捕まったら三十人からの関節技なんてさすがに耐えられんわ!!」
普通の子供ならまだ……いや、普通の子供でもさすがに三十人の関節技はきついか。しかし、今回は悪魔の子供達三十人! これは崖から飛び降りるよりもきつい罰ゲームだ。
「ふははは!! 霊児よ!! 楽しそうではないか!!」
三十人の幼きメイド達から逃げていると、今日来ることができないと言っていたキースが突然降ってきた。
「お前、どうしてここに?」
「やることを早々に終わらせて早々にやってきたのだ!! やりたいことをやるには、仕事を早々に片付けるのが一番だからな!」
確かに、そうだけどさ。
「あっ! キース様だ!!」
「皆! キース様も加わったよ!! 二手に分かれろー!!」
《おー!!》
キースの登場に、幼きメイド達は作戦を変更して、俺とキースへ部隊を分けた。
「して、霊児よ。これはただのおいかけっこなのか?」
「違うって。この前みたいに捕まったら、罰ゲームがあるやつだよ。しかも、今回は関節技だ」
「それは穏やかではないな。だが! それでこそ、悪魔の子供達だ!! よかろう!! この魔王キースが思う存分遊んでやろう!!」
キースが来た分、こっちの負担も軽くなった。数が分けられて十五人になったのだ。ま、それでも十五人から関節技をされるんだけどな、捕まったら。
安堵してられない。ここから本気の逃走を!
「霊児様。キース様。緊急事態でございます」
「っとと!? マエリナ? 今度は、どうしたんだ?」
キースも加わったことだし、本気の逃走を見せようと思ったところへルヴィアのところで手伝いをしているはずのマエリナが目の前に現れる。幼きメイド達も、ただならぬ空気に緊急停止した。
「敵襲でございます。直ちに大広間へと集合してくださいませ」
「……わかった。いくぞ、キース」
「承知した」
「あなた達は、仕事へ。さあ、行きましょう」
どうやら、穏やかな時間は終わりのようだな。あの様子だと、今回は本気の本気で攻めて来ていると考えていいだろうな。




