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第一話

「まあ。そんなことがあったの。それは大変だったわね。あっ! この衣装、可愛いじゃないの!」

「むっ。それは熱血武装ダイフェニックスのヒロイン。萌果もえかちゃんの衣装……!」

「あら? これは、クロちゃんの大好きなヒーローさん関連のものだったのね~。ちょっと詳しく教えてくれるかしら?」

「もち」


 さっそくだが、魔王ルヴィアは地球にきていた。コスプレ雑誌をクロと見ながらで良いので聞いてくれと、この前襲われたことを話している真っ最中だ。

 襲われたと言っても、すぐ片がついたけど。一応、話しておいたほうがいいと思ったんだ。


 ちなみに、今は、キースは居ない。今日は、自分の城で世の中の平和のために部下達と会議をしている真っ最中だ。だから、この後キースにも教えるためにルヴィアが帰るついでに向かうつもりだ。

 俺が真剣に説明をしている中、エルジェとレリルはテレビゲームに夢中だ。エルジェがプレイして、レリルがめがねをかけながら攻略本を手に完全攻略をしている。ちなみに、めがねは伊達である。 


「むー。やっぱりこの辺りには出てこないよー」

「エンカウント率がかなり低いようですからね。ですが、そのレアモンスターからドロップできるアイテムはコレクション図鑑を埋めるためには必要不可欠ですから!」

「むむ……よし! 頑張ってみる!!」


 相変わらずゲームをプレイしている姿は最初からこっちに居るかのような慣れようだ。

 今は、レアモンスターからドロップするアイテムをゲットし、コレクター図鑑を埋めようとしているのだが、コレクター図鑑は全部二千以上もあるから大変だろうなぁ。


「よーし! 霊児君! 一緒に買い物に行くわよ!」

「……どこに?」


 エルジェ達がゲームをしている姿を眺めていると、ルヴィアが目を輝かせながら立ち上がっていた。

 俺はいきなりのことだったので、小首を傾げる。

 そこへクロまでもが立ち上がっている。その瞳は欲しい物を見つけた子供のような目だった。


「これが売っている専門店よ!!」


 ドッと突き出してきたのは先ほどのコスプレ衣装が載っている雑誌。載っていたのは、クロが大好きな【熱血武装ダイフェニックス】のヒロインである風城かざしろ萌果が着ていた衣装が載っていた。

 戦うヒロインという感じの可愛らしくもヒーローのような衣装だ。


「だめ」

「よし! それじゃあ、お姉さんに着いてきな……え?」


 そんな悲しそうな顔をしないでください。


「ど、どうして!?」

「エルジェもレリルもそうだが、お前達は目立ちすぎるんだ。この世界だと。それに、俺は一度死んでいる身だからな。迂闊に姿を晒すわけにはいかないんだ」


 ゼルファスの言葉から考えるに、俺の肉体は完全に死する前に異空間へと入り込んだようだから、おそらくこっちっでは神隠しになっているんじゃないかとクロの一件が落ち着いたところで調べてみたところだ。

 俺は、やっぱり行方不明になっているようだ。あの時、車に轢かれた後近くの用水路へと転落してから死体が見つからない状態にあるらしい。無事なことを知らせるために姿を現してもいいんじゃないか? と思うだろうが、魔王となった今どうやって説明すればいいのか迷い中なのだ。


 素直に魔王と融合して、異世界で暮らしているぜ! なんて言ってみろ。車に轢かれ、転落した衝撃で頭がおかしくなったんじゃないかと思われるだろう、確実に。だったら、普通に車に轢かれたけど無事だったぜ! とか言ったほうがいいのだろうが……。


「ねぇ、霊児君」

「……そんなハニーなトラップを仕掛けようとだめです」

「パパ、お願いぃ!」

「誰がパパだ」

 

 年齢的にそっちのほうが上だろうに。どうしても店に行きたいルヴィアは、くねくねと俺に擦りついておねだりしてくる。が! 俺は鋼の精神でそれに耐え抜く。


「仕方ないわ! クロちゃん、私達だけで行きましょう!!」

「うん」

「それはもっとだめだ!」


 ルヴィアはまだこっちにきたばかりで、地球の文化に慣れていない。クロは、異世界組みの中では地球の文化には慣れ親しんでいるが。ずっと引き籠り生活をしていたため外に出て行くのはまだ早い。少し遠出する程度ならまだいいが、雑誌に載っている場所はここから電車を乗り継いで何時間もかかる場所なのだ。空間魔法で移動しようにも、クロはまだそこに行ったことがないのでそれも無理。

 俺は、家族で一度その近くまで行ったことがあるので、それを頼りにしているようだが。


「いつも通り、ネットで注文すればいいだろ?」

「無理よ! これは、お店限定なの! そのお店に行かないとゲットできない代物なの!!」

「それにネットで購入しても届くまで時間がかかる」


 どうしても買いに行きたいのか、中々食い下がってくれない。どうしたものかと困っていると、第三者の声が部屋に響く。


「話は聞かせてもらったわ!!」

「あ、あなたは!?」


 大げさにかっこよく現れたのは、リーさんだった。時間帯的に仕事帰りだろう。壁に背を預け、腕組みをしたままふっと笑っている。


「その役目、私が引き受けるわ」

「本当に!?」

「ええ。任せておきなさい」

「ありがとう!!」

「どういたしまして!!」


 まだ会って一分も経ってないのに、固い絆で結ばれているかのように抱き合うお姉さん方。二人に会った時から思っていたが、同類ってところか。


「その変わり、その衣装を着たクロちゃんを」

「ええ。一緒に」

「友よ!」


 とはいえ、リーさんの場合は美少女というよりも幼女好きなのだが。でも、似たオーラがあるからこうしてすぐ仲良くなれたんだろうなぁ。


「あっ。外に行くんだったら、コンビニでアイス買ってきて~!」

「私は、本屋で新作のライトノベルを買ってきてくださいますか? タイトルは」

「はいはい。任せておいて、じゃ! ちょっと行ってくるわ!!」

「今から!?」


 現在の時刻は十八時過ぎ。今から行っては、確実に深夜になってしまう。心配になった俺は窓からリーさんの様子を伺うと。


「あっ、そういえばキースが転移札を渡してたよ」

「……あっ、そうっすか」


 天高らかに、転移札をかざし姿を消すリーさんを見送った俺は、そのキースに事の次第を知らせるべく転移札でキース城へと向かうのだった。




・・・・・




 変わって、異世界のキース城。

 以前は世界を侵略しようとしていた魔王キースは今では平和主義者となり、これからは世の中が平和になれるように部下達と一緒に会議をしていた。

 その会議の途中だった。

 一人の兵士が慌てた様子で、駆け込んできたのだ。


「何事だ? 今は会議中だぞ」


 会議の途中で駆け込んできた兵士に、柔らかい声音でキースは言う。

 いつもであれば何事だ! 今は会議中だぞ!! と強めの声音で言っていた。しかしながら、今のキースは変わった。

 部下達もそんなキースを元々敬愛していたが、さらに敬愛することになった。

 兵士は、慌てていたがすぐに落ち着きことを知らせる。


「はっ! キース城に攻め入る軍勢を確認しましたので、ご報告をと。いかがなさいますか? キース様」

「ほう。俺の城に攻め入る軍勢がか。いい度胸だな。よもや、我が根城に攻め入るとは……良いだろ! 久々に俺がその軍勢を蹴散らしてやろう!!」


 にやっと、笑い立ち上がるキース。

 部下達はおお! と勇ましい魔王に感動をしている。


「というわけだ。すまないな、霊児。お前の話はまた後でだ」

「いや、気にするな。それに、もしかしたら今襲ってきている奴らが関係しているかもしれないからな」

「そうか。ではゆくぞ!! 我が城に攻め込まんとする愚か者達を撃退しに!!」


 キース城へと攻め込む軍勢。

 その正体とは? 戦闘準備ができたキースと部下達の後を追って俺は後方から観察するように出て行く。城の外に出て、しばらくしたところに平原が広がっていた。そこには、五百は居るであろう軍勢が仁王立ちしたいたのを目にした。

 キースはそれを見てほうと声を漏らす。


「我が名は、バルザル!! 東の地を制圧する者なり!! 東の地の魔王キース・D・アスフォードだな?」

「ああ。そうだが。俺のことを知っておきながら攻め入るとは。よほどの実力者なのか、それともよほどの馬鹿なのか」

「ふっ。その余裕も今のうちだ。魔王のくせに、世界侵略を諦めて平和のために力を入れている、魔王とは思えない行為! 貴様には魔王を降りてもらう!!」


 バルザルと名乗った男は、高笑いする。森のように深い緑色の髪の毛に二本の立派な角。

 露出度の高い服装。

 褐色の肌。岩のようながっちりとした肉体が自慢な男のようだ。背後には、悪魔に魔物など魔の一族が揃っている。


「魔王を降りてもらう、だと? それは無理な話だな。俺は、魔王として世の中の平和のために全力で活動しなくてはならないのでな。貴様達を倒し、会議を再開する! その後には、我が友達と遊ぶ予定があるのでな!!」


 そういえばそうだったな。この後は、地球でルヴィアとロイスを入れてゲーム大会のようなものを開催する予定だ。ルヴィアやロイスは全然ゲームについては素人なので、詳しい俺とクロと一緒のチームだ。そして、相手はエルジェ、レリル、キースにリーさんのチームとなっている。


「何が平和のためだ! 何が、友と遊ぶ予定だ! 貴様はそこまで腑抜けになったか!? こんな腑抜けた魔王は、粛清せねばならない!! ゆくぞ! 者ども!!」


 あまりの変わりように落胆した様子で、バルザルが叫ぶ。

 すると、背後に控えていた部下達は一斉に武器を構えるが、キースは余裕の笑みを浮かべる。


「我が、眼前に立ち塞がる敵は、闇の力にて殲滅してくれよう!!」

「殲滅などできぬ。貴様の最大の攻撃法である魔法は呪文詠唱があるために、時間がかかる。詠唱が終わる前に貴様を殺せばいいのだ!! かかれぇ!!!」


 キースの魔法は、今はほとんどない呪文を詠唱することで発動する魔法だ。魔法とは本来、呪文を詠唱し、魔力を練り上げることで発動するもの。

 現代の魔法は、呪文を詠唱することなく魔法名を唱えることで発動する簡易型の魔法。

 魔法の弱点である呪文詠唱なしで魔法を唱えられることから、呪文詠唱は徐々に時代が進む毎に人々から忘れられていった。

 

 だが、キースは違った。

 魔法とは本来、呪文を詠唱することで発動させるものだ。

 それをわからせるために、時間がかかる呪文詠唱をする魔法を極めた。バルザルは、キースの呪文詠唱をさせないために速攻でキースを殺すべく駆け出した。

 素早い動きだ。これでは、魔法を詠唱する間もなく攻撃を食らうだろう。

 しかしながら、キースはいまだ余裕の笑みを浮かべたまま右手を突き出す。


「残念だったな! 《ダークド・ブラスター》!!!」

「なにぃ!?」


 魔方陣が展開。深い深い闇がエネルギー砲となり、拡散。眼前の敵を飲み込んだ。

 大地が削れ、空間が歪み、五百が居たであろう軍勢が軽く二百は削れただろう。

 突然の攻撃に、バルザルは驚きを隠せない。

 どうして、魔法をすぐ発動できるのだ? と。


「き、貴様! なぜ、魔法を発動できた!? 呪文詠唱をしていないと言うのに!?」

「呪文詠唱? していたではないか。さっき。堂々とな」

「さっき、だと? ……はっ!? ま、まさかさっきのか!?」


 さっきの。それは、バルザルとの会話で、キースが言っていた言葉だ。確かに、聞きようによっては呪文詠唱に聞こえなくもない。

 そういえば、クロとかと一生懸命呪文詠唱について調べていたっけなぁ。


「あれが呪文詠唱だったのか!?」

「そうだ! さあ! 相手の戦力は削れた! 者ども!! かかれえ!!」


 キースの魔法により、相手の戦力は確実に削れた。

 それを見て、好機と思いキースは部下達に指示を下した。

 一斉に、攻め込む。バルザルはもちろんだが、バルザルの軍勢はいきなり攻撃を受け仲間が倒させたことに同様して動けなかった。


「ひ、怯むな! かかれえ!!」


 その後は、圧倒的にキース軍が優勢だった。

 先ほどのキースの魔法が効いたのか。いきなり戦力が大幅に削られたのが効いたのか。

 どちらにしろ、バルザル軍はほど壊滅状態にある。


「き、貴様! 不意打ちとは卑怯だぞ!」

「不意打ち? 卑怯? 何を言っているのだ。俺は、堂々と正面から攻撃をしたではないか。俺は、卑怯ではない。あっ。そろそろ俺は遊びに行けねばならない。早々に終わらせてもらうぞ? バルザルよ」

「キースー!!!」


 もはや、やけくそだった。

 巨大な剣を振り上げ、キースへと突撃していく。


「遅い! 闇の炎に抱かれて消えろ!! 《ダークフレイム・バースト》!!」

「この短い詠唱で、この威力だとおおおおお!?」


 先ほどより、短い呪文詠唱なのに先ほどより威力がある魔法がバルザルを包み込み、塵も残さず消えていった。


「ふむ。クローナから教えてもらった呪文を取り入れたが、これは中々の威力だな。地球の呪文を、これからも取り入れてみるか……どう思う? 霊児よ」

「さあな。お前がしっくりくる呪文を選べばいいんじゃないか?」

「それもそうか」

「キース様! 敵の軍勢を殲滅いたしました!」


 バルザルをあっさり倒したキースの下へ、残党狩りを終えた部下達が報告しに来る。以前のキース軍もかなりの強さを誇っていたが、今はそれ以上だな。


「うむ。よくやったぞ。では、俺はこれより、友の下へ行かねばならない。後始末は任せたぞ? お前達」

「はっ! お気をつけて行ってらっしゃいませ!!」


 こうして、東の地を制圧しようとしたバルザルは倒された。あの言動から察するに、俺が倒したルコザと同じ敵という可能性はかなり高いな。となると、次はクロのところかルヴィアのところに似たようなのが来る可能性がある。

 ルヴィアのところは大丈夫かもしれないが、クロのところはまだまだ復興の最中。ちょっと様子を見に行くかな、後で。


「土産を楽しみにしているがいい!!」

「会議は?」

「おっと、そうであったな」


 転移札を出したところで、俺の指摘にキースは思い出したように止まる。

 しかし。


「いえ、会議は帰ってきた後でも構いません」

「キース様は、思う存分友人達と遊んできてください」

「……感謝する! そんなお前達には、帰った後で最高のねぎらいを期待するがいい!! では、ゆくぞ霊児よ! ゲーム大会に!!」

 

 部下達も大分柔らかくなったな。前までは、会議の途中に遊びに行くなんて! とか言ってたのに。だが、こういう雰囲気は悪くないな。

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