第二話
カレンダーを見ればもう九月の中旬を過ぎている。そんな中、俺達はクエストがないときは常に地球のリーさんの家に居る。もはやあっちで宿を取る必要はないというか、エルジェ達がこっちの環境に染まり過ぎて最初からこっちに居たかのように、じゃあ地球に帰るか! みたいなノリで帰宅してしまうのだ。
リーさんは、リーさんでエルジェ達のことは大歓迎のようだが、それでも毎日のように世話になっているのであっちの世界から俺達は食材などを買っては、持って来ている。そのうえ、家の掃除や食器などの片付けなどを手伝っている。
住まわせてもらっているのだから、これぐらいは普通だろう。なんていうか、良心がそうしろと言っているんだ。で、そんな毎日が続いている中、俺はエルジェ達にこんなことを問いかける。
「そういえばさ、俺達のランクってどれくらいだったっけ?」
ちゃんとクエストはこなしているが、最初の勢いが今はない。そもそも最初の勢いが凄すぎたのだ。プロテスを倒した後は、クロのことも考えてのんびりとクエストをこなしている。エルジェもあれから少しは成長したようで、何の考えもなしに自由依頼書を持ってくることはなくなった。というか、これまでの実績がギルドから認められたようで、ギルド側からクエストを頼まれることがあったりなかったり。
「え? 今? えーと、五十九かな? 後、もうちょっとで六十だから、この後皆でオンラインハンティングを」
「ゲームのほうじゃねえよ! こっち! 俺達自身のランクだよ! ギルドカードに書いてあるだろ!!」
しかしながら、相変わらずエルジェはゲーム脳になってしまっていて、今やっているモンスターを育てるゲームのことを言ってきたのだ。
「そっちかー。ごめんごめん。えっとね私は、霊児と同じでBだよ。レリルのほうもそうだよね?」
と、エルジェの問いに、一度漫画を置いてからギルドカードを取り出して確認する。
「私もそうですね。クロさんは確かCになったばかりですよね?」
次は、隣で漫画を読んでいたクロは、漫画を読みながらゆっくりと自分のギルドカードを確認した。
「うん。昨日上がったばかり。ギルドから聞いた話だと、Bまでは比較的に上がりやすいとか」
冒険者になって二ヶ月ちょっと。比較的に上がりやすいとはいえ、二ヶ月でBまで上がったのは、俺達を加えてもまだ数えるほどしかいないようだ。
ちなみに、Bまで上がるには自由依頼書を数回やる程度では足りない。更にSまで上がるのもかなり遠い道だとか……別にランクを最速で上げるのが目標ではないので別にいいのだが。こうも早く上がると、本当に周りの期待がすごいんだ……。
しかも、それに加えて四人とも職業が【特異職業】で、固有スキルのようなものまである。
俺達の他にも【特異職業】の冒険者は居る。しかしながら、俺達のような斜め上を行く職業はあまりないんじゃないのか?
そもそも、職業にしていいものなのか? 魔王とか天使とか精霊王とかって。
この辺が気になってしょうがない。毎回のように思うのだが、ギルドカードの仕組みはよくわからない。このギルドカードは、ギルド創設者である【ギルドマスター】よりも格上の存在が作ったと言われている。
ギルドの創設から【ギルドマスター】は生き続けているらしいので、もう二百年歳以上は確実に超えているだろう。
ギルドはなくとも昔の人達は魔物と戦っていた。
ただ、今みたいに冒険者になれば戦える力を授かり、身体能力だって向上するなんてことはなかった。ただただ鍛え上げた自分の身体能力と技、魔法で戦っていたんだ。だから、この冒険者システムをどうやって作り上げたのかが、ずっと気になっている。
わからないことはまだある。【ギルドマスター】の性別と年齢とどこに居るのか。
名前も不明で、あまり表には出ないとか。
「そういえばキースが、明日なんか良い知らせをするって言ってたけど。なんだろうね?」
ゲーム機から手を離してエルジェが、話題を切り替える。そういえばそんなことを言っていたっけな。
「なんだろうなぁ。あっちの世界に行く時に、城へ立ち寄ってくれって言ってたし。その時にでも話すんだろ。……そういうわけだから、明日に備えて今日は早めに寝るぞ! お前ら!! ちゃっちゃと風呂に入って、歯を磨け!!」
《はーい!!》
明日からは、冒険者としてクエストを進めていく。
そのために、現状を知りたかったんだ。まだ、世界に平和が訪れているわけじゃない。そのために、俺達冒険者は活動を続ける。
ただし、もうラスボスもいないし、プロテスのような存在の情報は今のところないので、無謀な冒険はしない方向で。
・・・・・
「よくぞ来てくれた! 我が心の友達よ! さっそくだが朗報だ!!」
「いったい何なんだ?」
さっそくキース城へとやってきた俺達に、相変わらずテンションの高いキースは、マントを翻し、あるものを俺達に見せつけた。
「これだ!!」
「ギルドカード?」
「キースも冒険者になったんだね!」
「いかにも!!」
そう、キースが俺達に見せ付けたのは俺達も持っているギルドカードだった。なんだか予想はできていたことだけど、まさか本当に冒険者になってしまうとは。
「友との絆を深めるために俺も、昨日付けで冒険者となった! まだランクを上げていないゆえ、最低ランクだが、一緒に切磋琢磨していこうではないか!! 友たちよ!!!」
「おー!」
「頑張りましょう!」
「わからないことがあったら、先輩の私達に聞いてね?」
「ああ! よろしく頼む!!」
仲のいいことで四人で、楽しそうに笑いあっている。ついにキースまでが冒険者になってしまったか。というか、俺が言うのもなんだけど、魔王が冒険者って大丈夫なのかな?
それによく冒険者になれたものだ一応、世界を征服しようとしている魔王なのに。
そこのところを詳しく聞いてみるか。
「なあ、キース。お前、よく冒険者になれたな」
「ああ、そのことか。俺は堂々と冒険者達が集うギルドへと乗り込み、ユリアという受付の美女に「魔王なのだが、冒険者登録を頼む!」と言ってやった。そうしたらどうだ! 彼女はとても眩しい笑顔でこう言ったのだ! 「三人目の魔王様ですね。かしこまりました。では、こちらの申請用紙にご記入をお願いいたします」と! 俺が魔王だと言うのに堂々とした態度! そして崩さぬ営業スマイル! 俺は、感服した……これほどできた人間がいるとはな、と。こうして、俺は難なく冒険者となったわけだ。理解してくれたか? 我が親友よ」
説明を終えると、いつの間にか俺の隣に立ち肩を抱いていた。
「ああ。しっかりと理解できたよ」
またユリアさんか、と。あの人は、もう慣れっこなんだろうな。魔王二人に、精霊王の冒険者登録を受け持ったわけだし。
もう魔王がまた来ようとも動じない強固な精神になっている。
いや、元が強固な精神の持ち主だったからああなれたのかな?
「とりあえず、理解はできたから離れろ。暑苦しい」
「何を言う? 親友としてのスキンシップというものだろ?」
「お前のスキンシップは積極的過ぎるんだよ」
「これが友としては、普通なのでは?」
なんて純粋な瞳だ。魔王なのに、エルジェに負けない純粋な瞳で俺のことを見ている。
「キース。友達同士スキンシップは大事だけど、過度なスキンシップもほどほどにね?」
よくわかっていないキースに対し、クロが優しく教えると理解したようで首を縦に振る。
「承知した。極度なスキンシップは控えよう」
「承知したなら、回した腕を放してくれないか?」
「じゃあ、私が代わりに!!」
キースの腕を無理やり放した瞬間に、エルジェが背後から抱きついてくる。そういえばすっかりエルジェからのスキンシップがなくなったから油断していた……。久しぶりに味わったなこの肌がぞくぞくする感覚。
「最近霊児とのスキンシップ不足だったからね~。充電充電!」
「何が充電だよ、離れろ」
「えへへ~。そんなこと言って~。抵抗しないってことは充電しても良いってことでしょう~。照れちゃって~。このこの~!」
などと俺の頬に自分の頬を擦り付けてくる。最近は、他の仲間達と一緒になって遊んでいたそ、俺は、クロやキースとばかり一緒に居たからなぁ。
俺は寛大だ。今日ぐらいは、勘弁してやろう。少しのスキンシップや、うざさは我慢するのだ。
「ふむ。エルジェはよく、俺はだめと言うのは……これが絆の差だというのか!」
「たぶんあっていると思うけど、違うと思う」
「どういう意味だ?」
「私も気になります。エルジェさんは、私達よりも先に霊児さんと一緒に居たので、絆の差ではないのですか? 他の理由があるなら教えてください! 詳しく!!」
「……また今度」
クロよ、お前も大変だな。色んな知識を詰め込んでいるせいで知らないことを他の人から聞かれるのは。これがよくある知識人としての宿命というやつなのか……。
「で? キース。俺達はこれからギルドに行くが、お前も来るのか?」
「もちろんだ! お前達と共にクエストをこなし、ランクを上げ、絆を深めていくために俺は行くぞ!」
「決まりだな。クロ。移動を頼めるか?」
「わかった。皆、霊児のところにしゅうご~」
「承知した!」
「はい!」
ゆるい声で、集合させる。エルジェは、俺にまだ抱きついたままなので、すでに俺のところに集合していることになっている。
集合したクロ、レリル、キースの三人。
それを見た俺は、正面に立っているクロの頭に手を置いて合図を送る。
「それじゃ、出発しまーす。空間酔いにお気をつけくださ~い」
空間酔い? そんなものがあるのは始めて聞くけど……ノリで言っているのかな?




