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第十話

「威勢がいいようだが、この戦力差で勝てると思っているのか?」


 パチン! と指を鳴らすと兵士達の首に巻かれていた首輪が全て外れる。城内で倒した奴らとは何かが違う。

 いきなり苦しむ素振りを見せたと思いきや、兵士達の体のあちこちが変化していく。背中から、腕の下から、まるで魔物の一部のようなものが生えてきたではないか。

 まさかとは思うが、これは。


「魔物と合成させたのか?」

「そうだ。こいつらは魔物の能力を取り込ませた強化兵士と言ったところだ。そこいらの悪魔と一緒にしてもらっては困る。さあ! 行け!! 奴らを根絶しにしろ!!」


 意気揚々と強化兵士達に命令を下すプロテス。強化兵士達は一斉に飛び出てくる。

 さっき戦った兵士達よりも確かに早いな。


「だけど、そいつらのステータスじゃ、今の俺達には敵わないぜ?」

「ステータス? 何を言っているんだ貴様は」


 この世界にはステータスという概念がないから仕方ない反応といえば仕方ないか。


「おー! ついに霊児はゲーム脳に!」

「いや、そういうわけじゃない。俺には見えるんだよ、あいつらのステータスがな」


 だからこそ、あいつらには負けない。そう確信した俺は、機械な翼を展開する。


「ここは俺が突破口を開く!! お前らは、取りこぼした奴らを攻撃してくれ!!」

「了解!」

「わかりました!」

「任せて」


 俺は、魔力を翼へと注ぎ込んだ。魔力は熱へと変換され、まるでブースターのように噴出する。さあ、いくぜこの技を受けてみろ!

 

「突貫っ!!!」


 炎を身に纏い、猛スピードで突撃するその姿はまさに!


「あ、あれは!」

「知ってるの!? クロ!?」

「ダイフェニックの突撃秘技!!」


 まさに! 火の鳥フェニックス!


「燃え上がれ! 俺の熱き炎!! 《ブレイジング・フェニックス》!!!」


 火の鳥となった俺は、強化兵士達をその突貫力で一気に蹴散らしていく。

 紅蓮の業火に焼かれ、悲痛の声を上げて燃え尽きた。円状に囲まれていたが、俺が半数の敵を蹴散らし、プロテスは驚きのあまり動揺を隠せないでいる。


「どうだ! これが熱血!! 燃える闘志!! 正義の炎はどんな悪をも焼き尽くす!!!」


 熱血している俺は、テンション高めの声を上げる。この武装は、己を強化すると同時に、内に眠る闘志を焚きつける。

 普段冷静でいる者も、この武装を纏うことであっという間に騒がしい人に。

 これを熱血モードと言う。

 熱血武装ダイフェニックスの主人公熱士は元々熱き闘志の持ち主だったが、これを纏うことでさらに熱く、正義に燃える性格になった。

 原作通りなのだ。この武装の性能は。


「なんだか霊児が熱血しちゃっているけど。私もやることはやるよ!! エルジェ・レイ!!」

「私もです! 大地よ!!」


 残りの強化兵士をエルジェがレリルが処理していく。 

 いくら強化されていても悪魔は悪魔。エルジェの【聖天術】は効果抜群だ。レリルの【精霊術】もかなりの効果を発揮し、強化兵士達を圧倒している。


「どうだ! プロテス!! お前の自慢の強化兵士達は俺達には敵わないようだぞ!!」

「そのようだな。……だが」

「ん?」


 怪しく笑みを浮かべたと思いきや、目の前からプロテスが突如として姿を消した。どうたら空間移動をしたようだ。

 いったいどこから現れる?


「後ろ!」

「しゃあっ!!」

「ぐっ!?」


 だが、こっちにはクロが居る。クロの正確な指示で、俺は迷わず背後へと攻撃をする。

 鎧脚で素早く背後から襲ってきたプロテスの剣を受け止めた。


「やっぱり空間魔法は厄介だな。でもこっちには、お前よりも何倍も実力が上な魔王様が居るんだぜ?」

「やはりクローナ様が居る分、こっちが不利か。……ならば!」


 何かを思いついたのか、また姿を消す。

 今度はどこへ行った?


「クローナ様から片付けるまで!!」


 やはり俺ではなく、標的をクロへと変えてきたか!

 クロのとの距離がかなりある。だが、助ける必要はない。今のクロだったら、一人でどうにかできると信じてるからな。


「無駄!」


 背後を取ったつもりだったプロテスだったが、クロのほうが一枚上手だった。空間魔法を使い、振り下ろされた剣の刃を消す。

 それによりプロテスの攻撃は空を切る。そこから即座に、魔法による追撃。魔力の塊は、プロテスの腹部を完全に捉えて、数メートルほど吹き飛ばした。


「さすがは、クローナ様です。ですが……やはり攻撃系の魔法は、あまり得意ではないようですね?」

「むっ」


 しかし、それほどダメージはなかった。身の纏った鎧に少し痕がついた程度。

 プロテスは涼しそうな表情で笑っている。


 クロは、昔から膨大な魔力はあったが、攻撃系の魔法が不得意だった。今となっては空間魔法があったからそうであったと理解できなくもない。

 空間魔法は、強力な魔法系統なために膨大な魔力を消費する。 

 一度、発動させるだけでも初心者で上級魔法を扱うようなものなのだ。


 だが、そう考えると二年もの年月で空間魔法を習得したであろうプロテスもそうだ。ここまで、数える程度だが、かなり空間魔法を使っている。

 クロのような膨大な魔力を持っているわけじゃない。ゼルファスの記憶が確かなら、プロテスの魔力はそんなにないと思った俺は【ステータス眼】でプロテスの魔力を確かめる。……なるほど。もうほどんど魔力はないようだな。


「ふう。それにしても、空間魔法は魔力の減りが激しいですね。クローナ様?」

「私はまだ余裕」


 うん、その通りだ。プロテスよりも空間魔法を使っているはずだが、クロはまだまだ魔力に余裕がある。


「そのようですね。私はもう一回程度の魔力しか残っていません」


 すでに【ステータス眼】で確認済みだ。

 ならば、ここで一気に勝負をつける! 俺は、一斉に襲ってきた強化兵士達を蹴散らし、プロテスへと駆ける。


「そういうわけですので」

「俺の熱き炎の拳で!!」


 熱き闘志を拳に込め、プロテスに叩きつけようとするが。


「逃げさせていただきます」


 清々しいほどの逃げだった。残り少ない魔力を使って、プロテスは逃げ去って行く。そんな清々しい逃げに呆然と立ち尽くす俺とクロ。


「あれ、プロテスは?」

「残党全てを倒し終えたのですが、もしかして倒したのですか?」

「そうなの!? じゃあ、これで帰れるってこと!?」


 離れた場所で強化兵士達と戦っていたエルジェ達が戻ってきた。プロテスの姿が見えないことから、倒したと勘違いしているようだ。

 大喜びをしているところ悪いが、違うんだと首を横に振る。 


「クロ。追えるか?」

「もち」


 プロテス、俺達から逃げれると思うなよ。お前がやってきた罪の数々……その身で償ってもらうぞ!



・・・・・



「ふう。やはり、まだ空間魔法を扱うのは魔力不足のようだな。だが、今回の戦いで得た情報で私はもっと強くなれる。今回は、逃げてきたが次会った時は必ずや!」

「次会った時はなんだって?」

「なにっ!?」


 グリド城から遠く離れた平原でプロテスは一人笑っていたので、俺は背後から声をかける。どうやらこの驚きようから察するに、プロテスは信じられないものを見たような驚き方だ。


「なにじゃないだろ。こっちにはお前より空間魔法に長けている魔王様がいるんだぜ?」

「空間の歪みから移動場所を探知するのは容易だった。まだまだ、つめが甘い」

「さあ、どこへ逃げようと無駄だよ!」

「往生際が悪いですよ」


 驚くプロテスを囲むように俺達は立ち塞がる。

 逃げ場がなくなりついに観念したのか、ふっと笑う。


「逃げたのではない。ここで貴様らと決着をつけるために、わざと逃げたフリをしたのだ! さあ、ここからが本番だ!!」


 完全に逃げてたじゃないか。もうガン逃げだったから、俺とクロは唖然したぐらいだぞ。


「そうか。だったら、こっちも本気で行くぞ!! クロ!! 手筈通りにいくぜ!!」

「うん!」

「消えろ!!」


 もうほとんど残っていない魔力を攻撃魔法として飛ばしてくる。

 しかし、勢いがないうえに少し小さい。


「こっちだ!!」

「ぐああ!?」


 俺は一瞬でプロテスの背後へと移動し、そのまま拳を振るい上空へと吹き飛ばし。


「今度は私達が!!」

「いきます!!」

「ごはあッ!?」


 エルジェとレリルは空中へと移動し、プロテスを閃光で地上へと叩き落す。


「そして、最後は……この熱き正義の炎が宿った拳でっ!!!」

「終わり」


 そして、勢いよく落ちてきたところへ、轟々とした燃え上がる炎が宿った右ストとレートを豪快に叩きつけた。腹部へと受けたアルモストは、くの字となって吹き飛ばされていく。

 このままだとどこまでも吹き飛んでいくので、クロが空間を操り、地面にぶつけた。

 大きなクレーターができるほどに叩きつけられたプロテスはピクピクと痙攣しながらも、口を開く。、


「ま、まさか……こんなにも高速で空間移動をさせる、なんて。次元が、違い……すぎ……る」


 そのまま倒れこんでしまった。プロテスも理解していたようだな。俺達は、クロの操る空間移動で死角に移動しプロテスを攻撃していた。

 これほどの速さで空間移動をさせるクロの実力は本物だ。


「終わったな」


 熱血武装を解除し、空を見上げるクロの隣へと立つ。


「うん、終わった。これで……お父様、少しは安心してくれるかな?」

「もちろんだ。こんなにも成長した娘を見て、父親が喜ばないわけがないだろ?」

「……うん」

「おーい! 終わったんだったら、早く帰ろうよー! お腹減っちゃったー!!」

「そういえば昼を食べる途中でしたもんね。意識したら、私も」


 いい雰囲気だったのになぁ。そんなことを言われると、俺も腹が鳴ってきたじゃないか! まあ事実なんだから、しょうがないと言えばしょうがないが。


「お前らなぁ」

「だって~」

「す、すみません。ですが、お腹が減るのはしおうがないといいますか。地球の食べ物を味わったからには、その」

「そうだそうだー! 早くカップ麺食べたいー!!」


 子供か! 仮にも俺より年上なんだから少しは……と、エルジェに呆れているとクロが俺の服の裾を引っ張ってくる。 


「じゃあ、遅いお昼を食べに帰ろう。ね?」

「そうだな。じゃあ、帰るか! 昼飯を食べるために、地球へ!!」

《おお!!》


 一件落着したところで、三人仲良く地球へ帰還するのだった。

次回第三章完結!

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