表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/45

第八話

「なるほど、そんなことがあったのね」

「すみません。俺が油断していたばかりに!」

「り、霊児のせいじゃないよ!」

「そうですよ! 私達だって、油断していましたし。まさか地球まで追ってくるなんて」


 クロがプロテスに誘拐されたことを大急ぎで戻ってきたリーさんにリビングで話した俺は、悔しさを噛み締める。

 それを慰めてくれるエルジェとレリルも同様に、悔しさが表情に出ていた。

 俺が、もっとしっかりしていればプロテスがこっちに来ることを予想できていたはずなんだ。

 今、思い返すだけで悔しさが湧き出てくるが、悔しがっているだけじゃ状況は変わらない。俺は気持ちを切り替えてリーさんと対峙する。


「それで、プロテスの行き先ですが、おそらく魔王城だと思うんです」

「なるほどね。彼は、クロちゃんの魔王の血統が目当てだって話だったものね」

「でも、もしかしたらプロテスが個人的に建設した城という可能性もあります」

「そうね……だったら、一度調べてみましょう」


 調べる? どうやって? 俺達が首を傾げていると、リーさんは魔力を練り上げ俺達との間に魔力の鏡のようなものを生成させた。


「これは【魔の見鏡】と言って、自分と関わりのある人が今どこに居るのか、どんなことをしているのか見ることができるものなの」

「す、すごい! そんなものがあるんですね!!」

「じゃあ、その鏡があれば覗き放題ってこと?」


 確かにそうだが、そういうことじゃない。


「なるほど。その鏡で今クロがどこで何をしているのかを確認できるってことですね」

「ええ、そうよ。ただ、相手が別世界に居るから成功するかはちょっと不安だけど。これで、クロちゃんの居場所を確認して、私が空間魔法であなた達をそこへ送るわ」

「やはり、使えるんですねリーさん」

「当たり前よ。これでも全ての魔法を会得した賢者よ? ただ、クロちゃんほど強力じゃないから、別世界だと少し時間がかかるうえに一回きりよ。私の今の魔力だとそれが限界。つまり一方通行。転移した後は……クロちゃんと一緒に無事戻ってくること。いいかしら? 三人とも」


 俺達の決意を確かめるために、リーさんが問いかけてくるが三人とも即座に首を縦に振る


「もちろんです! 必ず、クロと一緒に。四人で無事に戻ってきます!」

「まだパーティーゲームの途中だしねぇ。もっともっとクロとは仲良くなりたいし!」

「こっちの世界の知識をまだ全て頭に入れていません。それに、クロさんにも教えていただきたいことが山ほどあります」

「だから、俺達は必ず戻ってくる! リーさん、お願いします」


 俺達の決意。

 それを聞いたリーさんは、静かに頷き手を構える。すると、青白い光の粒子が【魔の見鏡】に集束していき、映像が映し出される。

 

 映し出された場所はグリード城。その中にあるクロの自室。

 久々の実家。そして、自分のベッドだと言うのに、クロの気分は最悪だろう。それもそのはずだ。これから自分の身に何をされるのかわかったもんじゃない。

 それに、空間転移で逃げようとしても、彼女の腕にはめられている手錠のせいで。


「あれは【魔封石】で作られた手錠ね。魔法の力を封じる効力があると言われているものだわ。さすがに、抜かりはないってところね」


 しかし、場所はわかった。さっそく転移させてもらおうと思ったところで、クロの部屋に入ってこようとする人影を確認した。

 クロも、それに気づき警戒心を高めるも。


『クローナ様。ご無事ですか?』

『よかった……まだ、無事のようですね』

『み、皆』


 入ってきたのはクロが小さい頃から一緒に居て、お世話してくれた使用人の女性と、グリドさんを尊敬していて、いつも遊んでくれた兵士達だった。

 どうやら部屋に待機していた兵士なのだろう。


『さあ、クローナ様。お手を』

『え?』


 使用人が、クロの手を取り、鍵を取り出す。そして、黒に取り付いてる手錠を解除した。


『これで、クローナ様は魔法を使えます。さあ、早くお逃げください』

『プロテスに気づかれる前に』

『で、でも、皆は?』


 自由になったが、クロには不安が走る。もし自分を逃がしたことがばれたりしたら、何をされるかと。


『大丈夫でございます。これでも二年間プロテスを誤魔化してきたんですよ?』

『これぐらい余裕です』

『クローナ様は、わたくし達の心の拠り所です。クローナ様に何かあったら、お亡くなりになったグリド様に申し訳ないです。ですから』

『で、でも。でもっ!』


 皆からの笑顔。その笑顔は、さらにクロを不安させる。

 ここで、自分だけ逃げたら……そんな不安で、いつまでも逃げようとしない。

 そこへ。


『おやおや? どうしたのかな? ちゃんと警備をしていろと言ったはずなのだが』

『しまった!』

『もう気づかれてしまったのか!!』


 部屋の外には数人の兵士と、プロテスの姿があった。

 予想よりも早い戻りに驚きつつも、クロを護ろうと前に立つ。使用人もその後ろで、クローナの盾になっていた。

 その姿を見たプロテスは笑い出す。


『あーっはっはっは! それで、護っているつもりか? お前達ちっぽけな存在がいくら束になろうと、無駄なのだよ!』


 馬鹿にしたような笑みを浮かべながら指示を出すと、後ろに控えていた兵士達は陣形を取り、じりじりとこちらに迫ってくる。

 このままでは、確実にやられる。

 数が違う。実力も違うだろう。


「霊児!!」

「ああ! リーさん、お願いします!!」

「ええ。わかったわ、それとこれも持って行きなさい」


 先ほどまで見ていた【魔の見鏡】を渡してくれる。それを受け取った俺達は、即座に作り出された空間の歪みに駆け込んだ。


「真っ直ぐ進みなさい! 途中で横になんてずれたら出られなくなっちゃうわよ!! いってらっしゃい!!」


 リーさんの見送られ、俺達は突き進む。クロの時は、本当に一瞬で移動できたのだが、リーさんの場合は捻じ曲がった空間を進むような感じだ。

 本来はこれが普通。クロのように別世界を一瞬で転移できるのは、本当に特殊で強大な魔力を保持しているからこそなのだろう。その中を俺達は走り出す。


『クローナ様! お早く!』

『今だったら、クローナ様だけでも逃げれることができます! 我々のことはお気になさらず。さあ!!』


 だが、クロは逃げようとしなかった。このままでいいのか? クロは目の前で自分を護ろうと必死になっている兵士達を見て、迷っているように見える。


『見上げた忠誠心だな! だが、いくら逃げても無駄なのだよ。私は空間魔法を手に入れている。どこへ逃げようともすぐに見つけ出してみせる。さあ、クローナ様。今すぐ、このちっぽけで愚かな者どもを殺して、お助けしますので。お待ちを。やれ!』


 その指示で、兵士達が攻撃を仕掛ける。

 なんとか防いだが、すぐに攻撃を食らう。必死に抵抗して見せているが、数が違いすぎる。クロ側の兵士が二人に対し、プロテス側の兵士はその倍以上。

 加えて、陣形を組んで攻撃をしている。


『こんなの……やだ。私は……!』


 ぎゅっと拳を作るクロ。兵士達の攻撃が今まさに、トドメの一撃を入れようとする瞬間。

 クロは、決意の表情で目を見開く。


『そんなの! 私が許さない!!!』


 瞬間。

 攻撃が当たるかと思われた槍の切っ先が……消えた。何が起こったのか誰にもわからない。いや二人だけわかっている者がいる。

 空間魔法を操れるものだからこそわかること。

 切っ先は空間を歪ませたことで、別空間へと消えたのだ。今まで、ある一部だけの空間を操り、こんなことをしたことがなかったクロだったが。


『く、クローナ様?』


 ぐっと、足に力を入れて、立ち上がる。

 その表情はいつものやる気のなく、怯えたようなものとは違う。

 決意した強い闘志が宿ったものだ。


『もう誰も、殺させない! 私が……魔王クローナ=ルルフェルズが護るから!!』


 ここに、祭り上げた魔王ではなく。

 本当の意味での魔王クローナ=ルルフェルズが誕生した瞬間だった。そんな立派になったクロの姿を見て、俺達は嬉しそうに微笑む。


「霊児さん! 見えてきました!」

「ああ。いくぞ! クロのところに!!」

「待ってろよー! プロテス!! 今すぐ天罰を下しちゃうんだから!!」


 やる気十分のエルジェが我先にと、光へと突撃していく。俺達も、遅れまいと光へと。クロの下へ飛び込んでいく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=833224931&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ