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第四話

「おぉ? おおお!? うわあああ!? コースアウトー!?」

「エルジェさん! 落ち着いてください! まだ逆転はできるはずです!!」

「クロ! お前、また腕を上げたな!」

「伊達に、ニートになっていない」


 地球に戻ってきた俺は、現在エルジェ、レリル、クロと共に地球の娯楽をエンジョイしていた。エルジェは、テレビゲームでオンライン対戦でレースゲームをし、慣れない操作で何度もコースアウトや敵に攻撃されながらも全力でプレイしている。


 その隣で、漫画を読みながらレリルがエルジェを応援している。ちなみに、レリルが読んでいるのは勇者が世界を救う王道ファンタジーものだ。

 全巻で25冊もあり、今は八巻目。

 そして、俺はクロと一緒に携帯ゲーム機で格闘ゲームで対戦中。ゼルファスもクロと対戦していたようだが。


 記憶通りなら、またクロは腕を上げている。

 俺も格闘ゲームはやったことはあるが、クロの腕は相当なものだ。もしかしたら、大会に出たら優勝とかできるんじゃね? と思うぐらいに強い。

 相変わらず、対人恐怖症のせいでエルジェ達とは距離をとっている。

 そんなことをしていると。


「皆ー! お風呂が沸いたわよー! 入っちゃいなさーい!」


 リーさんからの呼びかけだ。チラッと時計を見ると、もう十八時を回っていた。やっぱり生前と同じでゲームをしていると時間が過ぎていくのがわからなくなっていくな。この感覚は、久しぶりなようなそんな感覚だ。まだ死んで一ヶ月ちょっとしかたっていないんだけどな……。


「誰から入る?」

「霊児からでいいよー。私はこのレースを終わらせるから!」

「私も後でいいです。ちょっとこの先の展開が気になるので」

「そっか。じゃあ、クロ。いくか?」

「うん」


 ゲーム機をスリープモードにして、俺達は一階の風呂場へと向かった。そして、そのまま脱衣所で服を脱ぎ捨て、湯気が立つ風呂場へと入る。


「よーし、頭を洗うからなぁ」

「は~い」


 ……ゼルファスよ、なぜこんなことまでお前はしているんだ。クロが言うには、父親と一緒に入っているみたいで落ち着くとのこと。

 いやさ。確かに、父親みたいなことはしているのかもしれないけど。クロだって、もう十二歳なんだ。さすがに一人でやらせるべきだと思うんだけど。いつまでも甘やかしていたら、クロだって成長しないんじゃなかろうか。 

 言っておくけど、俺は服を着たままだからな? さすがに、十二歳の女の子と一緒に風呂に入るのはいかがなものかと。


 俺は頭を洗ったら退散する。

 髪の毛をお湯でよく濡らし、シャンプーを手へと噴射。最初はよく馴染ませるように動かし、泡が立ってきたところでちょっと強めに動かす。


「痒いところはないかぁ?」

「なーい」

「そうか。よーし、そろそろシャワーで流すぞー」

「うい」


 よく洗ったところで、シャワーで流していく。泡が目に入らないように目を必死に瞑っている姿は微笑ましい。全て流し終わったところで、タオルでよく拭き取る。

 ゼルファスの記憶を頼りに、よーく水気を拭き取って行く。あまり乱暴にせず、髪を撫でるように。


「よし、終わったぞ。それじゃあ、後は自分で」

「体は?」


 と顔だけこちらに向けてくる。


「……自分でお願いします」

「むぅ。わかったぁ」


 そんなに頬を膨らまさないでください。十二歳とはいえ、女子の体を直視しながら洗うなんて思春期真っ盛りな俺にとっては無理な話です。


「ありがとうございます」


 不安そうな表情で、自分でボディーソープをタオルに出して、泡立て洗っていく。

 ふうと、俺は安堵の息を漏らしながら壁に背を預けながら、天井を見上げる。ゼルファスもさすがに体までは無理だったらしい。

 それと、どうして俺はここから立ち去らないのか。それは、クロが体を洗った後に風呂へと浸かり、上がって体を拭き服を着るまで、俺は居なくちゃならないからだ。


 決して俺は幼女には手を出したりはしない。

 クロはゼルファスと融合している俺に対して、警戒心が全然なくいつも通りにしているんだろうけど、ゼルファスのような紳士的で平常心をずっと保っていられるような男じゃないんだ、俺は。

 こうして待っているだけでも、きついものがある。これが女子に耐性がない少年の性ってやつなんだなぁ……はあ。


「うんしょっと」


 どうやら、体を洗い終わったようで、クロは風呂に浸かった。

 あぁ、湯気がすごいな。これなら、健全なシーンになるだろう。湯気さん仕事を頼みますよー。 


「ねえ、霊児」

「ん? どうした」


 天井を見上げていた俺へ風呂に浸かっているクロが話しかけてくる。風呂に浸かっているので、裸は見えない。なので、なんとか顔を見ることができる。


「霊児は……絶対いなくならないよね?」


 不安そうな声だ。もしかしたら、ゼルファスがいきなり姿を消して、赤の他人である俺みたいな奴と融合したなんてことになったから不安になったんだろう。

 そんなクロを安堵させるために、俺は優しく微笑む。


「当たり前だ。お前を一人なんかにはしないさ。それに、ゼルファスだってお前を裏切ったわけじゃない。ちゃんと一緒に居るさ。だから、安心しろ。お前は……俺が、いや俺達が護ってみせるさ」

「……うんっ」


 どこか嬉しそうな、それでいて若干震えた声で返事をするクロ。

 そうさ。絶対一人にはしない。

 ゼルファスとの記憶を共有した時に知った。クロがどうして対人恐怖症になったのか。それを知っているからこそ俺は。




・・・・・




「おーい。風呂上がったぞー」

「うわああ!? また甲羅があぁ!?」

「エルジェさん。また、あのプレイヤーですよ! もしかして狙われているんじゃ!?」

「ぐぬぬ! こうなったら、徹底的に爆走してやるー!!」


 風呂から上がった俺達は部屋に戻るとすごい剣幕でレースゲームをしている天使とそれを応援している精霊王の姿を見た。

 こいつら、どれだけ熱中しているんだ。もはや異世界人なんて言えないほどの馴染みっぷりだな。どうやら聞こえていなかったようなので、もうちょっと声を張り上げる。


「おーい! 風呂上がったぞー!」

「待って! ちょっと待って!! 今、忙しいから! 今、いいところだから! お風呂は後で!! あっ! アイテムゲット! いいの出ろぉ! 出ろー!!!」


 ……子供か! レースゲームに熱中しすぎて、エルジェは風呂に入ろうとしない。だが、レリルはそれほど熱中していなかったらしく、こっちへと近づいてくる。


「それでは、私が入ってきます」

「おう。まったく、あのアホ天使はどれだけ熱中しているんだよ」



 呆れて深い息を漏らしながら頭を掻く

 そこで、最初から見ていたレリルが説明をしてくれた。


「実は、あるプレイヤーから何度も邪魔をされっぱなしで。それでも、エルジェさんは負けじと爆走していたのですが。やっぱり、邪魔をされまして」

「哀れな天使だ……」


 その後、俺はクロを膝の上に乗せながらエルジェのプレイを観賞していた。本当に同じプレイヤーから邪魔ばかりされており、ちょっとしたミスでコースアウトをしたりして、中々トップになれないでいた。

 エルジェの叫び声と、クロが一人で今日届いたゲームソフトを黙々とプレイしている音を聴きながら時が過ぎていくのを待った。


 そして、レリルが上がってきて、後はエルジェだけったので、無理やり電源を切って風呂へと向かわせる。風呂に向かうエルジェは納得いかなーい! と吐き捨てていた。まあ、あれだけ邪魔をされればそう言いたくなるわな。


 よほど悔しかったのかエルジェは、風呂から早々に上がりまたゲームを始めた。

 しかし、さっきまで邪魔をしてきたプレイヤーとマッチングすることはなかった。おそらく別のところとマッチングしているか、満足したのでゲームを止めたのか。

 いずれにしろ、不機嫌そうにしながらも、悔しさをバネにトップへとランクインを果たした。


 終わると機嫌が回復したエルジェは、レリルと一緒に深夜まで漫画を読み耽り、丁度いい時間帯に就寝をするのだった。

 部屋分けは、クロの部屋に俺とクロ。

 リーさんの部屋にはエルジェとレリルが。実際、レリルは黒の部屋がいいと言っていたのだが、リーさんに無理やり連れてかれたんだ。

 

 あの時のリーさんの目は、まさに幼女……獲物を捕まえたという野獣の如き眼光。

 そして、その獲物になったレリルの怯えようは今でも忘れられない。

 エルジェが居るから大丈夫か? ……いや、なんだか逆に不安だな。また仲が良さそうにしていると勘違いして笑顔で放っておくだろう。 


 さて、これまたいつも通りに俺とクロは一緒にくっ付いて寝ることになったが。どうやら、ゼルファスの熱を操る魔法のおかげで丁度いい温度で寝れるために快適なんだとか。

 周りに温度に合わせて体温を変える。

 変温動物かな? などと、思いながらぴったりと俺にくっ付いたクロは気持ちよさそうに寝息を吐きながら寝ていた。


「……おやすみ、クロ」


 俺もクロの可愛い寝顔を見ながら髪の毛を撫で、目を瞑った。

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