表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
荒沢さんは異世界でも逞しく生きて行く  作者: 灰色 人生
第一章 初めての異世界
4/17

〈4〉荒沢さん冒険者組合について学ぶ

 翌朝


 窓から差し込む日差しを受けて目を覚ます。



 何とも、かっこいい寝覚め方だ。

 流石は荒沢さん。起き方も隅に置けないぞ。


 昨日は疲れてそのまま寝てしまったが、このベッドは思ったよりも材質が良く疲れが取れた。


 場合によっては、魔法で低反発マットでも作ろうかと、思っていたが必要なさそうだ。



 ベッドの両隣を見てみると、だらし無く涎を垂らして裸で寝ているラクスと、寝ている時も上品な此方も裸であるクイーンが寝ていた。


 二人とも裸なので情事があったかと誤解される光景だが、荒沢さんは別に精霊には性欲が湧かない健全な日本男子だ。



 どちらかと言うと、ペットに近い感覚で二人には接している。


 昨日は夕食を食べずに寝たので、腹が空いた。


 この世界の食べ物をそう言えば、まだ食べた事がないと今更長に気付く。


 涎を垂らして寝ているラクスにチョップをかます。



「ぐえっ!?」と乙女にあるまじき奇声をあげて飛び起きるラクスを尻目にクイーンの肩を揺さぶり起こす。



「ちょっ!?私にはチョップをかましといてクイーン様は何で普通に起こすのよ!?もしかして差別なの!?私が上位精霊でクイーン様は精霊王だからなの!?」とヒステリックを起こしたみたいに喚き散らす目障りなラクスに落ち着けとチョップをかます。



「ぐぅ〜。わかったわよ。静かにするからチョップはやめてよね。意外と威力があって痛いのよ」とどうやら反省してくれたようだ。


 荒沢さんのチョップは万能だ。



「うぅ〜ん。朝から騒がしいのぅラクスよ。マスターと朝から戯れるのは構わんが静かにして欲しいのぅ」と欠伸を噛み殺しながら起きるクイーン。


「おはようございます。クイーン様」


「ああ、おはようラクス。だが同じマスターの契約精霊じゃクイーンでいいんじゃよ」と少しばかり年寄りくさい喋り方だ。



 まあ実際この中で一番の年長者でもあるのであながち間違いではないが。



 そんな二人を他所に荒沢さんは今日もかっこいいポーズの練習に余念がない。


 一通りした後朝風呂に入る。


 ラクスとクイーンも入ると言ったのでまた3人で揃って入る。


 幸い風呂は大きくて3人でも余裕がある。










 ◇ ◇ ◇



 朝風呂を満喫した後は昨日と同じ格好になり一階にある食堂に降りて行く。


 降りる前にラクスとクイーンには朝食を与えたので文句は言わ無いだろう。


 再びペンダントと剣に変化した二人を装着して階下を目指して部屋を出る。



 この最上階は貴族用だそうで部屋は風呂付きの3部屋しかないので現在利用しているのは荒沢さんことグラウだけなので誰も居ない。



 食堂に降りると女将のハブマと店主のドトリコに挨拶をする。


「あら、おはようございます。グラウさん」


「ああ、おはよう。早速で悪いが朝食を貰えるか?昨日は食べ損ねて腹が空いているんだ」



「すぐにご用意致します」




 テーブルに着いて待つこと5分後。


 給仕が運んで来た朝食を食す。


 この兜は優れもので脱がなくても口の部分を開口出来る優れものだ。



 用意されたのは何の肉がわからないが美味しそうな分厚いステーキ肉に野菜が盛り沢山のサラダに少しばかり硬いが十分柔らかいパンにスープと朝からボリュームたっぷりだ。


 飲み物は果実水を頼むがあまり冷えて居ないので魔法で冷やして飲む。



 そうすると給仕の少年が驚いた顔をして居たので理由を尋ねてみる。



「ん?どうした少年」と爽やか系を意識して声をかけると「えっ!?あっ!失礼しました。いえその果実水を魔法で冷やして飲む方を初めて見たもので。大抵の魔法使いの方々は魔力を温存しますので……その…言いにくいのですが、そのように魔力の無駄遣いとも言える使い方はしないものでして」と説明する。



 ふーん。特に何とも思わずそうなんだ。と思うだけだ。



「冷やすアイテムは無いのか?」と聞いてみると「確かあったかと思いますが、中々見つからず大抵は迷宮都市で探索者の方々が発見されますが競売にかけられて大抵は貴族の方が手に入れますのでこの様な辺境までは中々流れて来ませんね」と説明してくれた。



 そこで気になる単語が二つあった迷宮都市と探索者だ。



 二つとも前の世界のアニメやゲーム、小説などの知識で何と無くはわかるが合っているかの確認も兼ねて質問する。


 流石は荒沢さんは慎重派だ。



「迷宮都市と言うのは迷宮を中心に栄えた都市で間違いはないか?」


「ええ、そうですよ。迷宮は場所によって内部の造形が異なりますが基本的には10階層以上ありまして下に降って行くほどに魔物の強さも上がって行きます。そして迷宮内の魔物は外の魔物と違い強さも同種族であっても一段階強くなっているそうです。そして倒した魔物は自動的にアイテムをドロップするそうです。そして迷宮内で死んだ探索者は一定時間放置されますと装備だけ残して跡形も無く消えるそうです。何でも迷宮も巨大な魔物で死んだ探索者を養分としているとも言われて居ますが研究者じゃないのでそこのところはあまり詳しくは知りませんね」と丁寧に説明をしてくれる。



「それで探索者とは何だろうか?」



「ああ、探索者は迷宮に入る冒険者でランク6以上の資格が無いと迷宮内に入れないのですよ。あまりにレベルが低い者達が過去に迷宮に挑戦してそして死んでしまって迷宮が急激な成長を遂げて暴走を起こして迷宮内の魔物が地上に溢れかえり一都市が過去に滅亡したのがきっかけで生まれた制度ですね。なのでランク6以上である程度迷宮に付いての知識が無いと探索者の資格は得られないそうですよ」とこれまで説明してくれた給仕の少年にお礼がわりに銀貨2枚渡すと大層喜んだ。


 銀貨2枚もあればこの宿の様な高級店に一泊は出来るので(食事付きだと別途掛かる)普通に過ごせば1週間は飲み食いに困らないだろう。


 高級店に勤めているだけあってこの給仕の少年もそこらの店よりも給金は高いが決して豪遊出来る程ではない。



 冒険者は一攫千金を夢見る少年少女が多いが現実は甘くなく高位のランクになれるのはほんの一粒限りの人間だ。


 荒沢さんの所持金額はまだまだ余裕がある。


【 所持金 】

 50,458G→金貨

 45,132S→銀貨

 251C→銅貨



 銅貨100枚で銀貨1枚になり銀貨10枚で金貨1枚で金貨100枚で大金貨1枚になるらしい。



 大金貨は大手の商人や貴族以外は高位の冒険者などしか使わず大金貨以上の硬貨もあるらしい。



 現在のグラウこと荒沢さんの所持金額を金貨で表すと金貨54,971枚と銅貨55枚である。



 この金額だとこの国の王都の一等地に屋敷を建ててもなお余るぐらいだ。



 今の所使い道は立って居ないがいつ必要になるかわからないので考えて使おうと決めている荒沢さんは流石だ。



 閑話休題………



 朝食を食べ終わり女将のハブマと店主のドトリコに挨拶をしてから冒険者組合を目指す。



 そう言えばと受付で渡された冒険者組合の規則などが書かれた冊子をまだ読んで居なかった事を思い出した。



 なので途中にあったカフェによりコーヒーがあったのでそれを頼み優雅にコーヒーを飲みながら冊子を開いて読む。



 内容は当たり障りのない事から重要な事まで色々と書かれて居たが大まかに纏めると以下の通りだ。



 〈1〉冒険者組合は冒険者同士の諍いには関与しない。*ただし冒険者組合の利益を損ねると判断した場合には介入し適切な処置を施す。



 〈2〉冒険者組合に所属する冒険者が犯罪行為を行った場合冒険者組合から除名処分をする。*ただし罪の重さにより強制労働など便宜を図る場合もある。



 〈3〉冒険者組合は税金を肩代わりする代わりに月に最低でも3回依頼をこなす事を義務付ける。依頼をこなさなかった場合は税金を徴収する。*ただしランクにより異なる。怪我や病気などで依頼を受けられない場合は要相談。(依頼料から予め税金分が抜かれた金額が提示されている依頼料だ)



 〈4〉ランク7以上は昇格試験が行われ合格しない場合はランクは昇格しない。



 〈5〉 緊急依頼の対象のランクの冒険者は受ける義務が生じる。拒否する事も可能だがペナルティーが発生する。


 だいたい大事そうなのはこれぐらいだな。他にも色々とルールがあるがそれは追々確認していけばいいだろう。



 そう言えば後で聞いた話だが北門の方面は深い嘆きの森がある為に優秀な兵士のみが配置されていると聞いたのであのゴリ男とヒョロ男の二人は優秀な兵士らしいな。


 鑑定してステータスを見ていれば良かった。




 さて、冊子もある程度読んだ事だし会計して冒険者組合に行くか。







 ◇ ◇ ◇


 会計を済まして冒険者組合の前へと辿り着いた。


 朝早くに来た為か昨日よりも冒険者の数が多く辟易とする。



 まるで前の世界での通勤ラッシュの為に混雑した駅のホームの様だ。


 しかも前の世界よりもむさい男や筋骨隆々な男が多く更にシャワーを浴びてないんじゃないかと疑うぐらいに臭い奴もいる。


 女性も女性で見事なシックスパックを持つ女丈夫が多く街を歩くそこらの男性よりもよっぽど筋肉があり大柄だ。



 中には華奢な女性もいるが比率としては少ない。



 普通異世界転移物にあるような美少女や美女が少ないし鉄板の受付嬢は性格がアレなのでお近付きになりたくないし今の所ヒロインと呼べるのかいや、ラクスとクイーンはペット枠だから違うな。



 まあ嘆いて居ても仕方がないか。


 今日の目的は簡単な依頼の達成とあの6人グループについてだ。



 多分あの6人グループは勇者として召喚されたので大々的に布告されているだろう。


 しかも同じこのファースト王国である為にこの様な辺境にも伝わっているはずだ。




「さて、行くとするか」覚悟を決めてウェスタンドアを開き冒険者組合の中へと入って行く。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ