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荒沢さんは異世界でも逞しく生きて行く  作者: 灰色 人生
第一章 初めての異世界
3/17

〈3〉荒沢さんは冒険者組合に加入する

 冒険者の街アドベンチャーはその名の通り行き交う人々の内実に五割は冒険者が通りを歩いている。


 そう言えば他の門にはランク3の鑑定の魔道具が置いてあり身分証明書と並行して確認するらしいが、鑑定の魔道具は高価な(魔道具全般は高価であるが鑑定用はさらに高価)アイテムである為に基本的に依頼で外に出る冒険者以外に使用する者がほぼ皆無な為に深い嘆きの森方面の門には設置されて居なかったらしいが、他の門は常備しているとの事だ。



 通りを歩く人々を見ると如何にもベテランな冒険者や駆け出し感漂う少年少女の冒険者達。


 中には一流の雰囲気を出す鋭利なオーラを漂わせる双剣使いなどなど沢山の冒険者の姿がうかがえる。



 その中を肩で風をきる様に冒険者組合を目指して進む立派な鎧に漆黒の闇を纏うマントをした偉丈夫が道の真ん中を堂々と進む。


 その正体は我らが荒沢さんだ!


 通り過ぎる冒険者を鑑定でチェックして自分よりも強者が居ないか確認して行く。


 もしかしたらアイテムなどでステータスを隠したり偽ったりして居る人物もいるかも知れないが此方にはランク10(アイテムにもランクがありランク10が最高でありランク1が最下位である。ランク10のアイテムはランク10の魔物からしかドロップしない)の看破のアイテムがあるので同じランク10のアイテムでもない限りは何でも看破出来る。



 行き交う人々、特に冒険者は荒沢さんを注意深く観察する。



 流石は荒沢さん初めての異世界で早速注目の的だ。



 荒沢さんはこの街でする事は以下の三つである。



 その一・冒険者として地位を固める。


 その二・自分と同じく召喚された筈のあのリア充達の動向。


 その三・ハーレム要員の確保


 と荒沢さんは何とハーレム要員の優先度を三番目に位置している。


 これは荒沢さんにしたら苦渋の決断であり一時間程悩んで決めた末だ。



 ヒョロ男に言われた通りに大通りを右折して見ると周りの建物よりもふた回りも大きい立派な建物が見えてきた。


 確かに看板には剣と翼が描かれている。



 やはりここは定番通り酒場が併設されているのだろうか?



 両開きの西部劇によく登場するウェスタンドアを開けて中へと入る。


 すると中にいる冒険者達がさり気無く此方の防具などを観察して来る。



 そんな視線の雨に晒されながら荒沢さんは出来るだけ威厳が出る様に堂々とした仕草で目の前に見える受付に向かう。



 受付には中年の男性と若い女性の二人が座って居た。



 当然荒沢さんは若い女性の方に向かうかと思いきや中年の男性職員の方へ向かった。



 荒沢さんは若い女性の本性を看板したのである。


 アレは男に貢がせるだけ貢がせて捨てるタイプの女性だとこれまでの豊富な人生経験から出した結論だ。


 現に受付嬢の前には若い冒険者がだらしない笑顔を浮かべながらデレデレしている。


 そして何やらプレゼントを渡したりしている。


 それを上司らしき女性職員が後ろから般若もかくやと恐ろしい形相をして居た。



 他の同僚も苦々しく見ている事からこれが何時もの光景だという事が伺える。




 荒沢さんが受付に向かうと山賊風の男達が前に立ちはだかり絡んで来た。



「よう、あんちゃん。立派な鎧を着ているなぁ。ここらで見た事ないが、新入りか?」といやらしい笑みを浮かべながら質問して来る。




 荒沢さんはテンプレ展開きたぁー!と内心では歓喜しながら素早く室内の美女を探す。



 だが残念ながら冒険者組合内にいるのは貴女は女性ですか?と疑問符が付く女丈夫な方々ばかりで中にはお年を召した如何にも魔女の様な方々「フェフェフェ」と怪しい笑い声をあげながらコソコソと会話しているぐらいだ。



 組合の職員はアレな受付嬢とその奥にいる中年の女性職員だけだ。


 やる気が起きず溜息を吐きかけた時遂に発見する!


 それは併設する酒場のウェイターだ。


 健康的に焼けた肌に少し気が強そうな目をした美女を発見する!



 途端にやる気になった荒沢さんは強気な態度になり「そうだが?それがお前達に何か関係があるのかな?」と威圧的に答える。


 自身の背後に幻術魔法でオーラを漂わせる事も忘れない。


 憎い演出だぞ荒沢さん!


 それに対して絡んできた山賊風の男達は怯みながらも「ならあの受付嬢には注意する事だ。下手に手を出すと骨の髄までむしゃぶりつかれるぞ。それとここから北のほうにある深い嘆きの森には気をつけな。あそこは毎年未帰還者が後を絶たない魔の森だ。依頼であそこに行くときは十分注意する事だな」とまさかの親切な方々であった。


 人は見かけによらないもんだ。


「そうか。情報感謝する」


「良いってことよ!じゃあなあんちゃん!」と言い男達は冒険者組合から出て行った。




 何と無くオーラを出しとくのも恥ずかしくなり引っ込めて受付に向かう。


 もちろん中年の男性職員の方だ。



「すまない。此方が冒険者組合の受付で良いだろうか?」


「左様です。本日はどの様なご用件でしょうか?」と丁寧に対応される。


「登録をしたい」と簡潔に述べる。



「畏まりました。では此方の書類に必要事項をお書き下さいませ。代筆なども可能ですので気軽にお声がけ下さい」


 ラクスからの情報によるとファースト王国の識字率は3割ほどでその3割も殆どが貴族や商人のみで平民で字を読めたとしても書けるものは殆ど居ないとの事だ。



 異世界補正か言葉も字も問題はないので大丈夫だ。



 スラスラと必要事項を記入して行く。



 と言っても書くのは出身地、名前、レベル、得意な武器または魔法のみだ。


 しかも名前とレベル以外は別に記入せずとも良いと書かれている。



「何故名前とレベル以外は書かなくても良いと書いてあるのだ?」



「それは参考程度と言う感じですね。書いてあれば此方が依頼を斡旋するときの参考程度にはなりますので。名前も呼ぶ時に困るのであった方が良いのとレベルは必須項目ですね。まあ、レベルは詐称されても門でまあ、北門はないのですがね。で調べられればすぐにわかりますしそれに低ければ依頼を失敗して運が良ければ罰則金で済み悪ければ命を落とすだけですけどね。ですが此方も信用問題になりますので依頼が立て続けに失敗に終わると冒険者組合を頼って来る依頼者が居なくなり困るのでそう言う冒険者は出来るだけ排除して居ますが、魔道具の中にはステータスを詐称するアイテムがありますので誤魔化される事はありますので絶対ではないですね」と長々と中年の男性職員が説明してくれた。


 それを一つ頷き理解したそぶりを見せて書類を埋めて行く。


 先ず出身地は未記入で名前はどうするかな考えた。


 本名だと一緒に召喚(場所と日数は多少異なる)されたリア充6人組の仲間だと思われるのは生理的に嫌だしミステリアスな雰囲気が台無しになるので却下だ。


 此方らしい名前にするかな。


 此方に召喚された時に着ていたスーツが灰色だったからグラウにするかな。


 我ながら安直だとは思うがシンプルイズベストと昔から言うから大丈夫だな。



 それにしても危なかったぜ。門で鑑定の魔道具を使われていたらその時はステータスを偽ってなかったからバレてたな。


 流石は荒沢さんは運がある!


 レベルはこの世界では確か過去の最高レベルから大凡こんな感じだったかな。



 勇者=レベル100

 英雄=レベル90

 超一流=レベル80

 一流=レベル70

 一流手前=レベル60

 騎士団長=レベル50

 騎士=レベル40

 中堅=レベル30

 一人前=レベル20

 大人=レベル10

 子供=レベル一桁

 赤ん坊=レベル0


 だったはずだ。


 騎士団長と騎士は大体がこのレベルってだけでもっとレベルが上だったり下だったりと上下するが大体の目安だ。



 過去の勇者の中にはレベル100オーバーも居たがかなり古い文献の中の話なので信憑性は薄いとの評価らしい。



 現在確認されている中での最高レベル保持者は軍事大国アルビオンの近衛騎士団長のレベル87と英雄一歩手前の人らしい。




 つまり何が言いたいかと言うと荒沢さんはぶっちぎりの一位で尚且つまだまだレベルは右肩上がりだ。



 そうそう忘れてはならない存在がいるそれは魔族と呼ばれる全人類の敵だ。


 魔族は二種類に分かれる。


 人型であり魔族の幹部である魔人ランク10と世界各国に居り強さがバラバラでランク1から〜ランク9までの魔物だ。



 そしてこれら全てを束ね生み出した最強の存在であるのが魔王と呼ばれる彼らの王であり生みの親である。


 魔王が何故魔物を倒せばランク毎に応じたアイテムをポップ出来るようにしたのかは不明だ。


『解体』を使用しなければアイテムはドロップしない代わりに倒した魔物の素材を手に入れる事が出来るのかなど不明な点は多々ある。


 それにこのレベルやステータスなどまるでゲームの様だ。


 一瞬もしかして魔王は異世界人か?と疑問を覚えたがそんな事よりも自分が楽しめる事の方が重要だと気付きその考えは頭の隅へと追いやる。




 ◇ ◇ ◇




 書類に記入下のは以下の通りだ。



 ──────

 出身地:未記入

 ──────

 名前:グラウ

 ──────

 レベル:43

 ──────

 得意武器:剣

 ──────

 魔法:火魔法・水魔法

 ──────



「では、此方の水晶板に手を置いて魔力を少しで良いので込めて下さい」と中年の男性職員に促され言われるがままに水晶板に手を置き魔力を込める。



「これにて登録は完了です。此方が組合証になりますので無くさない様にお願いします。再発行は如何なる理由があろうとも銀貨5枚が徴収されます。更にその次も無くされれば銀貨10枚と銀貨が5枚ずつ加算されて行きますのでご注意下さい」



「そして冒険者組合の基本事項は此方の冊子に書かれておりますので必ず目を通して置いて下さい。まあ、読めない方には銅貨20枚で音読しますが必要はありませんよね?」と一応の確認で聞かれたので必要無いと答える。


「では、ようこそ冒険者組合へ。貴方の活躍を期待します」と常套句を口にする中年の男性職員。


 今日は依頼は受けずに泊まる宿を探す事にする。



「そうだ。多少割高でも構わないので風呂付きの宿を御紹介預かりたいのだがあるだろうか?」やはり現代日本人として風呂は外せないポイントだな。


 後は清潔感も大事だがこの世界に殺菌防菌の理解があるのかはわからないのでそこまで上等な物は求めては居ない。



「そうですね。このアドベンチャーは冒険者の街でありあまり貴族の方は利用されませんから貴族用の宿と言った物がありませんからね。(風呂付きの宿は基本的に高級店であり冒険者が中心のこのアドベンチャーの街に風呂付き宿は採算が合わないので無いのが普通だ)ああ!確か【黄金の果実亭】が近頃風呂付きの部屋を作ったと聞きましたね」


「その宿は何処にある」と多少前のめりで聞く。


 偉丈夫のしかも全身鎧甲冑に身を包んだ大柄な男が身を寄せるのに多少驚いたのか身体を少しばかり後退させる中年の男性職員。


「た、確かこの通りを右に真っ直ぐに進んだ所に黄金の果実を描いた看板が掲げられた宿だったと記憶してます」と多少たじろぎながら質問に答える中年の男性職員に感謝して早速【黄金の果実亭】に向かう荒沢さんことグラウ。









 ◇ ◇ ◇



 中年の男性職員に言われた通りに右に真っ直ぐに進んだ所に黄金の果実を描いた看板が掲げられた宿を見つけた。



 中に入り恰幅の良い中年の女将に「此処に風呂付きの部屋があると聞いて来たのだが?」と質問する。



「ええ!ありますよ!よかったぁ〜」と安堵した声を上げたので不思議に思っていると「いやね。お客さんうちのバカ亭主が勝手に風呂付きの部屋を作ってね。何でも質の良い材料か手に入ったとか何とか言ってその場の勢いで発注して作っちゃってね。あたしはその時たまたま隣町の実家に用事で帰ってる時だったので阻止できなかったってわけよ。帰ってきた時亭主がドヤ顔で風呂付き部屋を見せられた時は思わず卒倒しそうになったよ。その後しこたま説教してやったんだがね部屋を改築するのにも、また結構な費用が掛かるって言うじゃないの。だから整備代はかかるけどね諦めてそのままにしてたんだよ。でも今の今まで利用客が居なくてね。そりゃあ部屋の料金は通常の一泊二食付きの銀貨2枚よりもだいぶ高い金額一枚になってしまうから使う人はいなかったんだけどようやく客が来て良かったよ」と聞いてもいないのにペラペラと饒舌に語る女将に気後れしていると亭主であるこの宿の主人がやって来た。



「ちょっとお前!お客さんに何いらん事話してるんだ!」と意外と大柄で職人顔の親父が出て来た。


「五月蝿いわね!あんたが悪いんでしょ!」と言われるとグゥの音も出ないのか言葉に詰まる宿の親父。



「あら御免なさいね。そう言えば自己紹介がまだでしたね。あたしはこの宿の女将をしてますハブマと申します。それでこっちの駄目亭主がーー」


「駄目亭主はないだろハブマ?ーーコホン。あっしはこの黄金の果実亭の店主をしてるドトリコと申します」と二人は丁寧に頭を下げた。



「ああ、よろしく頼むグラウだ。それで宿泊したいのだが?」



「はい!もちろんです!部屋は風呂付きの部屋で宜しいでしょうか?」とかなり食い気味に聞いてきたがその通りなので肯定する。



「そうだ。風呂付きの部屋を頼む。」


「一泊二食付きで金貨一枚になりますが宜しいでしょうか?」


「構わない。取り敢えず2週間頼む」と言い金貨14枚を渡す。



「確かに確認しました。此方の台帳にお名前を宜しいでしょうか?」と言われたのでサラサラと書く。



「ありがとうございます。ほらあんた部屋に案内しな」とハブマに尻を叩かれたドトリコが部屋の鍵を持ち部屋に案内する。



 黄金の果実亭は五階建てであり最上階に風呂付きの部屋があるらしい。


 風呂付きの部屋は全部で3部屋作ったが誰も利用しなくてその維持費に流石に赤字になりそうだったようでグラウこと荒沢さんの宿泊に感謝していた。



 流石は荒沢さん颯爽と現れて意図せずに人助けとは恐れ入る。



 案内された部屋は清潔でちゃんと隅々まで掃除が行き届いていた。



 部屋の鍵を受け取りドトリコが去ってから漸く鎧を脱ぎ寛ぐ。


「さてと、そろそろ風呂に入るとするか」



 用意されていた魔道具で風呂に水を溜め火魔法の魔道具で温めて丁度良い温度になって漸く服を脱ぎ風呂に浸かる。



「ふぅ〜やっぱり風呂は最高だな」とのんびりしているとペンダントに変化していたラクスと剣になっていたクイーンが「「私(妾)も風呂に入りたいわ」」とへんげを解いてやって来た。


 ラクスは水色のワンピースを着てやって来た。


「ん?その服はどうしたんだ?」


「街中で見かけた服装を参考にしたのよ」てラクスは得意げに話す。


 ラクスの後ろから真っ赤なドレスに身を包んだ女性が入って来た。


 金髪の髪を結い上げて居た。


「まあ、良いか。じゃあ入りな」とかっこいいポーズを取りながら告げる荒沢さん。



 その後楽しく風呂に浸かった後就寝した。







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