習作「イエネコのコダワリ」
ぼくは素敵で可愛いイエネコ、今日もおばちゃんの目を盗んで公園へお昼寝しに来た。お昼寝をするときはよくこの公園にくる。なぜなら日当たりのいいベンチがあって、めったにお昼寝の邪魔をされないからだ。柔らかいお布団でお昼寝するのもいいけど、お日様にじんわり照らされながらお昼寝するのは、なにものにも代えられない。
ぼんやりしながらあたりを眺めると今日もアイツがいた。アイツとは最近よくこの公園で出くわす。初めはこんなところにヒトが居て驚き、アイツもこっちを気にしているようだった。しかし特にイタズラされるわけではないので、もうお互いに慣れている。奴はいつも通り公園の隅っこにある屋根付きベンチに座っていてのんびりしている。ぼくもベンチに行くとしよう。
ベンチの上に収まると、背中がじんわり温かくなってきて、身体の力が抜けてくる。天日干しされたベンチの臭いもなんとなく落ち着く。そうしながらぼんやりと考える、しかしなぜでアイツは屋根付きベンチにいるのだろうかと。お日様と一緒にごろごろするのはこんなに気持ちがいいのに、わざわざ日陰にいるなんてもったいない。おそらく奴はお日様の良さをわかってないのだろう。なんとなくおかしな気分になりながら惰眠をむさぼっていた。
充分にお昼寝を堪能して目が覚めた。これからお家に帰っておばちゃんと一緒に遊ぼうかと思いあくびをして伸びをする。ふと屋根付きベンチを見てみるとアイツがいない、もう帰ったのだろうか。そのまま僕も帰ってもよかったのだが、なんとなく気になって屋根付きベンチに上に香箱座りになってみる。
気づかなかったが、日陰にも日向と違った趣があっていい。身体を通り過ぎる涼しい風、少しひんやりとしたベンチ、お日様で火照った身体にはとても心地よい物であった。なるほど、アイツが日陰でのんびりしている理由というのが少しわかった気がした。
あの日からぼくの昼寝は、まず日向で体を温めてから、日陰で冷ますというものになった。アイツにも感謝をしなければならないな。