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「さて。ニーナのドレスはどれにしましょうか。」
メルリーサ様はそう言うと、侍女さんたちが並べたドレスを見比べ始めた。
どこからこれだけの量のドレスが現れたのだろうか。まさか、持って来たのかな?
「事情をお話したら、辺境伯夫人がご協力くださったのよ」
心を読むのを止めてください。
おっとり微笑むメルリーサ様は読心術も心得ていらっしゃるとは。
そして、恋バナは世代も超えるのですね。はい。
メルリーサ様は私にドレスを充てながら、アレでもないコレでもないと真剣に考えてくださっていた。ファッションのことはよくは分からないが、ドレスを夢見る少女時代を過ごした私とそても、ドレスがいくつも並ぶこの光景は少し心躍った。しかし、ちょっとデザインが若いのではないか?こう、ヒラフワで可愛らしい感じで、こう、二十〇歳の私には、ちょっと、アレなのでは?
どのドレスがいいのか眺めていると、一人の侍女さんがスススッとメルリーサ様にドレスを片手に近寄ってきた。
「メルリーサ様。こちらを。」
「あら、どうしたの?このドレス。」
「実は、ニーナ様にと。」
「まあまあ!」
歓喜の声を上げたメルリーサ様は、侍女さんが持って来たドレスを手に取ると、私にサッと充てた。
侍女さんが持って来たドレスは黒をベースとして、柄などに緑が差し色として入った落ち着いたデザインのものだった。
「装飾品も合わせて預かっております。」
「白の真珠ね。辺境伯領でも力を入れている産業だと伺ってるわ。ドレスにも合っているし、いいわね。うん。ニーナに似合っているわ。」
メルリーサ様は満足そうに頷いた。
「さあ、ドレスも決まったことだし、準備を進めましょう。」
おっとりといつものように微笑んだメルリーサ様の指揮により、私はどんどん飾り立てられていった。
朝から磨かれて、衣装を決めて、飾り立てて。夜の準備を朝からするなんて、と思ったけれども、準備が終わった頃には日が沈み始める時間となっていた。
え、まじか。
もう夜なの?
時間経つの早くない?てか、準備にめちゃめちゃ時間かかるじゃん。
こりゃ朝早くに呼び出されるわけだわ。
「ご準備が整いました。」
そう言って私の準備をしてくれた侍女さんが鏡を私に見せてくれた。
「おお。」
こりゃ朝早くに呼び出されてよかったわ。
元が元なので、めかしこんだら「これが私?」と言いたくなるほど驚きの美女になった、なんてことにはならなかったけれども、プロの腕による化粧とヘアメイクで整えられて、三割増しになった気がする。
「武装は完璧のようですね。」
私の出来栄えをチェックしていたメルリーサ様は少し手直しするとそう言った。
「今日は決戦の日ですものね。」
メルリーサ様は私の肩に手を優しく置くと、少し力を込めた。
鏡越しに目が合う。
「ニーナ、あなたに必要なのは、もうほんの少し、踏み出すこと。美しく飾るのは、おまじないのようなものですが、あなたに自信と勇気をくれるはずですよ。」
メルイーサ様はそう言って優しく微笑んだ。
私はそっとドレスを撫でた。黒地に緑―――新緑の差し色。
このドレスを準備したのはきっと彼だろう。
そう考えただけで胸が熱くなる。




