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「最近は装飾品目的の物がよく出ていますね。」
フェルーク様は辺境伯領の行政官と市街を見て回っていた。
勿論、フェルーク様の護衛を担当する私も、後ろに控えて市街を回っている。
あの研究所を抜け出してから、行政官はスタンバってくれていたようで、貿易のことや他国のこと、海の状況などを色々教えてくれた。すごく視察してるっぽい。
今は、市街を実際に見て回って、物流チェックをしている。ようだ。いや、小難しい話になってきたあたりで聞くの止めたから、よく分かってなくて・・・・・・。
「中でも、真っ白な真珠の需要が高いですね。なんでも、あちらの国の貴婦人達に流行っているそうで。丸くて大きさと形が揃っているものが人気です。これが実際の商品です。」
「うん。確かに美しいね。」
比較的大きな宝飾店に入ると、行政官は実際の商品を見せながらフェルーク様に説明を始めた。
真珠の装飾品というと、私としては数珠状に連なったネックレスが思い浮かび冠婚葬祭のイメージが強いが、海向こうの他国で流行っているという花の形を模した連ねた髪飾りや揺れる感じの耳飾りなどあって、素直にかわいいなと思った。
中高年に人気なのかと思ったけど、これなら若い世代にも人気そう。
フェルーク様は真珠の髪飾りを確かめるように手に取ると、おもむろに私を手招きした。
「ニーナ。」
「はい。」
なんだなんだ?と思いながらも、私は素直にフェルーク様へと近付いた。
すると、フェルーク様は手に持っていた髪飾りをスッと私の頭にあてがった。
「うん。ニーナの髪によく映える。」
そして、私に微笑みかけた。
んんん?なんだこれ。このムズ痒い感じのものは。
カッと私の頬に朱が差したのが分かった。
「……」
でも、私は何も言えない!恥ずかしいから何も言えない訳ではなく、護衛だから余計なことが言えないのだ!
恥ずかしさに内心私がのた打ち回っている間に、フェルーク様は満足したのか一つ頷くと、一旦置き、違う物を手に取った。
「君に似合うのは、こちらの意匠かな。」
そう言って、フェルーク様は違うデザインの髪飾りを手に取ると、また、私にあてがった。
「うん。よく似合う。」
ちょっと待ってほしい。何なんだ、この雰囲気は。この、甘い雰囲気は!
そんな風に微笑みかけないでくださいよ。
ああ、ほら、行政官が困った顔で笑ってますよ。宝飾店の人もニッコリ営業スマイルですよ。ホント居た堪れないんで!
なんと返していいのか分からない私は、取り敢えず、にこりと笑って「きょ、きょろしくですぅ」と謎の単語を作ってしまった。けっして、噛んだわけではない。
そんな私を見て、フェルーク様は笑いを堪えるように笑みを深めた。
宝飾店の他にも市街にある店や露店などを見学した。
市街を回る時、様々な場面でフェルーク様は私を呼び寄せて話しかけたり意見を求め、そしていつの間にか私はフェルーク様の横を歩かされていた。
私は後ろから着いて回るタイプの護衛なのですが?
そうやって視察の時間は過ごし、全ての日程を終えた後、ふと、私は思った。
あれ?なんか、今日の視察、俗に言うデートっぽくなかった?
その夜、私はベッドの中で悶えたのだった。
他の護衛達
「自分は空気。自分は空気・・・・・・」




