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港についてから、私はてっきり船を見たり貿易関係の事を聞いたりするのかと思っていたのだが、そんなものは話しそこそこで、今、私達は港に建てられた割と大きな研究所にいる。
そこでは辺境伯領で採取される海の生き物や海に生える草木の成分分析や薬効などを研究している施設らしく、将来的には養殖などに研究成果を活かそうとしているらしい。
研究所内に設けられた生け簀や水槽などには魚が泳ぎ、水族館チックでなかなか興味深く楽しめたのだが、私は気づいてしまった。
何か、海藻、多くね?
その疑念は研究所の奥へ行けば行くほど強くなっていき、「特に力を入れている研究です」と辺境伯様に紹介された研究を見て、私はそっと目頭を押さえた。
「ほう。この海藻にはそのような効能があるのか」
「はい。まだ検証段階ですが、恐らくは」
「それは実に将来が楽しみだ」
海藻見ながらハリストール殿下と辺境伯様が実に楽しそうに会話していた。海藻の効果効能について。
ああ、ここはそういう施設なのですね。
養殖とか、いつ出来た技術なのか知らないけれども、この国の文化ではすごく先進的な取り組みをしているのではなかろうか、さすがは王太子がわざわざ足を運ぶ要所だ、とか思った私の感心を返して欲しい。
何なんだここ。何を見せられているんだ私。
まあ、確かに?殿下的には要所ではあるよね。うん。すごく大切な場所だね。
そして、ふと思った。
もしかして、この研究施設の話を聞くのが、今回のメインイベント?
まさかなぁ、と思いながら私はチラリとメルリーサ様を横目で見た。私の視線に気が付いたメルリーサ様は、おっとり微笑まれた。
そして、貿易の話とかをする予定であったであろうフェルーク様をチラリと見た。無駄にキラキラと微笑まれた。
最後に、テンション高めに辺境伯様と海藻の効果効能の将来性について話しているハリストール殿下を見た。
「治癒魔術師の観点から、ニーナはどう思う?」
と、大興奮な笑顔で殿下に聞かれた。見るんじゃなかった。
「あの薬を作られた治癒魔術師殿の意見。ぜひ伺いたい」
辺境伯様からもいい笑顔で意見を求められた。もしかして、あの薬とは、金貨症の薬のことですかね?あれは、毛生え薬ではないのだが。
私ピンチ。
「……私の専門は、病気や怪我の治療ですので、その観点から申し上げることは難しいですが、研究は素晴らしいものだと思います」
はい。研究自体は、養殖とか成分分析とか将来的に役に立ちそうだし、素晴らしいものだと思いますよ。研究自体は。はい。本当に効果があるかは補償いたしかねますが。禿げは病気じゃありませんからね。専門外です。
ニッコリ笑ってそう答えた私に、辺境伯様は満足そうに頷いた。
そして二人は再び海藻研究の話に戻っていき、その会話の盛り上がりから、研究所の滞在時間が長くなりそうな気配がビシビシ伝わってきた。
「兄上達は長くなりそうだから、僕達は僕達の仕事をしようか」
そっと近付いてきたかと思うと、フェルーク様からそう耳打ちされた。
僕達の仕事って?
「メルリーサ嬢。そう言うことで、ここはお任せしてもいいだろうか?」
そう、フェルーク様に言われたメルリーサ様は、困ったように頬に手を当て、溜息を吐いた。
「長くなりそうですものね。仕方ありません。この後の予定は別行動いたしましょう。よろしですよね?ハリストール殿下」
盛り上がっていたところにメルリーサ様に声を掛けられ、殿下は少し瞬きした後、我に返ったようで、海藻の話題から置いてけぼりをくらっていた周りを見てちょっとバツが悪そうだった。
「ああ、そうだな。我々はもう少し研究について話したいので、フェルーク達は市場視察をしてくると良い」
殿下、「我々」ってメルリーサ様も入ってます?メルリーサ様の笑みが深まった気がするのですが。違う研究の話もした方が良さそうですよ?
こうして、ハリストール殿下一行とフェルーク様一行とで別行動することとなった。
た、大変ご無沙汰しておりました(小声)
更新が非常に(異常に)遅くなり、申し訳ありません。
また暫く、よろしくお願いします(;´Д`A
ちなみに、次の更新は、7月27日ぐらいです。




