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婚約破棄された異世界の魔女【連載版】  作者: 純太
第3章

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18

もし私が、トリップしたての十代の時に上手い事成功を収めていれば、今頃私は、トリップヒロインの様に左団扇に逆ハーだのウハウハ言っていたんだろうな、と思ったこともあった。


だが実際は王宮の中にトリップとかしなかったし、王子様はアレだしで現実はそう上手くはできていなかった。


「で、どうだ?知り合いだったか?」

「あれが異世界トリップの成功例なんだろうな。」

「何の事だ?」


私は今、ロダンと一緒に隣国からやって来た異世界人とやらを見に来ていた。

こう、中庭を歩く一行を三階回廊の柱の陰からコッソリ見学しております。


「ああ、ごめん。別の事を考えてた。」

「そうか。で?どうだ?」


そこ、そうかで、終わらせるんだ。さすがロダン。

殿下だったら一回怒られてるよ。


「そうですね。あんな若い知り合いはいないかなぁ。」


異世界から来た少女は、見るからに若く、きっと女子高生くらいだと思われた。

私が日本にいた頃は、彼女はずいぶん幼かったのではないかと思う。

しかし、その見た目は黒髪黒目の黄色人種で、のっぺり気味な日本人顔(ただし彼女は目がクリッとした可愛い顔立ち)だ。

もしかしたら、日本から来たのかもしれない。

制服とか着ていれば、もう少し確信が持てたのだが、生憎と彼女はこちら風の服を身に付けていたため、服装からは推測する事ができなかった。


「故郷が同じかもしれないから、ちょっと話してみたかったけどなぁ。」


異世界から来た少女と聞いて、まず始めに思った事は、もしかして同郷かもしれない、という事だった。

それを確かめたい、同じ異世界人を見てみたい、そんな気持ちからロダンを伴って隣国の異世界人を見に来たのだ。


その想いに少しは郷愁もあったかもしれない。


「流石にそれはダメだろう。殿下や魔術師長に俺も怒られる。」

「分かってるわよ。会っちゃダメって散々言われたんだから。」


そうなのだ。

私は隣国からやって来た人々と会う事を許されていないのだ。







話は遡る事数日前。


「えー、今度、隣国から魔術使節団の皆さんが来ます。」


魔術師全員強制参加で招集をかけられ、先日ワンフロアになった魔術棟執務室へ行くと、魔術師長より上の様な発表があった。


この魔術使節団とは魔術技術交歓会の様なものを行うのが目的で、魔術技術向上のため、同盟国である隣国と魔術技術に関する協定を結び、協力して様々な魔術研究を行っており、三年置きにお互い行き来しながら親睦と魔術技術を高めていっているのだ。

交歓会の受け持ちは交互に回る様になっていて、前回は先方の地で行ったので、今回はうちの国でする事となった。


「あと、今回は使節団の魔術師達と共に、異世界から来たという少女も同行するそうだ。どういった人物かは判らぬが、認識だけはしておく様に。」


「あ、それとニーナ。」

「はい。」

「君、隣国の人との交流禁止。」

「え、何でですか?」

「色んな意味で危ないから。キミ。」

「・・・・・・どういう意味ですか?」


遠い目をした魔術師長を睨めつけてみるものの、ワンフロアになったオフィスを眺めるている魔術師長はこちらの様子に気付くことはなかった。


「粗相があってはいけないからね。」


それは、私だけのせいじゃありません。


「私だって、常に破壊衝動に駆られているわけではありません。」

「ついこの間、激怒して屋敷を半分消し炭どころか粉々に消し去ったのは何処の誰だったかな。」

「あれは色んな要因が重なったからです。あの時私は死にそうだったんですよ。危機回避本能です。基本、善良な魔術師です。」

「善良な魔術師は破壊系に特化した魔術ばかり開発したり使ったりしない。」


くっ!

さっきから痛い所ばかり突いてくるな。

私に何の恨みがあるというんだ!

・・・・・・あ、心当たりが幾つもある。


「とにかく、王太子殿下とも相談したうえでの決定事項だ。火の無い所に火を点けたくない。ニーナの火打石がいつ火を噴くか分からないからな。隣国の魔術師が来ている間、相手方とは接触を控え、危険な魔術の研究とかせずに大人しくしている事。」

「・・・・・・はーい。」

「あと、隣国の魔術師に君の研究内容を教えたり研究室には入れない事。」

「?」

「研究資料とかキッチリ隠しておいてよ。君の部屋は機密しかないから。と言うか君自体が機密の塊だから。歩く機密だから。」


何だそれは。


「君が研究、開発している魔術はとても危険で、他国に知られるのはこちらとしては、よろしくない。当たり障りない感じの治癒魔術の研究にその期間は集中してくれ。何だっけ、あの体毛のやつ。あれでいいから。無害そうだし。」


なんか釈然としないものの、上の決定だ。仕方ない。

きっと、上には上の考えがあるのだろう。

上の考えとなると、行き着く答えは政のあれこれで、そういうのに関わりたくない私は、文句を垂れつつも渋々了承した。






そして、今に至る。


「ニーナも初めてこちらに来た時はあんな感じだったのか?」

「何よ、唐突に。」

「いや、あの少女がいかにも“他所から来た”という雰囲気を纏っていたからな、そういうものかと思って。何分俺は異世界へ行ったことがないからな。」

「普通、異世界には行かないから。てか、行ってたらロダンはそっちの人でこっちには居ないから。」

「そう考えると、ニーナは随分とこちらの世界に、馴染んでいるなと思ってな。」


まあ、こっちに来て十年以上、人生の半分近くは過ごしてますからね。

殆ど現地人ですよ。


こちらに来て色々それなりにあったけど、周りの人達に恵まれて、この世界に嫌気がさす事は無かったのは幸いだ。

まあ、クレーターを開けたいと思った事は何回もあったけどね。


そう考えると、やはり彼女はトリップの成功したと言える。

私は今でこそ魔術師として成功を収めているが、彼女は初期から今の私と同じくらいにいるのではないだろうか。ポジション的に。

だって、王宮に出入りさて、隣国まで出て来ちゃって、ありゃ王子とかお偉いさんから保護されてるんじゃないか?と思われる。

何かのヒロインみたいだなあ。


そんな事を考えながら隣国一行を眺めていると、最近仕事や出先で日中よく見かける人物が姿を現した。


「あれ、フェルーク様じゃん。」

「ああ。明日から魔術師長と案内役を担うらしい。」

「え?第三王子様が?」


隣国一行が来てすぐ、ハリストール殿下も王太子という事で、彼らと謁見している。(王太子護衛も私の仕事なので、影に隠れてコッソリ控えてました。)

でもそれだけで終わった訳だから、わざわざ王族が出張る必要は無いと思うけどな。


「相手方に王弟殿下がいらっしゃるらしい。フェルーク殿下は魔術学園を卒業されているし、第三王子だから今回の案内役に選ばれたらしい。」


なるほどねぇ。あっちに王族が居るなら、確かに話は別だ。

第二王子だと王位に近過ぎるから大仰になってしまうが、第三王子はそれなりに王位に遠いし礼に欠かない存在としては適任なのかもな。


異世界に来て、隣国のイケメン王子と会って良い感じになる。


そうなったら少女漫画だな。


フェルーク様は挨拶をしに来ただけだったのか、二言三言言葉をかわすと、その場をすぐに後にした。


少女はフェルーク様の去り行く姿を暫く見つめた後、先行していた一行の後を小走りでついて行ったのだった。


ふーん?


「そろそろ行くぞ。」


ロダンに促され、私もその場を後にすべく踵を返した。

振り返った私の顔を見たロダンは思うことがあったのか、首を傾げて真顔で言った。


「何だ。顔が変だぞ。」


それは、遠回しにブサイクと喧嘩を売っているのでしょうか?







使節団が訪問している間、私の研究室は封鎖される事となった。

「戸締りはしっかりしておくように」との魔術師長からのお達しだったので、部屋には泥棒避けや侵入妨害の結界を張り、鍵をかけてある。

そんな研究室に出勤する度に入るのは面倒なので、当面私は騎士団の医務室で間借りして勤務する事となった。


本来、騎士団の医務室には治癒魔術師が交代制で何日かに数時間勤務する事になっている。

今回は私の研究室が封鎖されているので、特別に騎士団医務室でフルタイムで勤務することとなった。

当分の間は私が医務室の治癒魔術師担当だ。

使節団の対応で猫の手も借りたいほど忙しいらしく、人手が足りていない状態なので、今回まったく役に立たない私がここの勤務に就くのは助かるらしい。


私は王宮魔術師に正式任命されてから割と早い段階で王太子付きとなったので、騎士団医務室担当になった事は無かった。

だから、知らなかったのだ。


騎士団が、こんなに未婚の男性で溢れていたなんて・・・・・・!


くそー。

灯台下暗しとはこの事か。もっと早くにこの事実に気付いていれば良かった。

そうしたらここで婚活が出来たのに!


「今邪な事考えなかったか?」

「気のせいです。」


ロダンに案内されて初めて来た騎士団の医務室は、騎士団の訓練所に面しており、怪我人が外からもスムーズに入れるような造りになっていた。

あれだ、学校の保健室みたいな感じだ。


案内してくれたロダンに、お礼を言い、仮住いまで運んできた取り敢えず必要そうな物を片付けることにした。


「しかし、医務室の仕事か。ニーナは治癒魔術も使えるのか?」


運んで来た荷物を床に置きながらロダンが言った。

ちなみに、手伝おうかと伸ばされたロダンの手は、私の固い意志によって止められた。

ちょっと危険な魔術的な物を持ち込んだので、変な扱いをされたら困る。そして、それを殿下にチクられたら困る。


「お忘れのようですが、私の専門は治癒魔術です。」

「あれ?戦闘魔術師じゃなかったっけ?」

「違います。」

「破壊系の魔術が得意ーー」

「ではありません。」


あれ?と首を傾げて暫くロダンは考えていた。


「これもお忘れのようですが、殿下の持病の薬を作ってるのは私なんだけど。」

「ああ、そういえばそうだったな。」

「治癒魔術師だから出来るし、しているのよ。」

「魔術に対する造詣が深いから、作れるのだと思っていたよ。何しろ、ご病気の事を殿下はあまり知られたくない様だったからな。」


そりゃあ、コンプレックスでセンシティブな内容だからな。

実際知ってる人も少ないし。


「だがそうか、治癒魔術師だったから病気にも詳しかったのだな。」


納得した様に数度頷くロダンを横目に、今度は私が人の居ない医務室に首を傾げた。


「そう言えば、医務室付きの医師は居ないんですか?」


ここに来てから暫く時間が経ったが、それらしき姿が見当たらない。

普通、医務室なのだから保健の先生みたいに常駐している医師的な人がいてもいいのではないだろうか。


私の質問を聞き、ロダンは記憶を掘り起こすことを止め、私へと向き直った。


「ああ、新しい医師が配属する事になっているんだが、選考で難航しているようでな。」

「そうなんだ。」

「ああ。だから、新任が決まるまでは、一人で業務を行ってくれ。」


ここでも渡りに船感があるが、まあ、暫くはやることないし、大人しく医務室で白衣の天使をしてますよ。

着てるのは白衣じゃないし、天使と言える可愛げはないがな。

17/01/24 記

誤字修正しました。

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