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黒の魔眼  作者: ひのえの仏滅
第1章 始まり
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03.

 リーグを出発して二日。

 僕は、大ききな湖で遊んでいる。

 

 「ポリー行ったぞ」


 「任せて」


 ポリーは魚の姿を見つけると、素早く腕を降り抜き、一匹の魚が宙を舞いながら地面へと落下していく。

 これで六匹目。

 はじめは遊んでいたが、ポリーが魚を見つけたことで、漁へと変わっていた。

 とても楽しそうで遊び感覚のようだ。

 

 湖の近くには村があり、ゼルさんは村で情報を集めている。

 僕達も村に帰り、ゼルさんと合流する。

 村の名はミラド。

 さっきの湖の名もミラドである。

 湖の名がそのまま村の名になったそうだ。


 魚を食べながらゼルさんの話しを聞く事に。


 「グランドに続く道に、この頃よくゴブリン達が表れるようだ。一匹一匹はたいした脅威にならないが、群れると厄介だぞ。実際被害も出ているみたいだ」


 「ゼルさん、どうしますか。僕はゼルさんの判断に従いますよ」


 ポリーは遊び疲れたのか僕の横に座り、コクリコクリと舟を漕いでいる。


 「私としては急ぐ事でもないと思ってる。被害が出ている以上、すぐにグランドが対応すると思う。わざわざ危険を冒すことはないんじゃないかな」


 ゼルさんの判断で、僕達はゴブリンの脅威が去るのを待つことにした。

 ゼルさんがポリーをベッドまで連れていくのを見て、僕も部屋へと戻る。

 部屋で一人魔力操作の訓練をしながら、今日一日が過ぎていく。

 今日は平和に過ごすことが出来た。


 翌日。

 村の中が騒がしい。

 何かと、宿の外に出ていく。

 腕に深い傷を負った青年が、肩を担がれ歩いていた。

 人垣に混じり話しを聞くと、村の付近でゴブリンの集団を見たと。

 傷はそのとき斬りつけられたものだと。

 僕は腰のポーチからポーションを取り出し肩を担ぐ男に渡す。

 男は何度も礼をいって去っていった。


 宿に戻りポリーを捜すが見当たらない。

 宿のおばちゃんに聞くと、だいぶ前に外へ出たと言われた。


 ゴブリンのこともあり村の中を捜していると、何人かの子供が湖に行ったと聞いた。

 ゼルさんもいなく嫌な予感が漂い、すぐに湖に駆け出した。


 湖では子供達が遊んでいる。

 そのなかにはポリーの姿もあった。

 事情を話しすぐに村へ一緒に帰るよう伝える。

 男の子達は不満そうな顔をするが、年長の女の子に急かされて皆で帰ることになる。

 湖から村はすぐ目の前、子供達はなんの問題もなく村まで帰ってきた。

 それぞれの家にかえり僕達も宿へ行こうとすると、村の中へ一人の男がゴブリンが来たと、叫びながら駆け込んで来た。


 男に事情を聞くと数匹のゴブリンが思った以上に村の近くまで来ており、すぐに迎撃する必要があるほどだった。

 急いでポリーを宿へ連れていく。

 決して外に出ないことを約束させ、僕は村の外へと走って行く。

 ゼルさんとポリーを守るために。


 ゴブリンは林の中にいた。

 数は五匹、然程多くない。

 何かを捜すように辺りを見回している。

 体は僕より少し小さく、色は緑。

 額に小さな角があり、濁った目をしていた。


 僕は、音が漏れぬよう口の端しから息を吐き、ゆっくりレイピアを抜くと、木に隠れながら近づいていく。

 ゴブリンはゆっくり歩きながら此方へ近づいてくる。

 木の向かいからは足音と共に不快な臭いが漂いだした。

 もう、そこまで来ているようだ。


 僕は木を背に、ブリンが逆を向いた瞬間に飛び出し、レイピアを突き出す。

 レイピアはうまく胸に突き刺さり、ゴブリンは声をあげながら倒れていく。

 仲間の声を聞き、他のゴブリンが僕の存在に気づいた。

 一斉に僕めがけ走り込んでくる。


 ここに居ては囲まれるので、右にいるぼろを纏ったゴブリンに駆け寄り、突きで頭を貫くと、その勢いのまま大きく左回りに旋回し、一匹離れたところにいるゴブリンの胸を更に貫いた。


 僕は止まることなく走り続け、残りを目線のみで確認し、近くのゴブリンに駆け寄り突きを放つ。

 レイピアは思った以上に深く刺さり、抜くのに手間取っているとゴブリンは目の前まで来ており、手に持つ錆びたダガーを突き立てて来た。

 僕はレイピアを諦め、転がりながら距離をとると、腰に着けてる剥ぎ取り用のナイフを構えて、ゴブリンと対峙する。


 ゴブリンはダガーを構えゆっくりと近づいてくる。

 僕はわざと構えをといた。

 するとゴブリンは金切り声をあげて突っ込んできた。

 だが、突然ゴブリンの頭が炎に包まれた。

 ゴブリンは地面に転がりもがき苦しんでいる。

 僕はその隙にレイピアを引き抜き、苦しむゴブリンに止めをさした。


 始めての魔物との戦闘が終わった。

 それも、人形。

 まだ、気持ちが高揚しおさまらない。

 始めての魔法も上手くいった。

 リーグの町で読み漁った本の一冊だ。

 だいぶ気持ちも落ち着き足元のゴブリンに目を向ける。

 頭部を焼かれたゴブリンは顔がひきつり、初めて見る凄惨な人形の死に恐怖をおぼえた。


 僕は足元のゴブリンの胸を開き中から魔石を取り出した。

 剥ぎ取りはリーグのダーバさんに教わった。

 その中には魔物の情報もある。

 頭の角はだめそうだ。

 討伐証明は基本的に冒険者が行う事だが、ゴブリンは何処にでもいるうえ繁殖力が強く、害にしかならないため、安くはあるが討伐証明でお金が貰えるのだ。

 そのため、田舎の村などでは腕っぷしのある男達の小遣い稼ぎとなっていた。


 他のゴブリンの剥ぎ取りは行わず、急いで村に引き返す。

 その途中、ふと初めて剥ぎ取った魔石を見ていると、煙のようになり目のなかに吸い込まれていく。

 魔眼が発動し、魔石が目の中に消えていった。

 すると頭の中に何やら物騒な文字が浮かんできた。


 魔眼: 悪食 (あくじき)解放

 悪食:魔力、呪言(のろい)の吸収


 悪魔のギフト1が解放されました

 虚無:無限の倉庫。手紙×1。

 影や闇を使い、出し入れする。


 「はぁぁぁ、呪言ってなに?のろい食べるの。あの悪魔、とんでもねぇ」


 悪魔の事だからこれで終わりじゃないだろう。

 この先が、とてつもなく不安だ。

 だけど、ギフトの能力は有り難いことに、今一番欲しい能力だった。


 試したい気持ちもあるが、今は急いで村に戻る事にした。



 村に着き、入り口にいた警備の人にゴブリンの討伐と場所を知らせ、宿に帰ってきた。

 すぐにゼルさんが駆け寄ってくる。


 「アラタ君、何処へ行っていたんだ。ポリーに聞いても分からないし、心配したんだぞ」


 僕は出掛ける際、誰にも行き先を注げていなかった。

 ひとつは急いでいたからだが、もうひとつは、必ず止められると思ったから。

 そのため、ゼルさんは僕の事を、捜し回っていたのだろう。

 僕の行動は無責任すぎた。

 

 「何か、言えない理由があるのかい」


 「いえ、心配かけてすみませんでした。ゴブリンの件で外に出ていました」


 ゼルさんは息を吐きながら、少し困ったような顔をしたが、そうかと呟き、僕の肩を二度叩きながら微笑んでいた。


 「怒鳴ったりして悪かった。次からはせめて何処にいくかは教えて欲しい。それで君の行動を咎めたりはしないから。それだけは約束してくれないか」


 「はい。勿論約束します」


 僕の返事で一応は満足したのか、ゼルさんは笑顔を浮かべ、二人揃ってポリーの待つ部屋へと入っていく。


 僕の姿を見たポリーは泣きながら僕に飛びついてきた。

 その日はポリーを宥めるのに苦労した。

 ポリーは僕から一日中離れず、村は限界体制のため外にも出られず、部屋の中で『指相撲』や『いっせぇのせっで指をかげるあれ』や『じゃんけん』をしながら一日を過ごした。



 それから三日。

 ゴブリン討伐が完了したとの連絡が村に届く。

 聞いた村中の人達は安堵の表情を浮かべていた。

 僕達も随分足止めをくらってしまい、さすがにゼルさんも休み過ぎたと、出発の準備を整えていく。


 準備を整え、翌日。


 「さあ、グランドへ行こうか」


 ゼルさんの掛け声でミラドの村を出発する。

 今日にはグランドに着く予定。



 ミラドを出て昼をとっくに過ぎた頃、ようやくミラドから続く林道を抜けることが出来た。

 今は牧草地になってあちらこちらに牛のような動物が草を食んでいる。

 ようやく彼方にグランドの城壁が見えてきた。


 「アラタ見て。あれがグランドだよ。大きいでしょう」


 ポリーは幌を捲り、外に顔を出している。

 僕もポリーを支えながら、後ろから顔をだす。

 

 「うわっ、あの城壁、どんだけでかいんだ」


 周りには長閑な風景が広がる中に巨大な城壁がそびえたつ。

 グランドの街は自然の中に、異様な雰囲気を醸し出していた。


 城壁が刻々と近づいてくる。

 あちらこちらから馬車や徒歩、商人や冒険者などが姿を現す。

 ほとんどが同じ方向へ向かっている。

 前の方には大きな流れが出来ていた。

 グランドの街に入るための行列である。

 行列の中には僕達の姿もある。

 皆一様に街中を目指し進んでいる。

 

 夕刻にさしかかったころ僕達の順番が来た。

 城壁の前には革鎧を着た兵士が二人と、金属鎧を着た騎士が一人。

 城壁の中にも騎士や兵士の姿が見える。

 若い兵士の一人がゼルさんを見て、手を振りながら近づいてきた。

 知り合いらしく、ゼルさんも手をあげ返事をする。


 「ゼルさん、お帰り」


 「ただいま、ドリュー」


 軽い挨拶の後、手続きをする。


 「ゼルさん、こっちの子はどうしたの」


 この世界の人達は平均的に背が高く、そんな人達から見たら僕は子供にしか見えないのだろう。


 「この子はアラタ。身分は僕が保証する。街に入ったら身分証も作る予定だから。仮手続きを頼むよ」


 「はい、わかりました。ゼルさんの保証なら大丈夫ですね。分かっていると思いますけど一応。仮の許可証の期限は五日ですので、それ以内に身分証の手続きして下さいね」


 「えぇ、大丈夫ですよ」


 どうやら五日以内に身分証を作らなくてはいけないみたいで、それを越えると罰金やあまりに悪質なのは、その場での逮捕となるらしい。

 街での振る舞いの注意事項を聞き、ようやく手続きも終了する。

 ゼルさんがようやく帰ってきたと呟き、僕達は馬車に乗りグランドの街に入っていく。

 まず向かうのはゼルさんの家。


 城門を過ぎると街が活気を帯びてくる。

 今までで一番賑やかな場所だ。

 奥の方には中央広場だろうか、出店や屋体、更には地面に商品を並べる者もいる。

 女性の買い物客が驚くほど多く、夕飯の買い物でもしているのだろうか。

 中央広場を抜け、大通りから一本入った所にある庭付きの家。

 どうやらここがゼルさんの家のようだ。

 立地条件がよく家は中規模だが庭付きである。


 「ただいま」


 ポリーが中に駆け込んで行く。


「さあ、アラタ君も入って、入って」


 僕はゼルさんに押されながら入っていく。

 随分開けていたにもかかわらず、中は綺麗である。


 「アラタ君の歓迎会を開きたい所だけれど、今日は流石に疲れたね。歓迎会は明日にしようか」


 椅子に座っているポリーも、眠たそうにしている。

 とりあえず今日は軽く夕飯をとり、休むことになった。 



 僕は一部屋借りるている。

 部屋の中では今日の身につけた能力の確認をしている。

 影に意識を集中すると何やら頭の中に収納されている物が浮かんでくる。


 手紙×1


 手紙って悪魔から?

 影が盛り上がりその影に触れると、いつの間にか手紙が手の上に乗っていた。

 手紙を開く。


 ようアラタ、楽しくやってるか。

 手紙なんてのは面倒なんで早めに話す。

 そっちで面白そうな事が起こっているぞ。

 何かは自分で確かめろ。

                 以上


 それと、俺を楽しませろよ。アラタ。


                 シン



 何の手紙?

 あの悪魔が面白そうな事。

 それって相当やばいことじゃないの。

 自分で確かめろとは、自分から巻き込まれろってこと。

 こっちでもやばい人生送りそうだな。


 その後は、いつも通りの魔力制御の訓練をベッドの上でしながら、眠りについていく。

 微睡む中で手紙の最後に書かれた『シン』の文字を思いだし、嬉しさをかみしめながら眠りにおちていくのだった。


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