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プロローグ

プロローグ



朝日が差し込む窓辺で、俺は机に向かった。持ち手の黒ずんだ万年筆を取り、淡い桃色のかかった花のプリントが入っている便箋に文字を綴っていく。


『Dear___


元気だろうか?

俺や双竜は元気でやっているよ。こっちの生活にもやっと最近慣れてきて、チームにも馴染んできた。


昨日、久しぶりに思い出させられたよ。あれからもう、二年という年月が経過していたことに。日本に居た頃の友人が、俺たちの元を訪れてくれたんだ。それで不意に、ね。

別に君の事を忘れた訳じゃ無い。もちろん、あの日の事も。

ただ、俺はまだ君の温もりをどこかで求めているような気がしてね…。


そういえば、来月ここのIHがある。絶対に優勝してみせるから、だから。トロフィーを持って帰ったら君は、あの家で微笑んでくれるかい?またあの時のように「おかえり」と。

俺が、君が…俺たちが過ごしたあの家。また必ず、訪れるよ。


返事が返ってくることを祈って



From 君の仲間』



全ての文字を綴り終え読み返してみると、まだ宛先人に執着心があるのだと気づかされる。頭を過る映像を振り切るように、便箋を封筒へと収めた。

椅子から立ち上がり、数歩歩けば着いてしまう窓に手をかける。降り注ぐ太陽の日差しに目を細めながら、指笛を吹いた。

ガラス笛のように透き通った音が庭の木々に谺する。刹那、真っ白な翼をまとった鷲が窓枠に爪を掛け、羽を畳んだ。


「お願いします」

ほくそ笑み、白鷲の首に掛かる鞄に封筒を入れた。ああ、分かってる。とでも答えるかのように鷲は‘‘微笑み”飛びたつ。

「さて、と。俺も出掛けるか」

大きめのエナメルを肩に掛け、階段を下りれば見える玄関にある写真立て。

顔を写真立ての高さまで持って行き、頬を緩め、呟いた。


「行ってくるよ、涙」




愛しい君の名を_____


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