仲間
「行っちまったな」
「行ってしまいましたね」
おじいさんとおばあさんは朱桃が見えなくなると、振っていた手をゆっくりと下ろしました。
「しっかし大丈夫かぁ?」
「大丈夫じゃないかい、ブラックカードと現金百万、さらにケータイ持たせてるわけですし」
二人は親バカでした。
giryryryryryry
電話が鳴りました。
「しばぁぁぁぁ、火紅がぁ、火紅がぁ、冒険いきたいってぇ、どうしよう、どうしようどうしよう」
「知るかぁっ」
ガシャン
おじいさんは怒鳴り電話を切りました。
giryryryryryry
「…………」
giryryryryryry
「…………………」
ぶち
「………………ふぅ」
おじいさんはいい笑顔で電話線を抜きました。
「今日はもう寝るか、婆さん」
「んっ、ああ、分かった」
(じいさん寝たら昨日の録画したものでも見ながらネットでスレでも…………あれ、あたしも………なんか………………ねむっ……く………くぅ)
そして二人は眠ってしまいました。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁどぉしよどぉしよどぉするよぉぉぉぉ」
竹とりの翁は家で叫んでいました。
「ヤバイやばいやばいやばいやばいよぉぉ」
滅茶苦茶焦っていました。
「火紅は何故か一度にたくさん人から求婚されるし、まぁそれはあのこが自分で無理難題出したからなんとかなったけどぉぉ、てか最近のアニメのキャラの使う道具を作れでもなければとってこいだもんなぁ、てかそんなんよりどうしてどっか行ったぁ! 」
火紅は家出しました。竹とりの翁の家の机の上に書き置きがあり、
『私は鬼退治に行きます。探さないでください』
「バカじゃないのぉぉぉぉっ」
おじいさんは叫びます。そして昔芝刈りのおじいさんが言っていたことを思い出します。
『この子はいつかきっと鬼退治に行くって言いそうなんだよ』
翁はすがる思いで電話をかけます。
繋がった瞬間。翁は精一杯現状を報告しようとしますが、慌てていてうまく言葉にできず、切られてしまいます。そして何度もかけ直しますが、遂には繋がらなくなり、呼び出しすらできなくなりました。
「…………落ち着け、取りあえず芝のとこにいこう」
そう決意すると、おばあさんと身支度を整え、芝刈りのおじいさんの家に向かい始めました。
そのころ朱桃は街についていました。この町に来た理由は鬼ヶ島に行くための準備をするためだった。
「取敢えず誰か一緒に行ってくんないかなぁ最低あと三人は欲しいんだけどぉ…………」
そんな朱桃の目の前に、電柱に身を隠す影を見つけました。
(何あの子めちゃかあいい!あのこなら友達になってくれるかも!いやなってほしい。ついでに一緒に行ってくれるかも)
淡い期待、しかし朱桃には声をかける勇気がなかった、が、向こうがこっちに気付き、声をかけてきた。
「あの、すみません」
「えっ」
「仲間になってじゅださい」
「えっ!」
かんだ。
「間違えました。結婚してください」
朱桃は目を丸くしました。そして顔を真っ赤にさせ黙ってしまいました。前を見ると言った本人もゆでダコのようになってました。
「」
「」
こうして朱桃に婚約者が出来た。
町の喫茶店
ここはすごい数の人がいた。内装はコジャレたバーのようになっていて、少し広かった。しかし、普通の喫茶店と違うのは奥にある大きな掲示板である。
「おじいがいうにはここならたくさんの人がいるらしいよ」
朱桃と謎のかわいこちゃんは二人掛けのテーブルに向かい合って座っていた。
「申し遅れました! 私は火紅って言います」
「へぇ-、俺は朱桃じいちゃんとばあちゃんがつけてくれた」
「僕もですよ。じっちゃんとばあちゃんががつけてくれたんだ」
この僕っ子可愛い。そんなことを考えながら練乳、牛乳、ガムシロのたくさんはいったアイスコーヒーを飲みながらそんなことを思った。
「僕は男として真の漢になるために鬼退治に来ました」
そして思いっきり吹き出しました。
「男っ!? ほんとにぃ!」
「うん」
衝撃の事実と驚きの声が喫茶店中に響き渡りました。
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