朱桃、スタートラインに立つ
やっとこさ
物語が進み始めました
「おじいさん! おばあさん! 俺は今から鬼ヶ島に鬼退治に行ってくる!」
「おじいさんとはなんだ! おじいたま、おじちゃま、あるいはじいちゃまとかもっとなんかこういいかんじので呼びなさい!」
「おばあさんとはなにか! おねいさま、ねえさま、あねたま、ひめと呼びなさい!」
数年が過ぎ、朱桃は立派に成長し、二人はデレッデレでした。
「というか鬼退治ぃ、やめとけやめとけ、きっとめんどいから」
「そうだぞ、じじいの言うとおり、やめとけ」
「嫌だっ! 行く!」
「………どうしてもか、どうしてもいくのか」
おじいさんの問いかけにうなずきます。
「一つ言っておく、無理をするな、そして自分で見たものを信じろ」
「二つじゃねぇかぁぁ!」
おばあさんはハリセンで思いっきりおじいさんの頭を撃ち抜きました。
「行ってこい、朱桃。あたしはおじいさんみたくうるさくは言わない。だけど鬼退治は許さん」
ハリセンの先を朱桃の眼前に突き出し、威圧する。
「…………でもっ」
「とりあえず悪い鬼に『めっ!』ってしてきんしゃい」
「………ゑ?」
「悪い鬼がいたら、『めっ!』ってしてきんしゃぁ。 返事は?」
「でもっ」
「お・へ・ん・じ・は?」
大地をも砕く力の右手を強く握りしめ、おばあさんは立ち塞がる。
「……はい」
少し震えながらも、答えた。
「よぉーぅし、いいこいいこ 」
おばあさんは左手で朱桃の頭をわしゃわしゃ撫でた。
「お願いだから……元気にかえってきね」
おばあさんの声は小さく朱桃には届かなかったが、おじいさんは横になりながら、今にも泣き出しそうな顔から色々と察した。
「じゃあ今日はパートゥィーだぁぁぁ」
おじいさんは叫びました。
その夜、家では大騒ぎテーブルの上にはピザやチキン、寿司にステーキ、二人は腕によりをかけて作りました。みんなで仲良く食べて騒いで、笑って寝ました。
「おじい、わしゃ怖いんじゃ」
「…………」
おじいさんとおばあさんは縁側に座り、月を眺めていました。
「わかっとるよ、でもな、でもな」
おじいさんはなにも言わず、おばあさんの肩を抱き、頭を撫でました。
「そうじゃな、私たちにはもできることもあるよな」
雲一つない空、数多の星々が輝くも、鈍く感じさせてしまう月の光が、一瞬妖しく煌めいたように見えた。そしてそんな光さえ飲み込んでしまう大きな太陽……
「………太陽ってもう朝ぁぁぁぁぁぁぁ」
「じじいうるせぇ」
「ごめん……ってこと何でお前はねてんの!」
「まさか覚えてない?」
「………イイエ!」
「あれ、を創って………」
「あれってなにぃぃぃ!」
「朱桃のはいっていた桃を使った団子」
「何で使ったしぃぃぃ」
「だって賞味期限……」
「もう無理だろぉ! どぉすんのどぉすんのどぉぉぉすんのよぉぉぉ! 朱桃の出発今日だよっ! 」
おじいさんがテンパってると後ろから朱桃が近づいてきます。
「じぃー、おはよぉー」
そう言いながらおじいさんの背中に乗っかります。
「ごはんー」
「おぉ、おはよ」
おじいさんが素早く朝御飯の仕度をし、 みんなで食卓を囲みます。
「じゃ、行ってくる」
朝食を終え、身支度を整え、銀河一と書かれた旗を背中に差し、玄関に立つ。
「……ばーば、この旗なに、俺の作った旗は」
「え、 もしかしなくても怒ってる?」
「またかばーさん、モグモグ、はいこれ、」
「………なにこれ」
「あたしが作った桃味団子、モグモグ」
「結構大変だったんだぞ、モグモグ」
「…………二人が食べてるのは?」
「「桃味団子」」
「餞別食ってんなよぉぉぉ!」
「まぁきにすんなよ、お前にはこれがあるだろ」
「わーかっこいいー」
「棒読みぃぃぃぃ」
そんなやり取りのはて。
ショートカットの朱華色の髪をオールバックに固め、ダーク系スーツに身を包み、腰につけた中身が団子の巾着袋と日本刀。右手に旗、左手にはスーツケース。
「鬼ヶ島にいく格好じゃねぇェェ!」
そんなこんなで出発。
良かったら感想、アドバイス、批判お願いします