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桃栗三年栗八年

「じいさん……」

「なんだいばあさん」

家の縁側で座布団に座りお茶を飲みながら、二人は庭で元気に遊ぶ朱桃の姿を眺めていた。

「朱桃は元気に育ってよかったねぇ」

「そうだなぁばあさん」

朱桃は走り回りながら二人に手をふる。それに二人は笑顔で返す。

「ここまで本当に苦労したなぁじいさん」

「捏造はダメだぞぉばあさん」

桃をひろってから一晩、二人が眼を覚ますと、赤ちゃんはすっかり成長し、見た目が、五歳、六歳になっていました。

「やっぱりあの桃かなぁじいさん」

「多分そうじゃろ」

二人は昨日の夜のことを思い出します。

名前は決まったあと、朱桃に飲ませるミルクがないことに気がつきます。二人が右往左往している間に、朱桃はあの大きな桃に吸い付きました。それを見て、おじさんは桃を細かく切り刻み、赤ん坊でも食べられるようにしました。

「あの桃に何かあったのかねぇじいさん」

「そうだなぁ、ためしに食べてみれば?」

「たった一晩で五年近くの年を取るのにあたしらが食べたら仏さんになっちまうよ」

「それもそうだよなぁ」

でも朱桃は他のものは食べようとしません。その日の朝は、白いご飯を出したのですが、口にしようとせず、昨日の残りの桃をかけると、食べたのです。

「あの桃はきっとなんかある」

「そうだよなぁ、とりあえず、桃はとんでもない量あるし、あとでわしが残りの半分くらいを長期保存できるのに調理してくるよ」

「じゃああたしは夕方のドラマの再放送でも……」

「朱桃のことを頼んだぞ、あと庭もきちんとかたずけを教えてやってくれ」

二人は朱桃が遊んだ庭に眼を向けます。そこはどうでしょう。木が折れ、大地が裂け、花壇はぐちゃぐちゃ、数時間前とは比べ物にならないほど散らかってました。

「あたしがかいっ!」

「ばぁさん以外誰がいる」

「あんたが……」

「頼んだぞ」

今日はおじいさんが言いくるめました。



その夜

「じぃ、あのなぁ、あのなぁ今日なぁ、もじゃもじゃのばさーがばたばたぁってごぉーってなぁ、鳥ってゆうんだって!ばぁが教えてくれたぁー」

「そうかぁ、そりゃ楽しかったなぁ」

「明日はもっと教えてやるからねぇ」

「うぁぁい」

三人は、家でご飯を食べていました。あのあと、おじいさんが帰ってくると、庭はきれいになっており、おばあさんと朱桃は仲良く遊んでいました。そしてすぐ風呂に入りました。


「「「ごちそうさまでした」」」

晩御飯を食べおえ、三人はかたずけをし、布団を引きました。そして寝るまでの間、三人でテレビを見たりトランプをしたりしてました。すると

『次のニュースです。昨夜未明、鬼と見られる生き物が山に入っていくのを見たという証言が届き、近辺では、沢山の兵士が探索を開始しています。くれぐれもおきをつけてお過ごしください』

テレビでは危険生物についてのニュースがやっていました。

「鬼かぁ」

「じぃじ、鬼って?」

「ん? 桃にはまだ難しいかな?簡単に言うと時々悪さをする動物……かな?」

「わるさ? 動物?」

「また色々教えてやるからな、今日はもう寝よう」

「うん……ねる 」

おじいさんは朱桃を寝かせ、自分も横になります。

「ねぇじぃじ、じぃじも鬼に困ってる?」

「どうした? 急に」

「あのねっ、あのねっ、今度ねっ、大きくなったらねっ、あたしがねっ、鬼をめってしてねっ、じぃじとばぁばを助ける 」

「そうかぁ 、また明日お願いするな、おやすみ朱桃」

「うんっおやすみっじぃじ、ばぁば」

いつのまにか、おじいさんの後ろにおばあさんがいました。

「「おやすみ朱桃」」


「じぃさん………気づいてるんだろ………」

「なんのことだばぁさん」

二人は朱桃を寝かせると、寝室から離れ、居間のテレビの前のテーブルに、向かい合って座ります。

「何年一緒だと思ってんだい。それに………」

「なんだ、ばぁさんもか」

「わかるに決まってるじゃないか、『鬼』についてあんな説明してたら」

「あぁ、『鬼』が来るわけねぇ、もし来てたとしてら島では………」

「大丈夫だよ」

おばあさんはおじいさんの近くまで移動し、二人は寄り添います。おばあさんはそのままおじいさんの頭を自分の膝の上に寝かせます。

「大丈夫ですよ、あの子達なら………」

おばあさんはおじいさんの頭を撫でます。

「大丈夫なんて台詞、涙ぐみながら言うものじゃないぜ」

そういいながらおじいさんは起き上がり、おばあさんを抱き締めます。

「わしたちはもうこんなんじゃが、いや……こんなんじゃからこそわしの前ではいつでも泣いていんじゃよ」

「ちっ違うし、一クール前のアニメのシーン思い出しただけだしぃ」

「分かった。そうしとく」

「だけだしぃ」

「今日はもう寝ようか」

「………うん」

色々な不安を抱きながら、二人は静かに眠る。


その頃竹取りの家

「かわええのぉ、なぁばあさん」

「かわいすぎですよねぇじいさん」

大きくなった火紅に様々な衣服を着せて、写真を撮りまくっていました。

「疲れたよぉ」

「おおごめんなぁ、今日はもうねるかぁ」

そして火紅が寝たあとも寝顔を撮ったり、撮った写真を整理したりで、二人は大忙しでした。

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