Ⅱ‐④
大変大変遅くなりましたっ(>_<)
やっと会長が出せました…
結局私が生徒会室に戻った時には、帰るところだったと思われる会長の姿があった。会長は私に施錠を頼むとすぐに生徒会室を出て行ってしまったので、口を挟む隙がなかった。
うーん。なんか私が戻ってくるまで待ってたようだったし…。二階堂先輩のせりふも気になるし…。自然すぎて不自然な感じ……。
…………うーん。
「かおりちゃーん、戻ってきて〜」
「!す、すみませんっ!!」
やばっバイト中だったっ。考えだしたら周りを遮断する癖、直さなきゃなぁ…。とほほ。
「別にかまわないけどね。今日お客さん少ないし」
「すみません…。あ、テーブル拭いてきますね」
「うん、お願い」
昨日のことなのにひきずってしまった、反省。
私のバイト先は学校のちょうど裏側からちょっといったところにあるカフェ。学校から近いけどあんまり知ってる人こないし(カフェの雰囲気がかなり洒落ているので学生は入ってこない)、そんななかのびのび働いてる。
そしてマスターがとっても良い人で何よりコーヒーが美味しいの。初めてブラックのコーヒーが美味しいって感じたよ。ちょうどバイト募集してたから速攻申し込んだってわけ。
「学校はどう?慣れたかい?」
「あぁはい…まぁまぁです」
「なんかあったの?」
「いやぁなんか生徒会手伝うことになっちゃて……」
「あれ、かおりちゃんってN高だよね?」
「はい」
「もしかして会長って、」「マスター?電話鳴ってますよ」
「おっと失礼。お店よろしく」
なにか言いかけたみたいだけど電話が鳴ったので流れた。うーん。うちの生徒会ってそんなに有名なのかな…。
カランコロン
「あ、いらっしゃいま、せ………」
「…」
「会長!どうしてここにっ」
なぜ、ここに!いやべつにとくにむしろ会長がコーヒー飲んでる姿は想像つく、ていうかハマりすぎだけども!!
「コーヒーを飲みにくる以外に何が?」
「ぐ」
一蹴。…ソウデスヨネ。なにもそんな言い方しなくても、と固まってる空気のなか(固まってると思ってるのはおそらく私だけだけども!)電話が終わったのか奥からマスターが出てきた。
「かおりちゃーん、そろそろ休憩入りなって…あれ、修一じゃないか」
「へ?」
修一って、たしか会長の名前だよね。マスターと知り合い、なのかな。そんな私の頭に?が浮かんでるのを見て取ると、マスターが苦笑しながら説明してくれた。
「あぁこいつ私の甥っ子で常連なんだ」
「そうなんですか!」
甥っ子とな!確かに鼻筋とか目の感じとか似てるかも。といってもいつも笑顔のマスターと常に眉間にしわの会長とじゃあ言われないと気づかないけどね…。
「そういえばかおりちゃんが入ってる日には修一きたことないねぇ」
「偶然でしょう」
「そうかもね」
「叔父さん、何が言いたいんです?
「いや別に?」
えっとなになに、いきなり空気凍ってる!?しかもなんかいつもの会長じゃない感じ。マスターもなんかニヤニヤしてるし…なんかこう構われるのが照れる野良猫…っていうか。しかし会長もなんかこうしてみりと年相応に見えるなぁ。
「おい、コーヒー」
「か、かしこまりましたっ」
ひぇっ!なんかいろいろ考えてたのバレたかな?顔には出てなかったと思うけど。
「あぁいいよ、僕がやるこら。かおりちゃんは休憩はいっちゃいな。オムライス作ったげる、好きでしょ」
「好きですっ!」
やった!マスターのオムライス本当に美味しいのっ。私の理想のオムライスってかんじなの。
「作ってる間、せっかくだから話してなよ。こいつ無愛想であんまり盛り上がらないかもだけど」
「っ叔父さん」
「その眉間のしわどうにかしたら?そんなんじゃ女の子から怖がられちゃうよ」
「や、全然そんなことないですよっ!確かにちょっと見た目怖いかもですが。指示はいつも的確だし、いつも莫大な仕事かかえてても涼しい顔してやっちゃうし。会長がいるだけで部屋の温度が下がって涼しくて快適です。あの…、つまりですね、そ、そ尊敬してますっ!!」
「…」
「っぷぷ…」
や、やばい。正直に言い過ぎた、よね。いくらマスターとはいえ身内だし、お怒られるっ。
「くく、ははっあっはは!!いいねっ!というか確かに…夏には、快適、かもね……くく」
そんなことなかった。マスターがこんな爆笑してるの初めて見たよ。っていうか会長の顔!般若もびっくりな鬼の形相してる!!マスター!もう笑うのやめてあげてっ。
「あぁ笑った…。いい後輩をもったじゃないか。じゃ修ちゃん、仲良くね」
「っ」
じゃね〜、とキッチンに去っていくマスター。この寒々しい空気のまま。
たまらず私は言葉をつなぐ。
「…会長、修ちゃんてよばれてるんですね」
「あれは叔父が俺をからかうときだけだっ」
私のばかっ!わざわざ地雷につっこんでいかなくとも!
「絶っ対にあいつらには言うなよ…?」
「了解シマシタ」
あいつらって生徒会メンバーだよね。言えるわけがないでしょう。
とたんに沈黙が降り、いたたまれなくなってきた。ど、どうしよぅ………。
「えと会長、よくここには来られるんですか?」
「ああ」
「他の生徒会の方々も、なんですか?」
「知らん」
か、会話が続かないっ!!!!マスターっ早く戻ってきてっ!!
「…お前はいつからここでバイトしてるんだ」
まさか会長から話しかけられるとは!
「あ、えと5月くらいからです。学校から近いけど通学路から離れてるし、静かな雰囲気が気に入って」
私のかばー!!別に理由までは聞かれてないでしょっ。こんなどうでもいい話、本当にどうでもいい。
「大変じゃないか」
「へ?や、全然です!こんなお洒落なカフェで働くの夢だったので」
「……そうか」
えと気にかけてくれてるのかな。でも部活をやっていない私にとってはとくに負担には感じてないのよね。
そんなふうにポツポツと話しているうちに時間はすぎていったらしい。
「はいお待ちどうさま」
私にはオムライス、会長にはコーヒーとホットサンドイッチを出していた。
「うっわぁ!お、美味しそぅ」
「召し上がれ」
「いただきます」
「! おいしー!卵とろとろ〜デミグラスソースうまっ」
そしつ私は目の前のご馳走に夢中で横で話されている会話には全く気がつかなかったのでした。
「ふふふ」
「…」
「いい子じゃないか」
「何が言いたいんです?」
「やぁ良かったね。理解者が増えて」
「…」
「かおりちゃん可愛いしね〜」
「…」
「あんなに気が利くイイ子だったら、モテるだろうね。や、もうつきあってる子くらいいるかもね」
「…」
「気になるなら聞けばいいのに」
「一言もそんなことは言ってないじゃないですか」
「あれ、いつまで飲んでるの?そのカップ空だけど」
「っい今なくなったんですよ」
「ふうん」
「で、いつから本逆さから読むようになったの?」
「………っっ、たった今からです」
「ぷっ。ま、意地はるのもほどほどにね」
「…っ」
「ごちそうさまでした」
はぁ〜満腹満腹!おいしいもの食べてるときって幸せだぁ。
「お粗末さまでした。かおりちゃんお疲れ様。片づけしたら今日はもうあがっていいよ」
もうお客さんもいないし、と続けるマスターはやっぱり優しいと思う。でも次に続く台詞は全く持って優しくなかった…。
「日が長くなったとはいえこんな時間だしね、修一送っていってね」
「!!」
いやすぎるっ。マスターの気遣いなのはわかるけどもっ。最初に比べて苦手意識はなくなったけどもっ。
「マスター!家近いですしっまだ明るいですしっ。大丈夫ですよっ」
「そうはいっても最近このあたりも物騒になったしね。かおりちゃん一人暮らしなんだし、送ってもらいなさい」
「一人暮らしなのか」
「あ、はい」
言ってなかったっけ。会長の怪訝そうな顔ったら。いやべつに悪いことしてるわけじゃないのに、そんな顔しなくても…。
「修一って心配になればなるほど顔怖くなるよね」
「え、」
「先に出てる。準備出来たらこい」
会長は私の言葉を遮ると外に出て行ってしまった。
「照れてるな〜」
「へ」
「はいあいつもああ言ってるし。早くいってあげて」
「は、はい」
色々聞きたかったけどマスターの言う通りに待たせるわけにもいかなかったので、会長のもとに急いだ。
◆◆◆◆
そんなこんなで帰路です。ただいま最寄り駅から自宅までの道のりを歩いている最中です。ここにくるまでもなんやかんやとありました。長かった………。いやだってさ!会長には悪いからさ最寄り駅まででいいっていったのよっ。聞けば会長の最寄り駅はまったくの正反対だったし。お金かかっちゃうから改札でる前までで充分ですって。そしたら
「そんなに早く返したいのか」とか「そんなに甲斐性なしにしたいのか」とかっ。挙げ句の果てに「そんなに俺のことが嫌いか」とまで。
そこまで言われたらもう何も言えなくなっちゃったよ。いまは会話らしい会話もなくただ黙々と歩いてます。
「遠くないか」
「すみません」
だから駅まででいいって言ったのに…。すると右側を歩いている会長はため息をついた。
「そういう意味じゃない」
「?」
「もういい」
なにを言いたかったんだろう。値段とセキュリティーで選んだので少し駅から離れているアパートは外見も可愛いくてお気に入りだった。…もしかして心配してくれたのかな。
「遅くなるときは兄のところに泊まるか送ってもらってるので、あの大丈夫です」
「そうか」
合ってるか分からなかったけど、会長の返答がすこし穏やかだったからいいかとにした。
「兄がいるんだな」
「あ、はい。一緒には住んでませんが年の離れた兄がいます」
まぁそんな兄貴は会長も知っている生徒会顧問なんだけど、言わなくてもいいか。面倒ごとは避けたい。
「あ、ここです」
そんなこんな着いてしまった。…着いて『しまった』って何さ私っ。名残惜しいみたいじゃないかっ。
「じゃあありがとうございました。お休みなさい」
なんにしてもここまで送ってくれたんだ、感謝しなくては。
「………いつも助かってる」
「え…」
「お前がきてくれて大分楽になった。礼を言う」
そう礼を言った会長は口元を緩めて、笑った。
「っこちらありがとうございますっ。これからもよろしくお願いしますっ」
「あぁ」
じゃあお休み、と背を向け去っていく会長を見送ると私の部屋の三階まで階段でダッシュした。
「っ反則でしょ………」
あの笑った会長の顔が頭から離れず、夜もきっと眠れないであろうことを私は確信したのであった。
次話の更新は来月になります。
大したこと書いてませんが活動報告始めました。