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Ⅱ-③

 まぁそんな心の叫びが聞こえるわけでもなく、只今山本佳織は非常に非常にマズい状態にある。どれくらいマズいかと言いますと、バイトの出勤時間に起きちゃったとき(頭真っ白になったよ)とか、先生のヅラとった姿みちゃったとき(いたたまれなさ)くらいには…。

 ……………分かってる、現実逃避しても状況は変わらないってことくらいは。現にほら、なんか目の前で吠えてるし…。




「何でお前みたいな平々凡々があの中に入ってるんだよっ!!!」

 平々凡々で悪かったわねっ!私だってこんなめんどくさいこと引きうけたかなかったわ!

「だいたいなんでオレはダメでお前はあそこにいるんだよっ」

 知るか!ただあんたが使えなかっただけだろうが!

「黙ってねーで何か言え!」

 全部口に出したら余計怒るからだよ、まったく。といっても埒があかないな…。そっとため息をついたのだけどバレた。

「あぁ?」

「ははは」

 困ったときの愛想笑い、だ。

「まぁいい。お前橘会やめろ」

 まぁた極論に出ましたねー。

「いいかお前は都合が悪くなってやめなくちゃならなくなるんだ。それでオレにお前は頼むんだ」

「お断りします」

 考えるまでもないわ。前半は痛くもかゆくもないけど(賄賂もらってるし)、後半は全力でお断りだ。

「まぁ聞けよ、もちろんタダとは言わない。オレはちょっとしたコネがあってな、一年間の全科目テスト問題を事前に手に入れることができる」

 もうこの人バカだわ。はい、バカ決定。

「これから一年間、お前の天下になる。どうだ?」

「馬鹿ですか…」

「あ゛ぁ?」

 やば思わず本音が出てしまった。…………言ってしまったもんは仕方ない。えーい全部言ってしまえっ。

「要りませんし、やめません」

「なっ」

「だいたい先輩?たとえ私がやめたところで、あなたが橘会で使いもんになるとは到底思えませんね」

「黙って聞いてりゃこの野郎っ」

「野郎じゃありません。といいますか全くもって人にものを頼む態度ではありませんね。人を馬鹿にして脅すようなその態度。それに加えてテストも実力じゃないことをあっさりバラしましたね。バカなんですか、アホなんですか」

 と ま ら な い〜!

 私の口とまれぇい!ほらバカ(仮にも先輩)の顔めっちゃ真っ赤だよ〜。キレてるキレてる、なんか震えてるしぃっ。私体育会系じゃあないんだけどー。

「っのアマっ!!!」

「!」

 私が見たのは大きく振りかぶった右の拳。思わず頭を抱えてくるであろう痛みに備えた。




 ………あれ?




 いつまでもこない衝撃に訝しりながらも、固まってた私に聞こえてきたのはなんとも聞き覚えのある声だった。

「だめっしょ〜?女の子は優しくしなっくちゃあ」

「二階堂先輩!」

 なんとバカの腕ををひねりあげて止めてくれたのは二階堂先輩だった。バカはなにやら悔しさなのか痛みからなのか呻いていた。

 しかしなんていうか、気の抜ける……。

「やほぅ〜!ケガない?ってか俺ってば超グッドタイミングじゃね?」

 ……本当かなぁ。なんかまるでどっかで様子見してたようなタイミングの良さなんだけど。じとーと二階堂先輩を見つめる。あ、少し目が泳いでる。

「や、ぐ〜ぜんだよ?ぐ〜ぜん」

 あやしいなぁ。

「っ離せよ!」

 ってまだいたんだあなた。忘れてたよ。

「えーこのままにはしておけないなぁ。恐喝はよくないと思うな。あとテスト云々のお話とか?くわーしく聞かせてもらおうかな?」

 ってかやっぱり、

「結構前からいたんじゃないですか…」

「あははは」

「なんでそん時に入ってこないんですかっ」

「いやだってなんかおも、大丈夫そうだったし?」

「……」

 この人面白そうって言おうとしたよ、絶対。

「いや、ごめん。睨まないで」

 ふんだっ。

「くそっお前っ!」

 かなり置いてけぼりにされていたバカが、先輩の拘束が緩んだんであろう、先輩から抜け出して今度は先輩に殴りかかろうとしていた。

「先輩!……………………………て、あれ?」

「あー大人しくしてれば良かったのにね」

 全くなにがあったか見えなかった。多分鳩尾に一発?いれたようでバカは床にのびている。

「…………先輩なにかやってるんですか?」

「男の嗜みに空手を少々、ね」

 人は見かけによらないな…。全然動いたように見えなかった身のこなし方はきっと少々、ではないと思う。

「ふっふっふ。惚れちゃった?」

「それはないですね」

「うわ、即答」

 タイプじゃないし、まだ私は自分の命が惜しい。

「でもごめんね?」

「何がですか」

「やーあいつ一回橘会に助っ人にきて1日ってか30分で切っちゃったんだよね」

 思った通りだったか……。

「そんなの先輩が謝ることじゃあないですよ」

 だってどうみても逆恨みっぽいしね。まさかここまで予測はできないでしょ、と思ったからそう言った。すると二階堂先輩は少し固まると思わず、というように顔が緩んだ。

「そうだね、ありがと」

「はぁ」

 ん、なんだこの空気?なんかしんみりなムード?なぜ……。なんか二階堂先輩俯いちゃったし…。

 !肩震わせてる!?もしかして泣いて…?

「っぷぷー!!!!我慢できないっ。あんのかおちゃんの返し!最高だったっ!いやぁ笑いこらえるのかなり大変だった〜」

 るわけないですね。しかもそんなに爆笑しなくても………。

「…」

 もう先輩だからといって遠慮せずに軽蔑の視線でみた。するとぴたっと止まる。ふんっ。

「おほん。さぁて、まだそっち仕事中だろ?先戻りな」

「げ、もうこんな時間っ」

「こっちのことは気にするな。引き取るから」

「あ、ありがとうございました」

 まぁちょっと素直に言いにくくはあるけど助けてくれたしね。

「いやいや気にしとけって言ったの会長だし」

「え」

「やべっ。えーと俺先行くわ〜じゃね」

「あ」

 あっきらかに挙動不審な様子で、バカをひょいと肩に担ぐとパーッと出て行った。

 にしてもさっきのセリフ。

「会長…っていった?なんで会長が…」

 もやもやとしながらも、生徒会室へと向かった。




王道だいすきです

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