Ⅰ-④
今回、長めです。
今私は生徒会室のドアの前だ。なぜこうなったのか思い返してみても、騙されたとしか思えない。そして後悔しかない。
さかのぼるは一時間前のことである。
◆◆◆◆◆◆
放課後、私は信兄もとい杉原先生言われたとおり職員室にきていた。帰り際に三波にケーキでも食べようと誘われたけど断る羽目になった。くー…食べたかったっ。
「失礼します」
はやく用事は済ませてしまおう。
はて、杉原先生の席はっと。
「おぉ、山本〜こっちだこっち」
「先生」
信兄は、入って少し離れた右奥の席からブンブンと手を振りアピールしていた。
…恥ずかしい。回れ右したかったけど、我慢して信兄の席に向かう。
「それで、なんでしょうか?」
「顔が怖いぞ」
あったり前でしょう。何言われるかわかんないだし。変なことに巻き込まれたくないし、でもなんかやな予感はするし。
「まぁちょっと待て。高野先生、今って進路指導室空いてます?」
「あぁはい。先ほど面談は終わりましたので空いてると思いますよ」
向かい側にいる高野先生に聞く信兄。
ちなみに高野先生は英語教師。奥さんのこと大好きらしくて授業中よくのろける、優しい先生だ。
でもなんで進路指導室?もうそんな話?てかわざわざ学校で話すことなくないか?
たくさんの?がひしめくなか、進路指導室に連れてかれた。
「急に呼び出して悪かったな」
「いや、別に大丈夫だけど…」
「実は頼みごとがあってな」
すんごい渋ってるなぁ、聞きたくないなぁ。
「橘会、手伝ってくんねーか?」
「やだ」
「即答かよ」
「イヤなものはイヤ」
予感的中!断固拒否だわっ。あの無駄に目立つ団体なんて一番一番関わりたくないもの。
「ま、まぁ聞け。知っての通り、俺は橘会の顧問をやってる。で、だ、今かなりの人手不足で困ってる」
「別に私以外にだってもっと適任者がいるでしょ?」
「あー…」
すんごい遠い目。なんかあったのかな。
「………仕事にならなかったんだ」
「は?」
「だからまっっっったく仕事のしの字にもならなかったんだ!」
「どゆこと?」
「橘会のメンバーを思い出せ。あの容姿だぞ?女子を助っ人に選べば奴らのファンを怖がるか、恋人になるのを目指して自分磨きにいそしみ、ひたすらアピールするか、だ」
わー目に浮かぶわ。てか信兄も苦労してるな。
「男子は?」
男の子の比率が多いんだし、大丈夫そうだけど…。
「男子はまず鈴木に惚けるか、他の奴らに無駄な対抗意識を燃やして返り討ちにあうか、だ」
返り討ちにあったその生徒のその後が気になったけど、怖くて聞けなかった。
でも私もここで引くわけにはいかないっ。
「そんな生徒だけじゃないでしょ!探せばいるよ、絶対!」
県立の進学校だ。少数ではあると思うけどいるはずっ。
「じゃあお前が探すか?」
「な!」
「正直、もう時間がないんだ」
よっぽどせっぱ詰まってるな。
「お前が助っ人になるか、お前の代わりを探すか、だ」
どっちも遠慮したい!
「かお、お前なら奴らみたいなのには慣れてるだろ」
「…」
「やってくれないか?」
うー………。
「分ぁかった。図書券一万円分でどうだ!」
「ぬ!」
く、が、我慢よ…私。
「手強いな…。よしっ。こいつの初版、しかもサイン入りでどうだ!!」
「っ!!?」
なになになんで!どんなつながりで手には入ったの!?
「驚いてるな?母さんの伝手でな」
あの本は私の一番大好きなファンタジー作家さんが書いたもの。あの作品自体はそんなに有名じゃあないんだけど、すごく好きなんだ。
欲しい。ものすごく欲しい。今わたしはぐらぐらとゆれるやじろべいだ。
「~~~~~わかった。引き、受ける」
「!ありがとう!本当にありがとうな!」
ものすごい喜びよう…。な、泣かなくても………。
確かにモノにつられたけど、信兄を助けてあげたい気持ちもあるしね。
「じゃ早速、今日から頼むな!」
「は?」
早まった、か……?
◆◆◆◆
というわけで冒頭にもどるわけだ。
あのあといくつかの条件は聞いてもらった。一つ目は週末にあるバイトのこと。生活かかってるしね。二つ目は私が手伝う期間。やっぱずっとは無理。一応9月までってことにしてある。あとはまぁいくつか。それはおいおい。
結構渋ってたけど聞いてくれた。信兄なんだかんだと甘いからなぁ。…渋ってたけど。
でも今日からってなんだ。早すぎでしょう…。まぁ今日は挨拶だけでいいとは言われてるけど。
ふー、よし。グダグダ考えても仕方ない。自分で決めたことだ!!
できる限りのことはしよう。
次からやっと生徒会メンバーが………。